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恋を知り、花と咲う《前題:精霊に転生するはずが、なぜかスライムでした ─泉の精霊だってオシャレがしたい─》  作者: ぺぺ
第一幕:とある泉でのこと

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40-1話:わたしたちの愛しい彼女

後1話だと言いましたね。

アレは嘘です。

もう1話あります。


 ◆


 ――サフィが()()のところへ会いに行ってしまって、わたしはなんだかモヤモヤした気分になって、不貞寝をしていたの。


 そしたらいつの間にか、本当に眠ってしまって、遠くからサフィの声が聞こえて目を覚ましたの。


「……リラ? まだ寝てるの?」


「ヤァね、そんなワケないじゃない」

「サフィが悪いのヨ?」


「えっ……うん……そうかもしれないけど……」

「……起こした方がいいかな?」


「アタシに訊かないでよ!」


「エフェリアまで怒らないでよ……」


 サフィとエフェリアのふたりが、わたしの前でなにかを話しているみたいだったから、ゆっくりと目を開けた。


 眠っている間、わたしは夢を見なかった。

 気が付いたらあっという間で、あれからすぐにサフィが戻ってきてくれたようにも感じる。


 ……夢も見られたらよかったのに。楽しい夢。

 自由に夢を見ることができたら、夢の中でもサフィやエフェリアとたくさん遊べるのになぁ……。なんて考えていたの。


 目を擦って、夢の中みたいにボヤけてしまった視界を元に戻す。


「ん……サフィ……? おかえり……?」


「あっ、リラ。おはよう」

「起こしちゃった……?」


「ううん……そんなことないわ」

「ん……」


 わたしは目を瞑ったまま両手を広げて、サフィにハグをしてほしいとせがんだ。サフィは仕方がないと言いたそうに息をついて、わたしを抱き寄せてくれたの。

 

 でもね。


 わたしは、やっぱり、ちょっぴり怒っているの。

 サフィはわたしを置いていってしまうから。

 だから、わたしは体重を後ろにかけて、サフィと一緒に倒れるようにしたの。


「えっ……わっ……」

「リラ……?」


 サフィはわたしの胸に顔を埋めて、私と一緒に寝転ぶような形になった。

 わたしは何も言わずに、サフィのことをギューッと抱きしめる。


 温かい。


 昨日もこの温かさを感じていたのに、今日、朝とお昼に感じていなかっただけで、とても久しぶりのように思える。

 サフィにわたしの心臓の音がよく聞こえるように、力いっぱい胸を押し付けた。

 服の上から掛かる、サフィの吐息が少しくすぐったい。

 トットットッ……と、緩やかに一定のリズムを刻む心臓がサフィの熱に当てられて、少し早くなっているような気がした。


 わたしはサフィの澄んだ水のような髪を撫でた。サラサラしていて、指で梳くと気持ちいいの。


「リ、リラ……?」


 サフィは反応してくれないわたしに、もう一度呼びかけた。


「ん……もう少し」


 もう少し、もう少しだけ、サフィの温もりを独り占めしていたい。そう思ったの。


 お空はもう昏くなり始めていて、キツネさんみたいなキレイなオレンジ色になっていた。もう、その次には夜になってしまう。

 それなら、残り少ない今日という日のうちは、サフィのことを離したくないと思ってしまったの。


 エフェリアはエフェリアで、倒れ込んだサフィの背中の上で寝転がっていた。サフィの真似をして、心臓の音を聴いているみたいだった。





「ねぇ……リラ……」


「ん」


「怒ってる……?」


「ん」


「……その……ごめん、ね……?」


「……ん」


 わたしたちはしばらく、身体を重ね合ったまま、お互いの温もりを感じあっていた。

 身体に感じる、サフィの重みが心を穏やかにしていく。サフィがいるということがわたしの身体に直接伝わっている間は、泡になってお空へ飛んでいってしまうような……そんなワケのわからない心配がなくなる。

 オレンジ色の空に浮かぶ雲はゆっくりと流れていっている。それを眺めているのも、なんだか落ち着く。


「リラ……その、ね」

「話したいことがあるの」


「……うん」


「昨日みたいに……夜になったら、また、いい……?」


「……うん」

「……今じゃダメ?」


「……夜がいい、かな」


「……わかったわ」


 たぶん、愛のことかな……と思う。

 今日こそは、結婚してほしいって言ってくれるのかしら……。

 少しだけ、怖い。

 でも、わたしはサフィのことを信じたい。

 だから、夜まで待とうと思うの。

 

 本当は、今すぐにでも()()に訊いてわかったことを知りたい。

 結婚してほしいって、最後まで言ってほしい。

 もしも、サフィが言ってくれないのなら、わたしから言おう。

 そう思ったの――。

 


