9話:彼女の泉
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――電磁砲を撃って惨状を生んだ後、わたしはあらためて「ごくごく一般的な雷魔法」を実演した。
「トニトルス!」
ここは一般的に「サンダー!」とかでもいい気がするけれど、こういうのは、わたしはラテン語派なんだ。なぜって? その方がかっこいい。古典はオタクの血を滾らせるものなんだ。
眼の前の木が少しだけ焦げるくらいの、弱い電撃だ。もちろん、人に向ければコレでもかなり危険な威力ではある。
「これが雷魔法なのね?」
「そのはずだよ」
「さっきのは……たぶん、魔法の真髄ってやつだよ」
「どうしてサフィはそんなことができるの?」
そう言われると、困ってしまう。想像力の違いとかだろうか。できると知っていること、想像できることであれば、魔力が足りる限り実現できるというのであれば、理に適っていると思う。
だが、それを差し引いても言うべきことはただひとつ。
「……転生者だからじゃない?」
「そういうものなの?」
「そういうものにしておいた方がいいと思うよ」
リラは少し納得がいかないと言った風に、首を傾げる。
「まぁ、そうね」
「冒険者って言う人たちから転生者については聞いた覚えがあるわ」
「すごい加護を持っているんだって」
わたしの他にも、転生者はいるらしい。なんでも、転生者は皆、特別な力を持っているそうだ。そしてその力は必ず強大なもので、世界を導く力があるらしい。それがたとえ、破滅であってもだ。
「サフィはすごいのね」
「でもさ、リラもすごい魔法使ってたじゃない?」
あの神秘的な光景は、一生の宝物になる気がする。力ばかりの危険な魔法より、リラの見せてくれた魔法の方が、わたしは好ましく感じる。
「それに、わたしたちは家族になったじゃない」
「同じ加護を授かったなら、きっとリラも同じことができると思う」
「そうかしら……」
泉の畔で、足を遊ばせているリラは、静かに咲う。どこかその横顔が寂しそうにみえたのは、静かな泉に聞こえるその水音のせいかもしれない。
「だってわたしは、リラが見せてくれたあの魔法、できる気がしないもの」
「だからリラは、きっとわたしよりもすごいし、リラがわたしのことをすごいと言ってくれるなら、わたしたちは同じくらいにすごいんだよ」
自分で言っていて少しわけが分からなくなってきた。まぁとにかく、リラには笑顔が似合う。ずっと笑顔でいてほしいので、悲しみはご退場願います。
「ふふっ……」
「ありがとう、サフィ」
リラは咲うと、わたしを持ち上げ、抱きしめた。
こういうとき、人型でないことが悔やまれる。体温も常温の水くらいしかないし、抱きしめ返すことができない。
「リラ、ちょっと歩かない?」
わたしたちはそのまま、泉を散歩することにした。リラに持ち上げられたまま泉の上を散歩するのは少し新鮮な気持ちだ。子犬とかのペットになったような気分で、悪くはない。
今までは畔で過ごしていたから、泉の中がどのようになっているのか、覗いたことがなかった。身長が20センチ程だと、角度的に水面が光を反射して、鏡のようになってしまうからだ。
水はどこまでも澄んでいて、水底の水草や小石が鮮明に見える。リラが一歩踏み出すごとに波紋ができて、どこか神秘的にみえる。
水の上を歩く乙女。きっと、画になるに違いない。そう考えると、絵を描きたい欲が湧いてくる。久しぶりに、油絵を描いてみたい。油絵は高校生の頃、美術部で描いた以来だろうか。と、少し前世を思い出す。いつか人間の住む街に行けたら、絵の具を探してみるのもいいかもしれない。
このときわたしは、自分の死が高校生のときであったことも忘れていた。
泉の中央に近づくにつれて、水深は深くなり、ただの小石は段々と水晶のような透き通った石に変わっていった。
「わぁ……キレイな石……いっぱいあるね」
「ふふ、そうでしょ」
「あれはね、全部魔力の塊なのよ」
「泉に溢れる魔力が収まりきらなくなって、結晶化しているみたいなの」
「すごい……」
人間よりも大きい結晶が、水底を埋め尽くしている。魔力の結晶体……魔鉱晶なんて名前がついていないだろうか。
「アレね、とってもキレイだから、冒険者って人たちにお礼として渡したことがあるの」
「そしたらね、すっごいびっくりして……」
「『どこで手に入れたの?』って訊かれたの」
「だから、『ここでいっぱい拾えるよ』って答えたわ」
「その人たちから聞いた話だと、魔氷晶って言うそうよ」
「水晶ではないの……?」
「永久に解けることのない、神様が創造した氷……って言っていたと思う」
