6.「カース・アイテム・ダンジョン(2)(※女神視点)(※ざまぁ回)」
〝雷ジジイ〟の雷槍に身体中を貫かれたあーしは、何とか一命を取り留めた。
勿論、人間や魔族が扱うような雷撃だったら、女神のあーしにダメージを与えることなんて出来やしない。
「でも、悔しいけど、雷ジジイの雷槍は別だし」
最高神だけあって、あのジジイの操る雷槍は神さえ殺す威力がある。
あんなジジイに殺されてたまるか! という意地で、ギリギリ耐えたし!
「それにしても、突破するのにこんなに時間掛かるとか、想定外だし」
イヴィラとかいうあのガキが転生した先の異世界に干渉出来るようになるまでに、五年も掛かってしまった。
雷ジジイはあーしがイヴィラに復讐するのを恐れたのか、防御結界を展開した。
正直めっちゃ強固だったけど、毎日コツコツ削って、弱体化させて、やっと破壊することに成功したのだ。
「かなり手こずったけど、結界が無くなっちゃえばこっちのもんだし!」
あーしをこんな目に遭わせたあの憎きガキに復讐してやるし!
「でも、直接は無理だし。どうするし?」
神であろうと、人間や魔族を神の力で天上界から直接殺傷することは固く禁じられており、システム上不可能だ。
更に、女神の姿のまま降臨することも、人間や魔族の姿に変身することすらも禁忌とされている(地球は例外で、システム上の脆弱性があるため、人間に化けてイケメンたちとワンナイトラブを繰り返す程度ならアラートは鳴らない)。
「でも、地球以外の異世界にも穴はあるし!」
そう。〝モンスター〟は例外なのだ。
何であーしがモンスターなんかに!? という思いは当然ある。
でも、そんなプライドなんてどうでも良くなるし!
あのクソガキにされた仕打ちを思い出すと!
「何が何でも復讐してやるし!」
あーしは、モンスターの姿に変化することで、異世界ムンド・ディベルティードに降り立った。
※―※―※
あーしが変身したモンスターは、平たく言うと、先っぽに無数の牙が生えた口がある触手だ。
「うげー……マジでキモいし……」
湖面に映った自身の姿に、思わず本音が漏れる。
この見た目にしたのには理由がある。
イヴィラには固有スキル〝キルアイズ〟があり、目があるモンスターだと、目が合った瞬間に殺されてしまうからだ。
物体や、いっそのこと炎などの魔法そのものになって襲い掛かる、という手も考えたが、小癪なことに、あのガキは最近、〝両目で見た魔法や物体を〝消滅〟させる力〟も手に入れてしまった。
そのため、あくまで生物――つまりモンスターで、しかし目は一切持たないものに変化する、という策を練った。
どうやらあのガキの〝消滅〟能力は、生物は対象外らしいから。
「ふっふっふ。完璧だし! 自分の才能が怖いし!」
※―※―※
あとは、どのタイミングで、どこからどのように襲撃するかを詰めることとした。
「う~ん、あのガキだけでも鬱陶しいのに、S級冒険者のメスガキが二匹もくっついてて邪魔だし!」
女神本来の力が発揮出来るのであれば、あんなのが何人いようが全く問題ないのだが、神としての力を極限まで抑え込まれているこの状況では、かなり厄介な相手だ。
そんな時、スプリとかいうまた別のメスガキが失踪したという情報が耳に入った。
「これは使えるし!」
どうやら二匹のメスガキどもの仲間らしく、捜索に向かうようだ。
あーしは先回りして、カース・アイテム・ダンジョンの奥でスプリを見付けた。
「キャハハハハハ! 〝眠り〟の呪いに掛かってるし! コイツバカだし!」
イヴィラたちは必ずここに辿り着き、あのウザい固有スキルで救い出すことだろう。
仲間を救出したと安堵したその瞬間、あのクソガキは地獄に落ちるし!