 ◆



 なんでもない話をして、お空を眺めて、そうして、いつの間にかのんびりやさんの夜がやってきた。

 待ちくたびれてしまいそう。

 エフェリアはもうぐっすり眠ってしまっている。


 わたしはお昼にたっぷりと眠っていたせいか、ちょっぴり目が覚めている。

 どちらかといえば、サフィのお話が気になってしまって、目を瞑っても眠ることができなかったの。


 サフィはいつの間にか、魔氷晶で作られた、たくさんの四角いものがくっついたナニカで遊んでいた。

 色んな色がついていて、月明かりに照らされて少しキラキラと光っていて、キレイだった。

 くるくると回して、色が揃っていくのを見るのがなんとなく面白かったの。


「それ、なぁに?」


「えっと……ルービックキューブ……かな」


「るうびっくきゅうぶ?」


「うん。色を合わせて遊ぶ……なんだっけ」

「知育玩具」


「ちーくがんぐ……」


 サフィは難しいことを言う。何かの魔道具なのかな。きっと、前世の世界であったものなんだと思う。


「中身が気になって分解したことがあってね……」

「それが役立つ日がくるとは思わなかったなー……」

「…………」

「コレさ、それぞれの色にそれぞれの属性魔法を組み込んでさ」

「色を揃えると魔法がでたら面白そうだよね」

「二面揃えると複合魔法がでて……」

「全面揃えると大爆発するの」

「できたら楽しそ……あ、でも使う機会ないかな……」

「戦いたくないし」


 サフィは独り言を言うように、その「るうびっくきゅうぶ」を見つめたまま呟いていた。


「ねぇ、サフィ……」


「うん」


「もう、夜よ」


「……うん」


 プリズムに照らされているはずのサフィの顔は、影を落として暗くなったように見えた。


「お話……してくれる……?」


「………………」

「じゃあ、泉の真ん中まで……来てくれる……?」


 サフィはソレを身体にしまって、わたしの顔を見る。

 真剣そうな目をしていると思ったの。

 わたしの目をまっすぐと見て、その瞳の奥になにか強い意志を感じたわ。


「えぇ――」


 わたしたちはエフェリアを起こさないように、そっと身体を起こす。

 手を繋いで、ゆっくりと泉の上を渡っていった。

 満天の星空は泉に映り、泉の中の魔氷晶は仄かに光っていて、とても()()()()()()って言うものだったわ。


「……今日も、キレイだね」


 ドキッとした。

 お星さまのことだと気がついて、慌てて返事をする。


 サフィと見る夜空は、今までなんとなく見ていただけのソレより何倍もキレイに見えた。


 不思議よね。何回も見てきた、同じ夜空なのに。

 サフィと見ているだけで、特別なもののように感じてしまうの。

 もしかしたら、本当に特別なのかもしれない。

 そうだったらいいなって、思ったの。

 今度はエフェリアとも一緒に見てみたいとも思ったわ。


 

 


「すぅ――」

「……………………ふぅ」


 サフィは深呼吸をして、気持ちを整えているようだった。

 わたしも、胸がとってもドキドキしている。

 少し怖くて、胸に手を当てているのだけれど、その手に心臓の動きが伝わってくるの。

 ドッドッドッて、わたしの身体を打ち破ろうとしているんじゃないかと思ってしまうくらいに激しく。

 今すぐにでもわたしの気持ちを叫ぼうとしているように、心という名の壁を叩いているの。


 繋いだ手に力が入る。

 少し汗ばんでしまっていて、恥ずかしい。


 わたしは気を逸らそうと思ったのか、はたまた和ませようと思ったのか。

 キラキラと輝くお空を見て、自然と口を動かしていた。




「――お月さま……キレイね」




 キレイだったの。薄い金色に輝いていて、その周りの夜空へ解けていくようにも見えた。

 もし、触れることができたのなら、きっと温かくて、柔らかいんだろうなって思ったの。


 わたしはお日さまよりも、お月さまの方が好きよ。

 だって、お日さまは温かくて気持ちがいいかもしれないけれど、眩しすぎて見ることができないから。

 でも、お月さまはずっと見ていられるわ。

 お日さまみたいにお服をいい匂いにしてくれたり、温かくしてくれたりはしないけれど、見ているだけで、なぜだか心が落ち着くの。

 

 どうしてかしら。

 

 もしかしたら、神様はお月さまから加護をもらっているって言われているからかもしれない。

 わたしの元へサフィを届けてくれた神様も、お月さまからわたしたちを見守ってくれているのかな。なんて思ったの――。


 


 ◆

 

 


「――お月さま……キレイね」


 告白をしようとしていたはずなのに、なかなか踏み切れずにいたら、リラがそんなことを言った。

 わたしは、わたしの裡にないはずの心臓が飛び跳ねるのを感じていた。


「――」


 思わず、リラの横顔を見たんだ。

 リラは淡い月明かりに照らされる彫刻のように冷ややかで美しい横顔を、少し赤らめていた。

 とても、キレイだったんだ。


「そうだね――」


 わたしから漏れ出たその肯定の言葉は月に対してか、リラに対して言ったのか、わたしでも判らなかった。

 夜の少し冷えた風がリラの髪を靡かせて、その髪は月明かりに照らされて淡く光って、透けていた。


 月のようなヒトだと思った。


 もし、この世に女神がいるのだと言うのなら、それはリラのようなヒトのことを言うのだろう。

 この横顔を、ずっと見ていたい。

 リラのまろい肌がより艶めかしく写し出されて、頬の紅潮もよりハッキリと見える。


 夜というものは、普段わたしたちが隠そうと半透明のヴェールを掛けていたものをすべて暴いてしまう。

 なら、その夜にすべてを暴かれてしまう前に。

 わたしは、わたしの気持ちを伝えようと決心が付いたんだ――。


いつか星降る夜に。好きなんですよね。


ご読了ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
キレイだね(景色が)でドキドキするの定番ながらいいですよねー!!! はードキドキします…… えっこのドキドキしたまま明日を待たないとなのですか???そんなー!!!!
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