18話:花舞う森の舞踏会
チュートリアルだ!戦闘だ!
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「――戦闘のチュートリアルはアンタで済ましたげるっ!」
今わたしの頭は最高に冴えているんだ。
普通だったら緊張状態になって、冷静に状況把握ができないことだってあるだろう。けれど、わたしは余計なことを考える時間すらあった。
もしかしたら、これを緊張状態というのかもしれないけれど。
――普通のチュートリアルはもっと優しい安心設計じゃなかろうか。ウサギとか小型の野生動物だったり、ゴブリンだったり。
決してプレイヤーが致命傷を負うような敵はチュートリアルに向いていないと思う。
けれど、わたしにとってトレントは良い相手だと言える。
それはなぜか。
相手が動けない木偶の坊だからっ!
わたしは魔力を込めて、水の刃を飛ばした。
「ハァッ!」
「――ハァッ!?」
けれど、結果は振るわなかった。
「どうして!?」
「この前やったときは簡単に伐れたじゃない!」
そう、トレントの身体、樹の幹は伐れるどころか全然傷付いていなかった。少し伐れたところからはすぐに芽が生えてきて、傷口を埋めてしまう。再生能力が高いのだ。
「――ッ!」
わたしはもう一度、魔力を多く込めて水の刃を飛ばすものの、結果は同じだった。
迫り来る枝や蔓は伐り落とせても、トレントの本体らしき樹は傷つけられない。
けれど、さっきよりも防御が固かった。防ぎにきた枝や蔓が多かったせいだろうか。もしかしたら、魔力の量がわかるのかもしれない。
そして、わたしはその樹が妙な靄のようなものをまとっていることに気が付いた。よく目を凝らさなければ見えないその靄は、リラに魔法を見せてもらったときのものに気配が似ている。
「……もしかして、魔力をまとってるの?」
(なるほど、魔力の壁ね。魔力防壁といったところかな。その壁がわたしの攻撃を防いで、威力が落ちているのでしょう)
(生半可な攻撃では通用しない。全力の一撃をお見舞いしろというわけね……)
トレントの攻撃も止むことはなく、今も執拗にわたしのことを付け狙っている。わたしもそれを避けるために、常に動き回らなければならない。
当然のことだ。今のわたしは、トレントの攻撃程度では死なないかもしれない。けれど、慢心は危険だ。
ゲームの世界ではないのなら、攻撃は一度でも当たってしまえば死んでしまいかねない。実際、わたしがスライムではなかったら既に何回斃されているかわからない。
「いい練習になりそう、ねっ!」
トレントの攻撃をサイドステップで避ける。
わたしは目で見るのではなく、魔力で周囲を感知する練習をする。
三人称視点のような景色が脳内に浮かび上がる。
背中からの攻撃も、頭上からの攻撃も、魔力感知であれば視ることができる。
トレントはわたしを殺す手段を持ち得ない。ならば、有効活用するべきだ。今のうちに魔力感知をマスターして、いつか来る未来に備えよう。
小型の野生動物やゴブリンでは体験できない、ひとつひとつが必死の攻撃で、避けるのも難しい鋭い攻撃の数々。パリィや回避の練習にはちょうどいい。
「ふふっ」
わたしは笑っていた。死の気配をひしひしと感じるこの熱狂に酔いしれて、興奮していた。
ゲームには無敵時間なんていう生温いシステムがあるけれど、現実ではそうもいかない。攻撃は事前に避けなければいけないし、攻撃の余波も考えなければいけない。攻撃後のストップモーションなんてものもなければ、クールタイムだって存在しない。
(ゲームって優しかったんだなぁ……)
そんなことを思う。
地面が僅かに盛り上がるのを察知して、その場から避ける。その数瞬後、わたしが元いた場所は根の槍で埋まり、標的を貫けなかったとわかると、そのまま曲がってわたしを追いかけてくる。そして、わたしが逃げる先には蔓の罠や槍が待ち構えている。
それらを左右に跳んでやり過ごすも、トレントの周囲はどこも射程圏内だ。逃げ場がない。
それでも、わたしはその猛攻の間を縫うようにして避け続ける。
「ほらほらどうしたの!」
「全然当たってないじゃない!」
わたしはトレントを挑発する。この声が聞こえているのかはわからない。けれど、トレントの攻撃は激しさを増しているようだった。
……少し失敗したかもしれない。人間のように知性と理性があれば、怒らせることで隙を生ませることができただろう。
けれど、トレントにはそれがあるのだろうか?
