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精霊に転生するはずが、なぜかスライムでした ― 泉の精霊だってオシャレがしたい ―  作者: ぺぺ
第一幕:とある泉でのこと

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17話:迷える仔鹿の舞踊劇

リラちゃんはしばらく妖精さんと仲良くしているので大丈夫です。

妖精さんはいいこなのでしっかりなでなでしてくれます。

ちなみに15cmくらいです。


X(旧Twitter)にて活動をはじめました。

更新情報などを発信していますので、ぜひフォローや拡散をお願いいたします!


また、創作をしている方とは積極的に繋がりたいと思っています!仲良くしてくださると嬉しいです♪

「リラ! 待って――!」


 リラは何かに誘われるように、どんどん足取りを早くしていった。 

 足がもつれて、バランスを崩して転んでしまった。

 しっかりと手を握っていたのに、離してしまった。

 たったそれだけ。たったそれだけのことだったのに、わたしの目の前からリラは泡沫のように消えてしまった。


 リラとはぐれてしまった――。

  

 わたしはすぐに立ち上がって、リラが走って行ったと思われる方へと駆けていった。けれど、リラの姿が見えることはなく、白い花が煩わしく嗤うだけだった。

 そんなすぐに離れられるわけがないとしばらく走ってみたものの、一向に見つからない。リラの名前を叫んでも、返事が返ってくることはなかった。


 まずい。


 イヤな汗が滲む感覚があった。気が付いたときにはもう遅かった。森ではむやみに走るべきではない。木々のみが延々と続く森では、方向感覚を失いやすい。それに、声を出したとしても木々が反射したり、吸収したりして、どこから声が聞こえてくるのかもわかりずらい。

 運が悪いことに、わたしたちは白い花が一面に咲き誇る花畑の中にいる。これでは地面も見えず、余計に通って来た道を把握しずらい。わたしは既にその道をも見失ってしまった。


「ハァッ……ハァッ……」


 今の身体では息が上がるはずなんてないのに、鼓動の高鳴りも、体温の上昇もイヤというほど強烈に感じられるような気がする。

 どうする……? どうする……っ! どうする……?!

 迷子になったのはいつぶりだろうか。リラはひとりで大丈夫なのだろうか。そういえば、ひとりぼっちで寂しかったと言っていた。この森のどこかで泣いているんじゃないだろうか。不安に押しつぶされて、どうしようもなくなっているかもしれない。

 そうだ、リラは泉から離れると、消えてしまうはずだ。消えて、泉に戻っているかもしれない。ならば、わたしは先に泉へと帰っておくべきだろうか――。

 ……ダメだ。考えがまとまらない。

 焦ったって、答えを出すことはできない。

 リラをひとりにして、置いていくなんて論外だ。

 わたしは速く走るために、下半身を牝鹿に変えた。鹿のケンタウロスのような容貌だ。


「リラ――!」


 わたしはその姿で、リラの名前を叫びながら跳ねるようにして森の中を、花畑の中を駆けていく。花びらが舞い上がる。

 わたしの蹄が地に触れる度、白い花びらは渦を描き、淡雪のように空へ散っていく。

 降り積もる雪を掻き分けるようにしてみても、見つかるはずもなかった。

 それでも――リラの気配を探し続ける。


「リラ――ッ!」


 叫べば叫ぶほど、胸の奥がざわついていった。返事がないという事実が、喉元に鋭い刃を突きつけてくるようだった。わたしが跳ねるたび、枝葉が擦れあい、わたしの声を飲み込んでいく。

 どれくらい走っただろう。森はただ黙って、わたしの焦りを嘲笑うように白い花の匂いを濃くしていく。

 この花畑は、どこか妙なんだ。

 視界が霞むような感じがする。

 甘い香りが漂って、段々と気持ち悪くなってくる。

 コレは魔力なのだろうか。リラが泉で見せてくれた、あのキレイな魔法の名残りに似ている。

 この花の魔力は、もしかしたら方向感覚を失わせるような効果があるのかもしれない。

 妖精の花だ。

 古い森には鈴のような可憐な花があり、立ち入った者を惑わせるという伝説。

 わたしたちは妖精たちの住処に迷い込み、怒らせてしまったのかもしれない。

 その時だった。


 ――カサ……。


 極めて小さな音。けれど確かに、わたしの耳に届いた。

 木漏れ日の先、花の海の陰で、何かが動いた。


「……リラ?」


 期待が胸を跳ねさせた。わたしは全力で走って近づく。蹄で花茎を折ってしまうのも厭わずに。

 白い影……いや、小さな人影が、揺れている。


 けれど――次の瞬間、その影はふっとかき消えた。


「ま、待って……!」


 追いかけようとした瞬間、足元の花々が一斉にざわりと揺れた。まるで迎え入れるようでもあり、拒むようでもある、不気味な波紋。

 わたしは身を強ばらせた。

 ――これは、森が動いている。

 ぞくりと背筋が震えた。森はただの背景ではない。ここは生きている。意思を持ち、気まぐれに形を変える。

 リラとわたしを試すように。


「魔法がある世界なら、そういうこともあるよね……!」


 木の根がわたしの足を掬うように移動した。わたしはそれに気が付くことはできずに転んでしまい、盛大に身体を打ち付けてしまう。普通の生き物であれば、骨を折ったり、擦りむいたりして負傷していたことだろう。けれど、わたしはスライムだ。怪我はなかった。


