90-3話:湖の乙女たち
※女の子の目線のお話です。
◆
あたしはシャナお姉ちゃんと、青いお姉ちゃんたちと一緒にお散歩をしているの。ついでにお花みたいな妖精さん。みんなのお名前は話しているときに聞いちゃったから、なんとなく知ってるけど、まだ呼んだことはないの。
呼んじゃいけない決まりなんだって。
それでね。
今までお姉ちゃんたちとたくさん遊んできて、とっても仲良しになって、お友だちくらいにはなれたと思うの。
だから、そろそろお名前を知りたいな。なんて。そんなことを思ったの。
「ぜんぜん見えないね~」
「この湖、とっても深いんだね」
あたしたちは今、ほんの少しだけ湖の中の方までお散歩をしてきているの。悪いことだってわかってるけど、お姉ちゃんたちにワガママを言って、連れてきてもらったの。下を見ると、キレイでどこまでも見えそうだった湖の底も、光が届かないくらいに深かったの。あたしはそれを見ていたらまっくらで怖くなっちゃって、お姉ちゃんたちの手をぎゅってにぎりしめた。
まちがっても手をはなさないようにしないと、おぼれちゃうもの。
当たり前かもしれないけど、湖の上にはお花なんて咲いてなくって、お魚さんもちょっとしか見えなかった。足元を見るとなにもないからつまらないけど、その代わりに遠くを見るととってもキレイなの。
湖が青いお姉ちゃんたちみたいにキラキラしていて、まぶしいお水のお花畑を歩いてるみたいだと思った。
手をつないでくれてるお姉ちゃんたちの手は温かくって、優しくって、とっても好きよ。あたしね、しょうらいはお姉ちゃんたちみたいなステキなお姉さんになるのが夢なの。
だから、あたしはお姉ちゃんたちのことをいっぱい知りたい。どうしたらステキなお姉さんになれるのか、お姉ちゃんたちにきいてみたいの。
あたしはわらっているお姉ちゃんたちの顔をじっと見つめて、そのひみつがかくされていないかさがしてみることにしたの。お姉ちゃんたちはみんなお顔がステキで、笑顔がステキで、とっても優しい。
……やっぱりひみつはわからない。
あさい所にもどって湖のお散歩をしながら、あたしはお姉ちゃんたちにきいてみた。
「ねぇねぇ、シャナお姉ちゃん。どうしたらステキなお姉さんになれるの?」
「え? うーん……みんなに優しくする、とか?」
「青いお姉ちゃんは?」
「わたしもか……そうだなぁ、ひとつはシャナが答えてくれたし……憧れのヒトを目指すとか?」
「あこがれの人?」
「そう。あんなヒトになりたいなって思って、もしそのヒトだったらどんなことをするかなって考えながら行動するの」
「あのヒトだったらきっとそうする。だからわたしも真似をする――そうすれば、あなたが考えるステキなお姉さんになれるんじゃないかな」
「あなたが考えるステキなお姉さんって、どんなヒト?」
「あたしが考えるステキなお姉さん……」
「――お姉ちゃんたち!」
あたしはシャナお姉ちゃんや青いお姉ちゃんたちを見て、大きな声で答えた。あたしはお姉ちゃんたちみたいなステキなお姉さんになりたい。
お姉ちゃんたちのお手々を引っ張って、むねに抱いた。
お姉ちゃんたちは転びそうになっちゃって、あっと声を出した後にわらっていた。
「ありがと。それじゃあ私たちはステキなお姉さんとしてお手本にならないとね」
「そうだね。でも、わたしたちのことはあんまり参考にしないで、あなたの大好きなシャナお姉ちゃんを参考にしてね」
青いお姉ちゃんは向いてないよ。って、お顔の前で手を振っていた。
やっぱり、青いお姉ちゃんってヘンテコさん? なのね。だって、とってもステキなお姉さんだもの。あたしは青いお姉ちゃんみたいにとっても優しいお姉さんになりたいなって思っているの。
もちろん、シャナお姉ちゃんも優しいけど、青いお姉ちゃんの優しさも大好きなの。
大きなちがいはよくわからないけど、シャナお姉ちゃんにはシャナお姉ちゃんのステキなところがあって、青いお姉ちゃんには青いお姉ちゃんのステキなところがある。
だから、よくばりさんのあたしはみーんなお手本にするの。
そしたら、お姉ちゃんたちにも負けないくらいとってもステキなお姉さんになれるよね?
◆
湖のあさい所をいっぱい歩いて、今は帰る前にちょっぴり休んでる。
お姉ちゃんたちは木のかげで休んでお話をしていた。
お名前のお話をするなら今が良いかなって思ったの。
「ねぇ青いお姉ちゃん」
声をかけると、ふたごさんの青いお姉ちゃんたちがあたしの顔をのぞくようにする。どっちのお姉ちゃんもとってもそっくりさんで、ひとめ見ただけじゃどっちかまちがえちゃいそう。
「あたしがお名前呼びたいって言ったら、おこる?」
おそるおそるきくと、お姉ちゃんたちは不思議そうにお顔を合わせてわらった。
「怒らないよ」「怒んないわ」
「じゃあ、お名前、教えてくれる? あたしのお名前も教えたら、呼んでくれる?」
「うん」
青いお姉ちゃんたちは優しい笑顔で答えてくれた。
「シャナもいい? わたしたち、この子にイタズラとか、契約はしないからさ」
「うん。あなたたちなら歓迎よ。信じてる」
「ねぇねぇ? アタシは? アタシも一緒よね?」
お花みたいな妖精さんが青いお姉ちゃんたちの間からお顔を見せて、悲しそうなお顔になっていた。ごめんなさい。仲間外れにしちゃったと思ったのね。
「うん。あなたのお名前も教えて」
「えへへ~♪ 仕方ないわね!」
「じゃあわたしからね」
「わたしの名前はサフィだよ」
「……あ、姓はフォンテーヌだよ」
「わたしはリラ。サフィがつけてくれたお名前なの」
「サフィのお名前はわたしがつけたのよ」
リラお姉ちゃんは自慢をするように教えてくれた。そのお名前が大好きなのね。すぐにわかったわ。
「じゃあじゃあ、アタシの番ね? アタシはエフェリア!」
「アタシのお名前もサフィがくれたのよ♪」
お花のような妖精さんのエフェリアは、両手でほっぺを押さえて嬉しそうに言った。みんな、おたがいのことが大好きなんだって伝わるくらい、とってもステキな笑顔だった。
「ほらほら、次はアナタの番よ? アナタのお名前を教えてちょうだいな」
「うん。あたしの名前はエリアーヌ。エリアーヌ・ベッカー」
「エリーって呼んでね――」
女の子のお名前が公開されましたね。
彼女はエリアーヌ・ベッカーというそうです。
お母さんはエマ・ベッカーらしいですね。