ただ着実に侵入者を排除する機械的な防衛機構であった場合、非常にマズい。時間をかけるほどわたしは不利になっていくだろう。
わたしは攻撃を避けながら、魔力を溜める。トレントを伐り倒せるくらいに強い一撃をお見舞いしてやらないといけない。
でも、水の刃だと途中で邪魔をされて、威力が落ちてしまうかもしれない。トレントだって、ただ待っているだけではないだろう。魔力の高まりを感じ取れるのであれば、対策してくるに違いない。
この前使った、雷魔法ならなんとかなるだろうか……?
いや、あれは使わない方がいいと思う。
わたしは別に、森を燃やしたいわけじゃない。花畑を荒らしたいわけでもない。強力な雷魔法を使えば森が燃えてしまうだろうし、他のトレントを呼び起こしてしまう可能性もある。
そうなったら生きて帰れるかわからない。なにより、リラが巻き込まれてしまう可能性がある。
ならばここは、水魔法でどうにかするしかない。
……わたしは水の弓を強く想像する。
手元に水の弓が作られて、弦を引くと水の矢が装填される。
――いや、それじゃダメだ。
もっと硬くて、もっと強いもの……っ!
あのトレントを、一撃で斃せるくらいの強い弓っ!
そう、強く願う。
冷ややかな感情がわたしの心を支配していく感覚があった。
無慈悲に目の前の敵を葬る冷酷さを宿して、命を奪う残酷さを赦した。
その冷たい感情が、わたしの水の弓を凍らせていく。
「これは――?」
知っている感覚だ。氷のように透明なその弓は、魔氷晶でできていた。この弓を放てば、あのトレントを氷漬けにできるような確信があった。
美しい弓だ。思わず見蕩れてしまうほどに、神々しい雰囲気を醸し出している。
トレントは何を思ったのか、わたしへの攻撃を躊躇しているように感じた。
この弓が怖いのだろうか。それとも、わたしの感情に怖気付いたのだろうか。
……どちらでもいい。
攻撃が緩んだのならば、その隙を衝くまでっ!
弦を引いて、指を離す。
ヒュンッという刺すように鋭い音と共に、矢が放たれる。凄まじい魔力の跡が、周囲に風を巻き起こす。
わたしの乱れきった髪が膨らんで、周囲の花が舞う。
トレントは咄嗟に根を出して防御する。
矢が根に突き刺さったその瞬間、根は凍てつくように結晶化して、その後ろに樹氷を作っていた。根は重さに耐えきれず崩壊していく。
トレントはその威力を目の当たりにして、わたしへの攻撃を更に過激なものにした。
「――ッ!」
さすがのわたしも、避けることに専念しなければいけないほどだった。少しでも気を緩めれば貫かれてしまうだろうと簡単に予想できる。
トレントも、斃さなければ斃される。と、本能で理解したのだろう。わたしを生かす気はなさそうだった。
トレントは木偶の坊かもしれないけれど、根を張っている範囲であればどこからでも攻撃してくるのが厄介だ。地面はどこも根や蔓が張り巡らされていて、少しでも止まろうものならすぐに脚を掬われてしまう。
呼吸をする必要がある生き物だったら、数分もしないうちに捕らえられていることだろう。
――そして、わたしたちはお互いに相手の隙を衝こうと静止した。
「それじゃあ、まぁ……」
「仕切り直しといこうか――っ!」
かっこよく書けてましたか……
そうだといいな……
ご読了ありがとうございます!
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