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14.「聖山に挑む勇者(3)」

「礼は言わねぇからな。今でも俺様は、自力でゴーレムを倒せたと思ってるからな」

「はい! 僕が勝手にやったことですから!」


 笑みを浮かべる僕に、勇者さんは目を逸らす。


「でもまぁ、その、なんだ……礼は言わねぇが、てめぇが解呪したことで、俺様が魔王討伐に大きく一歩前進したことだけは確かだ。てめぇはその……大した奴だ。認めてやるよ」

「! ありがとうございます!」


 すごい勇者さんに褒められた! 嬉しい!


 そうだ!

 今しかない!


「勇者さん、良かったら、僕と友達になって下さい!」

「え、やだ」

「ガーン!」


 ショックで膝をついてしまう。


「俺様は魔王をソロ討伐する。だから、誰ともつるまないし、友達なんか要らねぇ」

「そ、そうですか……」


 立ち上がった僕が尚もしょんぼりしてると、勇者さんは「はぁ」と溜め息をついた。


「ま、でも、てめぇには借りがあるからな。考えておいてやる」

「本当ですか!? ありがとうございます!」


 良かった! まだチャンスはあるんだ!


「で、てめぇらはここに何しに来やがったんだ? もしかして、聖剣狙いか?」


 「そうよ! それを伝えなきゃね!」と馬車から降りて僕の隣に来たカカナが口を開き、僕は頷く。


「知り合いの魔導具屋の店長さんに聖剣を見せるって約束したんです。勿論聖剣は勇者さんのものだって分かってます。ただ、聖剣を抜いた後、一緒にアスバドにある魔導具屋に来てもらえませんか? そこで、ちょっとだけ聖剣をお借りして、見せたいんです。すぐお返ししますから」

「アスバド……バッドネス公爵領か。良いぜ。付き合ってやる」

「ありがとうございます!」


「ハッ! それは良いけど、その土砂の中からどうやって聖剣を見付けるのさ?」「完全に埋まっちゃってるの!」とリンジーさんとスプリちゃんが横から口を挟む。


 見ると、先程のゴーレムとの激しい攻防が止めとなってしまい、もはや聖山は完全に崩壊して、原形を留めていなかった。


「問題ない。こうするのさ! ふん!」


 勇者さんが長剣を素早く連続で振るうと。


「うわあ~!」

「おお!」


 聖山が斜めに何度も切り刻まれて、土砂が後方へと吹っ飛んでいき。


「発掘しちゃったわ! 勇者だけあって、規格外ね!」


 聖剣が突き刺さっている数メートル大の台座が姿を現した。


「やっぱ感じ取れるもんなんだな。どこにあるのかが手に取るように分かった」

 

 勇者さんが一歩一歩踏み締めるようにして近付いていく。


「待たせたな。今抜いてやるからな」


 勇者さん聖剣の柄に手を掛けた瞬間。


 ドシュドシュドシュドシュッ


「!」


 台座の下から無数の〝サソリの尾〟のようなものが出現。


「勇者さま!」


 ソクティちゃんの悲鳴が響く中。


「うおおおおおおお!」


 一度鞘にしまった長剣を再び抜いた勇者さんが、雄たけびと共に振るう。


「すごい! 一瞬で倒しちゃった!」


 斬られた〝サソリの尾〟もどきたちは、ボトボトと緑色の体液を撒き散らしながら地面に落ちて動かなくなった。


「さて、と。仕切り直しだ。よっと」


 今度は、呆気なく抜けて。


「……とうとう、手に入れたぞ!」


 聖剣を天に向かって突き上げる勇者さんの姿は、まるで神話の一ページのように、厳かで格好良かった。


「良かったです……本当に良かったです……」


 瞳を潤ませるソクティちゃんを見て、「あ、そうだ!」と、僕は彼女の背を押しながら、勇者さんに語り掛ける。


「勇者さん! 彼女はソクティちゃんと言って、勇者さんの大ファンで、この一年間、毎日毎日、ずっと勇者さんを見守って応援していた人なんですよ!」

「えっ!? ちょっ! まだ心の準備が――」


 慌てるソクティちゃんだったけど、時すでに遅し。


「そうか……俺様はずっと孤独に戦っていたつもりだったが、実は一人じゃなかったんだな……俺様を陰から見守ってくれていて、ありがとな」

「!」


 ワイルドな笑みを浮かべる勇者さんに、ソクティちゃんの目が大きく見開かれる。


「……それはこっちの台詞です、勇者さま……以前のソクティは、何をしても上手くいかなかったです……。でも、何度跳ね返されても決して諦めない勇者さまの姿に感銘を受けて、ソクティの人生は大きく変わったです……。貴方は、ソクティの恩人です……。本当に、本当にありがとうございます……」


 深々と頭を下げる彼女の口から、「やっと……伝えることが出来たです……」と、涙交じりの声が洩れた。


 良かったね、ソクティちゃん!


「そうだ! せっかくだから、握手してもらいなよ!」

「は!? そんな恐れ多いこと出来る訳――」

「良いぞ。ほらよっ」

「んきょぴょしゅぴゃああああッ!?」


 推しとの接触で限界を迎えたソクティちゃんが、聞いたことない悲鳴と共に気絶した。

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