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精霊に転生するはずが、なぜかスライムでした ― 泉の精霊だってオシャレがしたい ―  作者: ぺぺ
第一幕:とある泉でのこと

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14話:書を捨てよ、森へ出よう

本当はもっとオシャレ回とか書きたいんですけどね。

グダってしまうので……

いっぱいいっぱいオシャレしようね……


X(旧Twitter)にて活動をはじめました。

更新情報などを発信していますので、ぜひフォローや拡散をお願いいたします!


また、創作をしている方とは積極的に繋がりたいと思っています!仲良くしてくださると嬉しいです♪

「――外まで?」


 わたしは首を傾げた。お散歩は毎日のようにしている。泉の畔をゆっくりとまわって、鳥たちの歌に耳を傾けたり、日光浴をしたりする。

 けれど、その「外まで」が何を指すのか、いまいちよくわからなかった。


「そう、外まで」

「せっかく人型になれたし、一緒に遠くまで行ってみない?」


 つまり、サフィは泉を出ようと言っているみたい。でも、泉から離れたときのことは伝えたことがあるはずよね。なにか思いつくことがあったのかな。

 

「でも、出られないわ」


「うん。だから、試したいことがあるんだ」

「原因がわかれば、もしかしたら自由にお出かけできるようになるかもしれない」


 サフィとお出かけできるのは、とても魅力的だと思う。一緒に広い世界を見てみたいと思う。

 けれど、あの自分が消えていってしまうような感覚は、少し怖い。


「……うん」


 わたしは消え入るような声で返事をしてしまった。本当はもっと笑顔で返事をしたかったけれど、胸から溢れる(さざなみ)に掻き消されてしまったのだと思う。

 大丈夫。怖くない。

 自分にそう言い聞かせる。

 だって、サフィがいるんだもの。ふたりなら、どこだって行けるはず。


「……じゃあ、手を繋いで行こっか」

「これなら、迷子になることもないでしょ?」


 サフィは少しの間を置いてから、そのように提案してくれた。サフィはわたしの手を取って、森へと歩いていく。

 ――温かい。温かくて、柔らかい。サフィは先を進もうとしないで、わたしの歩幅に合わせて歩いてくれているように感じる。本当はもっとお散歩をしたいだろうに、わたしと肩を寄せるようにしてゆっくりと歩く。


 始めは暗くてジメジメした、あまり楽しくないものに感じていたけれど、今はそうでもない。

 サフィと一緒に変な形をしたキノコを見つけたり、キレイなお花を見つけたりして、ふたりで咲いあった。

 森の中にはふたりで手を繋いでも、囲むことができないような大きな木がいくつも生えていた。背も高くて、葉っぱの間から漏れている光がお星さまみたいでキレイだった。

 もう少し進むと、細くてノッポな木が生えている所以外、小さな白い花で埋め尽くされている場所に出た。森の中にお花畑があったの。


「サフィ、見て。とってもキレイよ」


「うん。すごいね」

「少ない光でも成長できるんだ……強い花だね」


「光がないと成長できないの?」


「そうだよ」

「木や花にとって、太陽の光はわたしたちにとっての魔力と同じ、ご飯なんだよ」


 サフィは色々なことを知っている。さっきも、木が大きい理由や、キノコは小さな生き物の集まりだとか、色々なことを教えてくれた。それに、木やキノコにも、それぞれ名前が付いていることも教えてくれた。

 

「ねぇねぇ、このお花にはなんて名前があるの?」


 サフィは何かを思い出そうと身体をくねらせて考えている。その動きが、少しかわいい。

 

「うーん、さすがにそこまで知らないかな……ごめんね」


「サフィも知らないことがあるのね」


「いっぱいあるよ」

「魔法のことなんて何もわからないし、花も知らないものの方が多いと思う」


 サフィはそんなことを言うけれど、わたしはとってもすごいと思う。


「ブルーベルみたい」


 サフィがそんなことを言う。お花の名前? と聞くと、こうやって森の中でいっぱいになって咲くお花があるみたい。そのお花は白色じゃなくって、青や桃、紫といった色をしているんだって教えてくれた。中には白いものもあるそうみたい。

