14話:書を捨てよ、森へ出よう
本当はもっとオシャレ回とか書きたいんですけどね。
グダってしまうので……
いっぱいいっぱいオシャレしようね……
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「――外まで?」
わたしは首を傾げた。お散歩は毎日のようにしている。泉の畔をゆっくりとまわって、鳥たちの歌に耳を傾けたり、日光浴をしたりする。
けれど、その「外まで」が何を指すのか、いまいちよくわからなかった。
「そう、外まで」
「せっかく人型になれたし、一緒に遠くまで行ってみない?」
つまり、サフィは泉を出ようと言っているみたい。でも、泉から離れたときのことは伝えたことがあるはずよね。なにか思いつくことがあったのかな。
「でも、出られないわ」
「うん。だから、試したいことがあるんだ」
「原因がわかれば、もしかしたら自由にお出かけできるようになるかもしれない」
サフィとお出かけできるのは、とても魅力的だと思う。一緒に広い世界を見てみたいと思う。
けれど、あの自分が消えていってしまうような感覚は、少し怖い。
「……うん」
わたしは消え入るような声で返事をしてしまった。本当はもっと笑顔で返事をしたかったけれど、胸から溢れる漣に掻き消されてしまったのだと思う。
大丈夫。怖くない。
自分にそう言い聞かせる。
だって、サフィがいるんだもの。ふたりなら、どこだって行けるはず。
「……じゃあ、手を繋いで行こっか」
「これなら、迷子になることもないでしょ?」
サフィは少しの間を置いてから、そのように提案してくれた。サフィはわたしの手を取って、森へと歩いていく。
――温かい。温かくて、柔らかい。サフィは先を進もうとしないで、わたしの歩幅に合わせて歩いてくれているように感じる。本当はもっとお散歩をしたいだろうに、わたしと肩を寄せるようにしてゆっくりと歩く。
始めは暗くてジメジメした、あまり楽しくないものに感じていたけれど、今はそうでもない。
サフィと一緒に変な形をしたキノコを見つけたり、キレイなお花を見つけたりして、ふたりで咲いあった。
森の中にはふたりで手を繋いでも、囲むことができないような大きな木がいくつも生えていた。背も高くて、葉っぱの間から漏れている光がお星さまみたいでキレイだった。
もう少し進むと、細くてノッポな木が生えている所以外、小さな白い花で埋め尽くされている場所に出た。森の中にお花畑があったの。
「サフィ、見て。とってもキレイよ」
「うん。すごいね」
「少ない光でも成長できるんだ……強い花だね」
「光がないと成長できないの?」
「そうだよ」
「木や花にとって、太陽の光はわたしたちにとっての魔力と同じ、ご飯なんだよ」
サフィは色々なことを知っている。さっきも、木が大きい理由や、キノコは小さな生き物の集まりだとか、色々なことを教えてくれた。それに、木やキノコにも、それぞれ名前が付いていることも教えてくれた。
「ねぇねぇ、このお花にはなんて名前があるの?」
サフィは何かを思い出そうと身体をくねらせて考えている。その動きが、少しかわいい。
「うーん、さすがにそこまで知らないかな……ごめんね」
「サフィも知らないことがあるのね」
「いっぱいあるよ」
「魔法のことなんて何もわからないし、花も知らないものの方が多いと思う」
サフィはそんなことを言うけれど、わたしはとってもすごいと思う。
「ブルーベルみたい」
サフィがそんなことを言う。お花の名前? と聞くと、こうやって森の中でいっぱいになって咲くお花があるみたい。そのお花は白色じゃなくって、青や桃、紫といった色をしているんだって教えてくれた。中には白いものもあるそうみたい。
お花はスカートのように下を向いて咲いていた。ひとつの茎の先に、並ぶようにしてお花を付けて、その重さで垂れているようにも見えた。
「この子たち、どうして下を向いてしまっているの?」
「元気がないのかしら……」
「やっぱり、光が足りないせい?」
わたしは屈んでそのひとつのお花を優しく撫でる。
「この花たちは元々そうやって咲く花だと思うよ」
「葉っぱを見てみて。枯れていないし、丈夫でしょう?」