「いっつ……」


 怪我がなかったとしても、人間として生きていた頃の名残りが防御反応を示す。その身の硬直が、次の攻撃を許してしまった。

 近くにあった大木が動いて、その太い枝で叩き潰そうとしてきたのだ。


「……!?」


 わたしは咄嗟に跳ねて避けようとする。けれど、下半身が鹿の状態で素早く動くことは叶わなかった。

 それ故に、わたしの下半身は無惨にも叩き潰されてしまった。

 粘液状に戻って、飛び散った下半身が地面のシミになっている。

 生身の生き物だったら、ただでは済まなかっただろうと思う。その間にわたしは下半身を作り直して、体勢を立て直す。

 逃げようと走ってみるも、森が邪魔をするように立ちはだかって、離れることはできなかった。


「トレント――」


 そう、トレントだ。動く樹木の化け物。たしか森を守る番人で、精霊の類だった気がする。

 どうやらトレントと思しき動く樹木は、わたしを外敵だと認識したらしい。

 木の根が地面から穿ち出て、わたしの身体を貫いていく。


「……っ! 殺意高すぎでしょう……っ!」

「精霊の類なら、わたしだって仲間じゃないの!?」


 そんなことはどうでもいいと言わんばかりに、トレントはわたしを排除しようとする。

 草は足に絡まり、葉は刃物のように身体を切り裂く。幹を大槌のように振るい、根は槍のように貫いて。

 どれだけ逃げようとしてみても、それが叶うことはなかった。獲物を狙う蛇のように、執拗にわたしを付け狙う。隙があったら生き物の急所になるであろう場所を的確に貫いてくる。

 時には首を。時には胸を。

 どれだけ串刺しにされようとも、わたしが死ぬことはない。永遠の苦しみを味わうかのような感覚だった。

 わたしは死ぬことはなくても、感覚がある。貫かれれば、その分の粘液状の細胞が、スライムが傷付いて痛みを伴う。魔力ですぐに再生されるけれど、そのせいで余計に痛みが鮮明になっている気もする。

 木の根や蔓に雁字搦めにされて、締め付けられる。腕を縛られて、首を絞められて、胸を穿たれる。


「カハッ……」


 喉から吐かれるのはただの水だけ。

 スライムに戻ったとしても、叩き潰される。

 逃げるためには上半身を器用な人間に、下半身を素早い鹿にする今のスタイルが最適だった。

 それでも、わたしは逃れることを許されなかった。

 

 ――わたしは森を、この花畑を怒らせてしまったのだ。

 無断で立ち入り、脚で命を蹴り飛ばす。リラを探すのに夢中になって、気にかけるのを忘れてしまっていた。

 怒るのも道理だろうと、わたしはどこか諦めていた。

 その花ひとつひとつにも命はあり、キレイな花を咲かせて慎ましく生きていたんだ。それを踏みにじられて、怒らない者はいないだろう。

 ましてや花は精霊や妖精にとって自分自身であったり、家族も同然の存在だ。命の代償は命で払う。それが普通だろう。

 だから、コレは罰なんだ。

 命を粗末に扱った、森からの罰。

 わたしは項垂れて、身体の力を抜く。そうしたことで、トレントはようやく、わたしを解放した。

 

 ――けれど、死ぬつもりは毛頭ない。


 わたしは逆上した。

 責任を押し付けるなら、リラを惑わして迷子にさせたアンタたちの方が絶対に悪いっ! 大切な家族を失おうとしているのは、アンタたちだけじゃない!

 むしろ今、わたしを排除しようがために花を散らしているアンタはいいの!? そんな怒りが湧いてくる。

 わたしは歯を食いしばって、立ち上がる。

 産まれたての仔鹿のように震えているのは、きっと怒りのせいだろう。

 被捕食者とは思えない鋭い眼光で、トレントを睨みつける。


「いいよ! やってやろうじゃない!」

「戦闘のチュートリアルはアンタで済ましたげる――っ!」


異世界転生といったらやっぱり戦闘ですよね!

チュートリアルがトレントってなんですか???


ご読了ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
カービィのチュートリアルもトレントみたいなものですし……問題ナシ(!?) 戦闘シーンもおしゃれですねぇ。がんばって……!
不穏な空気から一気に大ピンチに! 情景と心理描写で構築された戦闘シーンは、鬼気迫る雰囲気と有無を言わさない迫力が一気に映像というかその馬で見ている臨場感がすごい…… ここから反撃だ!と思わせて……続き…
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