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恋を知り、花と咲う《前題:精霊に転生するはずが、なぜかスライムでした ─泉の精霊だってオシャレがしたい─》  作者: ぺぺ
第二幕:皓き山嶺の詩

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54話:愛しの隣人

 サフィと金のあの仔が楽しそうにお話している声が聞こえる。

 いいな。わたしもお話したいな。

 そう思っているのに、わたしのお口はいうことを聞いてくれなかった。まぶたもだんだんと下がってきてしまって、ふたりの声が遠くなっていく。

 サフィの温もりを肩に感じながら、わたしはふたりの声を子守唄にして夢へと落ちていったの――。


 ◆


 翌朝。洞窟にいるせいか、今がもう、太陽が昇っている時間なのかはわからなかった。けれど、いつものように自然と目が覚める時間なら、朝なんじゃないかなって思ったの。

 身動ぎをするとサフィの匂いとは別の、お花とお日さまのいい匂いがした。知らない仔の匂い。きっと、あの仔の匂い。

 いい匂いだったけれど、わたしが嗅いでいたいと思う匂いじゃなかったの。やっぱり、いつも嗅いでいたサフィの匂いの方が落ち着く。そう思って、サフィの身体を抱き寄せた。


 ――幸せな二度寝から覚めて、わたしたちはいつものように髪を梳いていた。泉がないから、お顔を洗うのは水の魔法で済ました。

 昨日と同じ、ポニーテールのオシャレな髪型にした。


 金色のあの仔のお名前は、『シャナ』というらしい。シャナから昨日と同じ、温かい飲み物をもらったときに教えてもらったの。

 そのときに、わたしたちもお名前を教えあった。シャナはわたしたちのお名前を「ステキね」って言ってくれたの。


 森の隣人さんたちと入口に出ると、太陽の光が眩しくて目を細めた。お花たちに露がいっぱいついていて、キラキラとしていてとってもキレイだった。

 森の隣人さんたちはみんな、自分たちのお家に帰るのか、それぞれの思うままに駆けていった。

 けれど、シャナの隣には灰色の赤い目をした大きなオオカミさんがついていたの。


「またね~! 気をつけて帰るんだよ~!」


 シャナは元気よく手を振って、森の隣人さんたちを見送っていた。わたしたちも一緒になって手を振って、時々振り返ってくれる仔がいるとなんだか嬉しくなって笑顔になってしまった。


「シャナ、この仔はだぁれ?」


 わたしはオオカミさんのお顔を撫でながら、シャナに訊いた。オオカミさんはわたしに撫でられて気持ちよさそうに目を細めていた。


「この山を一緒に守ってくれている気のいい隣人さんよ」

「村までは遠いから、この仔に手伝って貰おうと思って」


 起き上がっているとわたしたちよりも大きなオオカミさんはシャナが撫でて合図をするとしゃがんで触れ合いやすいようにしてくれた。サフィは大きなオオカミさんに驚いていたけれど、エフェリアやわたし、シャナが仲良くしているのを見て勇気を出して触れ合っていた。それでも少し怯えてるサフィを見て、オオカミさんはちょっぴり驚かせて遊んでいたわ。イタズラっ子なのね。

 みんなが仲良くなった頃、シャナは慣れたようにその背に乗って、わたしたちも一緒に乗るように手を引いてくれたの。

 オオカミさんの背中はふわふわで、気持ちよかった。サフィがよく手入れされていることを褒めたら、シャナはとても喜んでいたの。「わかる?」ってね。

 サフィが言うには、毎日キレイに身体を洗っていないと毛はゴワゴワと固くなっちゃうんだって。わたしたちの髪やお服も、洗わないとそうなってしまうのかしら?


 みんなでオオカミさんの背中に乗って野山を駆けていた。前からエフェリア、シャナ、サフィでわたしの順番で背中に横向きで乗っている。風を切るように走って、景色が早く過ぎていくの。ゆっくり歩いてお散歩するのもいいけれど、たまにはこういう、風を感じて駆けていくのもいいなって思ったの。

 エフェリアはオオカミさんの頭の上に乗って、とても楽しそうに咲っていた。


「オオカミさん、重くないかしら」


「心配してくれてありがとう。でも大丈夫よ。とっても力持ちだから」

「わたしたちなんてお花の重さと変わりないもの。ねー?」


 シャナがそう言ってオオカミさんの背を撫でると、オオカミさんは元気よく返事をした。なんて言っているかはわからなかったけれど、きっと大丈夫だって言っているように聞こえたの。

 

「朝だし、虹は見えないね」


「そうね。少し残念だけど、雨が降る心配はなさそうね」


 サフィとシャナがそんなことをお話していた。お空は雲ひとつない澄み切った青い、青いお空で、吸い込まれてしまうそうだと思った。このお空から雨が降ってくる心配はないようにも思えるけれど、昨日のように突然降ってくることがあるのかもしれない。


「虹が見えないと、雨が降らないの?」


「うん、そう。西から東……なのかはわからないけど、風向きがそうなら、雨雲が運ばれてくることはないっていう指標になるんだ」

「朝虹は雨、夕虹は晴れって言ってね……シャナもこのことを知ってたの?」


「どちらかと言えば経験からね。毎日見てるもの。なんとなくわかるようになっちゃった」


 そこから、サフィは虹にまつわるお話をしてくれた。虹の掛かった下には宝物が埋まっているというお話。虹を見るとこれから良いことが起こったり、幸せになれたりするというお話。他にも幸せになれるだけじゃなくて、不幸になってしまうお話もあるんだって。昔は魔術的に考えると蝶や虹は不吉の象徴とされ……ということを教えてくれたけれど、わたしにはよくわからなかったの。

 わたし、虹は見られなかったけれど、今はとっても幸せな気分なの。

 今まででは考えられないようなステキな日を過ごしているんだもの。大好きな家族と一緒にお出かけをして、新しくお友だちもできたの。


 気持ちのいい風を全身に受けながら、わたしはサフィの身体に身を寄せたの。サフィはわたしが落ちてしまわないように腰に手を回して掴んでくれている。その手が温かくて、そしたらなんだか眠たくなってきてしまって、揺れも泉に浮いているような安心感と似ていて。

 いつからかわたしは、サフィの肩で眠ってしまったの――。


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