「さぁ、早速このメスガキの身体の中に潜むし――って、ギャアアアア! 下界の雷撃如きが、この女神にダメージを与えるんじゃないし! ギャアアアア! ああもう、ウザいし! 全部消して――いや、今消しちゃったら、アイツらがここに来た時に、トラップが無くて楽させちゃうし! ギャアアアア! も、もう限界だし! 消してやるし! ……って、そういや、この身体だと、触手以外の攻撃手段が使えなかったし! ギャアアアア!」
雷撃に全身を貫かれ、何度も死に掛けながらも、あーしは何とかスプリの体内に侵入することに成功した。
ちなみに、自身の身体を小さくする分にはどれだけでも小さく出来るので、肉眼で見えない程のミクロサイズになって、スプリを空中に浮かべている魔法陣の結界も通り抜け、スプリの身体にも問題なく入れたのだ。
※―※―※
そして、今。
「あはは! デート・な・の!」
助け出されたメスガキが、バカ面でイヴィラに抱き着いた瞬間。
「がはっ!?」
あーしはスプリの腹から登場、イヴィラの腹部を貫き、腸を喰ってやった。
「きゃあああああ! イヴィ君、何で!?」
「イヴィラ!」
「イヴィ!」
大量に吐血するイヴィラと、混乱するメスガキども。
「キャハハハハハハ! どう、腸を喰われた感想は! あんたが悪いんだし! 女神たるあーしが最高神に罰せられたのは、あんたのせいだし!」
「……女神……さま……!?」
哄笑しつつ、あーしは穴が開いたイヴィラの腹からずるりと戻っていく。
「……嘘……だ……! ……女神……さまは……そんな……荒々しい……声と……喋り方……じゃない……! ……君は……偽者だ……!」
魔法使いのガキに身体を支えてもらいながら、イヴィラが苦し気に声を絞り出す。
「あ、そっか。この口調じゃ分からないし? しょうがないし。コホン。『私は神です。残念ですが、貴方は死んでしまいました』」
「! ……その声と……口調は……!? ……本当に……女神さま……なんですか……!?」
「さっきからそう言ってるし! 本当に愚鈍なガキだし!」
目を丸くするイヴィラは、バカ丸出しだ。
「……でも……何で……そんな……姿に……!?」
「そりゃ決まってるし。女神がそのままの姿で異世界に降り立ったり、魔法などを直接人間に向かって発動することは禁じられているから、抜け穴を探したし! 全てはあーしを酷い目に遭わせたあんたに復讐――」
「……そうか……! ……女神さまは……邪神とか……そういう……悪い奴に……無理矢理……触手の……モンスターに……精神を……憑依……させられて……いるん……ですね……!」
「……は? 何を言って――」
「……その……モンスターを……倒せば……天界に……戻れ……ますよね……? ……女神さま……今……助けます……!」
「いや、そうじゃなくて――」
コイツ一体何言ってるし!?
頭おかしいし!
と、その時。
「いつまで人のお腹にいるの!? いい加減出ていけなの!」
ドンッ
「べぼばっ!?」
スプリがあーしの身体を上から殴りつけると、あーしは地面に叩き付けられて、勢いあまってバウンドして天井にぶつかり、再び落下した。
「こ……のバカ力のメスガキがああああ!」
滅茶苦茶痛いし!
こちとら、モンスターの姿じゃ魔法が使えないから、痛覚遮断も出来ないってのに!
くそっ!
ぶっ殺してや……りたいけど!
二人以上殺しちゃうと、流石にシステムが異常を感知して雷ジジイに通知が飛んじゃうから、一人しか殺せないし! そうじゃなかったら、このメスガキの内臓も喰ってやってたし!
いや、今はメスガキよりもイヴィラだし!
「『増殖』!」
このモンスターの固有スキルによって、あーしの身体が倍に――つまり触手が二本に増加、更にそれが四本に増えて、八本、十六本と加速度的に増えていく。
「早く止めないとヤバいわ!」
「ハッ! 洒落にならないね!」
「スプリが全部倒すの!」
「キャハハハハハハ! 無駄だし! そんな甘っちょろいスピードで増えないし!」
メスガキどもが氷柱・大剣・拳で触手を貫き、斬り、殴打する。
正直痛い……けど、我慢だ。
あーしの増殖スピードにメスガキは全然ついていけていない。
あーしは、牽制の為にメスガキどもに対しても攻撃する振りをしながら、本命のイヴィラに向けて幾多の触手で同時に襲い掛かる。
「貰ったし! 死ねええええええええええええええ!」
あーしが勝利を確信した直後。
「ギャアアアアア!」
あーしの触手が、一気に十本〝消滅〟した。
「い、一体何が……!?」
「……〝キルアイズ〟……です……!」
「なっ!? 今のが〝キルアイズ〟だし!?」
「……この……一ヶ月の……間……トレーニング……して……会得した……〝……生き物の……一部を……殺す……〟……能力……です……!」
ふざけてるし、コイツ!?
目が無い相手にも使えるとか、チートにも程があるし!
「でも、十本程度なら、あーしの増殖スピードの方が早――」
「……〝キルアイズ〟……!」
「ギャアアアアア! こ、今度は五十本だし!? で、でも、このくらいならまだ――」
「……〝キルアイズ〟……! ……〝キルアイズ〟……! ……〝キルアイズ〟……!」
「ギャアアアアア! ひゃ、百本!? ギャアアアアア! さ、三百本!? ギャアアアアア! ご、五百本!?」
そして、とうとう。
「……これで……終わりです……! ……女神さま……今助けますから……! ……〝キルアイズ〟……!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアア!」
千本の触手が全て消滅させられて――気が遠くなるほどの激痛と共に、あーしはモンスターとしての身体を失い、天界へと強制送還された。
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