「だから、心配しなくても大丈夫」
わたしは葉っぱにそっと触ってみる。少し濡れていて、青々としている。確かに、元気に見える。
「サフィって、お医者さまみたいね」
お医者さまって言う人は、何でも知っているって聞いたことがある。身体の悪いところを見つけて、元気にしてくれるらしい。サフィも、少し診ただけでお花が元気だとわかるなら、お医者さまなのかもしれない。
「ヤブ医者かー、いやでもこの世界なら結構やっていけそう」
サフィはよくわからないことを言う。訊いてみると、気にしないで。と、流されてしまった。
わたしたちはお花たちを踏まないように、少し慎重になってお花畑の中を歩いていく。元々視界はあまり良くないけれど、見渡す限りどこまでも小さな白いお花が咲いている。
お花が服に擦れる度、真珠のような小さな鈴の音が聞こえてくる。チリリ、チリン。と、かわいらしい音が鳴る。
「サフィ、聞こえる? キレイな音ね」
「うん、不思議」
「魔法の花なのかな」
「泉の近くにも咲いていたら良かったのに」
「そうしたら、風が吹く度にかわいらしい音が聞こえるのに」
「……少し持ち帰ってはダメかしら」
「……うーん、ひとりだけ離ればなれにするのは可哀想……って言うべきかな……」
確かに、サフィの言う通りかもしれない。ここでみんなが集まって咲いているのは、ひとりが寂しいからなのかもしれない。わたしはその気持ちがわかるから、持ち帰ってしまうのはいけないと考え直したの。
「ん……そうね」
「ひとりは寂しいもの、やっぱり家族やお友達と一緒がいいわよね」
「そう言えばリラ、調子はどう? ツラくない?」
わたしはサフィにそう訊かれて、初めて思い出す。今のところ力が抜ける感覚も、倒れてしまうそうに感じることもない。
「うん、大丈夫よ。心配しないで」
元から心配しすぎだったのかもしれない。今は名前の加護があることで、前よりも魔力が増えている。もしかしたら以前そうなってしまったのは、本当に魔力切れのせいだったのかもしれない。
「そっか。もう少し散歩する?」
「それとも今日はもう帰っておく?」
「もう少し、お散歩してもいい……?」
「サフィとこうしてたいの……」
「それに、確かめたいこともあるんでしょう?」
「サフィがいてくれるから、わたしは大丈夫よ」
サフィの手からは、温かな感触が伝わってくる。こうして手を繋いでいれば、不思議と何も怖いものはないように思えてくる。その手を目に映る当たりまで上げて、わたしは安心を伝えようと微笑んだ。
それに応えるように、サフィも咲ってくれる。
さっきよりも肩を寄せて、触れ合うようにしながら白いお花の絨毯の中を歩く。
足元からは絶えず鈴の音のようなキレイな音が聞こえてくる。けれど、それとは別の方向、わたしたちの足元以外からもその音が聞こえたような気がした。
わたしは歩みを止めて、その音のした気がする方を向いた。
「リラ、どうしたの?」
「ん……音が聞こえた気がするの」
耳を澄ますと、確かに鈴のような音が聞こえる。風や露のせいかとも思ったけれど、少しずつ移動している。それに、その音がしたところをよく見ると、魔力が通った跡のようなものが見えた。
「ねぇ、サフィ、誰かいるよ」
その魔力の道はお花を避けるように続いていて、とても小さい、キラキラした道だった。わたしはサフィの手を引いて、その道をなぞるように進んでいった。
「リラ、どこに行くの?」
サフィは心配そうに言う。心配することなんてないのに。だって、優しい色をしているもの。お日さまのような、薄い金色。わたしは戸惑うサフィの手を強く引っ張って、お花の間を縫うように現れるキラキラした道を追いかけていく。
「リラ! 待って――!」
それがいけなかった。
好奇心に任せて、周りが見えていなかった。
段々と速くなっていくその道を追いかけることに夢中になって、わたしはサフィの手を離してしまっていた。お花畑とはいえ、森の中で木々が視界を遮っている。わたしたちは瞬く間に離ればなれになってしまった――。
新しいキャラクターの予感……!
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