どこかでそのように信じられていたと見かけたような気がする。つまり、アレは魔氷晶と名前がついているものの、その実態は魔力を蓄えた水晶ということになる。水晶は純度が高ければ高いほど透明になる。
水底に見える魔氷晶はすべて透明で、水との境目がわかりにくかった。
……きっととても貴重なんだろうなぁ。冒険者たちの反応を見る限り、ダイヤモンド以上の価値がありそう。この世界にはオリハルコンやアダマンタイトとかはあるのだろうか。後はミスリルとか。
たぶん、それらと同等の価値があると見た。
それより、こんなすごいであろう泉の精霊であるリラは、この世界においてどれほどの力を持つ存在なのだろうか。自覚できていないだけで、かなり上位の精霊だと思うんだけど……。
「あ、そうだ!」
「サフィ、これでお揃いのアクセサリーを作りましょう?」
リラがいいことを思いついたと、弾む。
透明な宝石のお揃いのアクセサリー。考えるだけでも心が弾む。お揃いでもいいけれど、月と太陽のように、対になるものを作ってみても楽しそうだと思う。
「素敵だね、じゃあ、お互いに作って、プレゼントし合うのはどう?」
「そうしましょ!」
「なにを作りましょうか……」
「考えるのも楽しいわね」
そこでひとつ、わたしは疑問に思うことがあった。
「そう言えばなんだけど、どうやって作ればいいの? 硬そうだし」
「魔力で簡単に形を変えられるのよ」
「初めはコツを掴まないと難しいと思うけれど……」
「結構楽しいのよ」
リラは泉の中ではやることがないので、アクセサリーを作って遊ぶことが多かったそうだ。そして、それらをやってきた冒険者たちにあげていたそうだ。みんな、言葉にはしないものの、持てるだけ欲しそうな顔をするものだから、殆どをあげてしまったと言う。
……えっ、そんな価値のあるものをもったいない。
わたしはそう思ったものの、リラは優しいし、喜んでくれているのが嬉しかったのだろうと思うから、口にはしない。
そのついでに、気になったことを訊く。
「そういえば、リラってどれくらい生きてるの?」
女性に歳を訊くのは憚られるけれど、ここはハッキリとさせておきたい。わたしは生後一年経っているかもわからない赤ちゃんなのだ。今はリラしか頼みの綱はないし、そのリラもなんとなく、世間を全く知らないように感じる。
「どれくらい……」
「……いっぱい?」
ダメそう。考えた末の答えがこれでは、知識面でも頼れなさそうである。
他の精霊とかはいないのだろうか。
「この泉……それなりに大きいと思うし、魔力も豊富だと思うんだけど……」
「他の精霊やお友達はいないの?」
「……」
リラは黙ってしまった。初めて話したときも、ずっとひとりで寂しかったと言っていたし、触れない方が良い話題だったかもしれない。
「わたし……ずっとひとりだったから……」
「本当に時々、冒険者だって言う人たちが来てくれて、いっぱいお話してくれるの」
「一緒に来ないかって言われたこともあったけれど……」
「わたし、泉から出られないから……」
「そうなの?」
この泉は、色々と特殊なのかもしれない。
とても貴重そうな魔氷晶が水底に大量に生成されているし、その影響なのであろう泉に含まれている魔力もとても多い。
「少しくらいなら大丈夫よ」
「泉の中はなにもないから、外の世界が気になって、散歩したことがあるの」
「そしたら、段々と力が出なくなっちゃって……」
「日が沈む前に、急いで帰ってきたわ」
「魔力切れとか?」
「違うと思う」
「これでも、わたしは魔力には自信があるのよ、精霊だし」
「冒険者の人たちに連れていってもらったときにはね、そのまま倒れちゃって、気がついたら泉にいたの」
「それでしばらくしたら、その冒険者の人たちが走ってきてね」
「そのとき、わたしは段々と透明になって消えてしまったんだって言っていたわ」
泉に縛られた精霊……あぁ、たしかそんな伝説もあった気がする。あまり思い出せないけれど、結ばれると魂を得て、永久不滅の存在になるんだったっけ……。
となると、特殊なのは泉よりも、精霊そのものの生態? になるのかな。
「リラはさ、泉から出られたら、行ってみたい場所はある?」
「えぇ、もちろん」
「わたしは……人がいる街に行ってみたいの」
「そこでね、色々な人とお話して、お友達になるの」
「後は……同じ精霊のお友達にも逢ってみたいわ」
「いいね」
「じゃあさ、わたしが連れて行ってあげるよ」
アクセサリー作りは、少し待ってもらうことにしよう。
その前に、わたしにはやらなければならないことができたからだ。
雰囲気作りは大事だからね。
それに、うまくできるように練習する時間もほしい。
「本当に?」
「えぇ、本当に――」
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