 お花はスカートのように下を向いて咲いていた。ひとつの茎の先に、並ぶようにしてお花を付けて、その重さで垂れているようにも見えた。


「この子たち、どうして下を向いてしまっているの?」

「元気がないのかしら……」

「やっぱり、光が足りないせい?」


 わたしは屈んでそのひとつのお花を優しく撫でる。


「この花たちは元々そうやって咲く花だと思うよ」

「葉っぱを見てみて。枯れていないし、丈夫でしょう?」

「だから、心配しなくても大丈夫」


 わたしは葉っぱにそっと触ってみる。少し濡れていて、青々としている。確かに、元気に見える。


「サフィって、お医者さまみたいね」


 お医者さまって言う人は、何でも知っているって聞いたことがある。身体の悪いところを見つけて、元気にしてくれるらしい。サフィも、少し診ただけでお花が元気だとわかるなら、お医者さまなのかもしれない。


「ヤブ医者かー、いやでもこの世界なら結構やっていけそう」


 サフィはよくわからないことを言う。訊いてみると、気にしないで。と、流されてしまった。

 わたしたちはお花たちを踏まないように、少し慎重になってお花畑の中を歩いていく。元々視界はあまり良くないけれど、見渡す限りどこまでも小さな白いお花が咲いている。

 お花が服に擦れる度、真珠のような小さな鈴の音が聞こえてくる。チリリ、チリン。と、かわいらしい音が鳴る。


「サフィ、聞こえる? キレイな音ね」


「うん、不思議」

「魔法の花なのかな」


「泉の近くにも咲いていたら良かったのに」

「そうしたら、風が吹く度にかわいらしい音が聞こえるのに」

「……少し持ち帰ってはダメかしら」


「……うーん、ひとりだけ離ればなれにするのは可哀想……って言うべきかな……」


 確かに、サフィの言う通りかもしれない。ここでみんなが集まって咲いているのは、ひとりが寂しいからなのかもしれない。わたしはその気持ちがわかるから、持ち帰ってしまうのはいけないと考え直したの。


「ん……そうね」

「ひとりは寂しいもの、やっぱり家族やお友達と一緒がいいわよね」


「そう言えばリラ、調子はどう? ツラくない?」


 わたしはサフィにそう訊かれて、初めて思い出す。今のところ力が抜ける感覚も、倒れてしまうそうに感じることもない。


「うん、大丈夫よ。心配しないで」


 元から心配しすぎだったのかもしれない。今は名前の加護があることで、前よりも魔力が増えている。もしかしたら以前そうなってしまったのは、本当に魔力切れのせいだったのかもしれない。


「そっか。もう少し散歩する?」

「それとも今日はもう帰っておく?」


「もう少し、お散歩してもいい……?」

「サフィとこうしてたいの……」

「それに、確かめたいこともあるんでしょう?」

「サフィがいてくれるから、わたしは大丈夫よ」


 サフィの手からは、温かな感触が伝わってくる。こうして手を繋いでいれば、不思議と何も怖いものはないように思えてくる。その手を目に映る当たりまで上げて、わたしは安心を伝えようと微笑んだ。

 それに応えるように、サフィも咲ってくれる。

 さっきよりも肩を寄せて、触れ合うようにしながら白いお花の絨毯の中を歩く。

 足元からは絶えず鈴の音のようなキレイな音が聞こえてくる。けれど、それとは別の方向、わたしたちの足元以外からもその音が聞こえたような気がした。

 わたしは歩みを止めて、その音のした気がする方を向いた。


「リラ、どうしたの?」


「ん……音が聞こえた気がするの」


 耳を澄ますと、確かに鈴のような音が聞こえる。風や露のせいかとも思ったけれど、少しずつ移動している。それに、その音がしたところをよく見ると、魔力が通った跡のようなものが見えた。


「ねぇ、サフィ、誰かいるよ」


 その魔力の道はお花を避けるように続いていて、とても小さい、キラキラした道だった。わたしはサフィの手を引いて、その道をなぞるように進んでいった。


「リラ、どこに行くの?」


 サフィは心配そうに言う。心配することなんてないのに。だって、優しい色をしているもの。お日さまのような、薄い金色。わたしは戸惑うサフィの手を強く引っ張って、お花の間を縫うように現れるキラキラした道を追いかけていく。


「リラ! 待って――!」

 

 それがいけなかった。

 好奇心に任せて、周りが見えていなかった。

 段々と速くなっていくその道を追いかけることに夢中になって、わたしはサフィの手を離してしまっていた。お花畑とはいえ、森の中で木々が視界を遮っている。わたしたちは瞬く間に離ればなれになってしまった――。


新しいキャラクターの予感……!


ご読了ありがとうございます!

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