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精霊に転生するはずが、なぜかスライムでした ― 泉の精霊だってオシャレがしたい ―  作者: ぺぺ
第一幕:とある泉でのこと

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8話:理由はもちろんおわかりですね?

X(旧Twitter)にて活動をはじめました。

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また、創作をしている方とは積極的に繋がりたいと思っています!仲良くしてくださると嬉しいです♪

 ――翌朝、気持ちのいい朝を迎えた。

 いやぁ、やっぱり睡眠はいいね。日が昇るまでぐっすりすやすや。身体の疲れも取れて、気分がいい。


 泉の畔で、外を見上げているリラの姿があった。

 わたしは夜の間にしでかしたことをすっかり忘れていた。


「おーい、リラ~、おはよ~」


 自分で言うのは少し違うかもしれないけれど、ぽよんぽよん、と跳ねるスライムはかわいいと思う。


「……」


 泉の外の方と、わたしを交互に見るばかりで、リラからの返事はない。


「ねぇ、これ……」

「サフィがやったの……?」


 そう言われて、わたしはようやく思い出した。リラが指差す先には、キレイに伐られた木々がある。


「あっ……えーと……」


 少し顔を合わせるのが怖くなって、そっぽを向くようにする。


「ねぇってば」


 リラはわたしを掴んで、モチモチする。リラの温かい手が、少し気持ちいい。うわー。と、やられた風な声を出して、モチモチ攻撃が止んだところで、返事をする。


「……てへぺろ」


「てへぺろってなによぉ!」


 リラのモチモチ攻撃が激しさを増した。怒ってないことはわかったので、わたしは正直に答えることにした。


「――えーとですね」

「魔法の練習をしてました!」


 ふーん。と、リラは呟いて辺りを見渡すようにすると、独り言を言うようにして何かに納得したようだった。

 

「だからサフィの魔力が泉を覆っていたね……?」


 リラにはわたしの魔力の違いがわかるらしい。夜に放ったあの水は、霧雨になって辺りに降っただろうから、その魔力が残っていたのだろうと思う。


「そうそう、空に向かって大量の水を放っていたんだけどね、魔力を全部使ったのか、すっごい疲れたのよね」


 迂闊だった。気が緩んでいたわたしは、この一言でリラに怒られることとなった。

 わたしを持ち上げたままだったリラは、もう一度わたしを強く揉むと、お説教が始まった。


「サフィ~!」


「苦しい……」


「どうしてそんな無茶をするのよ」

「それは眠くなったんじゃなくて、気絶しただけよ?」

「魔力を使い切ったら、死んじゃうことだってあるんだから……」

「もう、しちゃダメよ?」


「はい……」


 わたしはもう少し、話を聞いてみる。


「魔力を使い切ったら死んじゃうの?」


「そうよ。基本的に、使い切る前に意識が途切れたり、動けなくなったりするけれど、絶対じゃないわ」

「気合いで持ち堪えるヒトって、いるでしょう?」

「それに、そういう自体になる場面は、決まって命の危機だもの」

「戦っている最中に、そんなことになってしまえば、他の生き物に斃されてしまうわ」


 リラの言う通りだと思った。たとえ相打ちになったとしても、新たに敵がやってくることだってある。戦いが身近にありそうなこの異世界では、危機管理は前世よりもさらに慎重にならなければいけないだろう。

 まぁでも、あれだけ大量の水を放出できるくらいの魔力があるなら、その当たりは大丈夫なような気もする。

 

「……ねぇリラ。なんでわたしは、まだモチモチされているの?」


「え……触り心地が気持ちいいから……?」


 あっはい。それだけの理由でしたか……どうぞ、好きなだけお触りください……。

 

 ◆


 しばらく日光浴をしながらもちもちされる時間が続いた。

 その間、わたしの前世の話で盛り上がった。


「ねぇ、前世は別の世界にいたのでしょう?」

「どんなところだったの?」


 わたしは少し唸って、汎用的な答えを用意した。

 

「魔力も、魔法も存在しない変わりに、科学技術が発展した世界……かな」


「科学技術ってなぁに?」


「たぶん、この世界にも魔道具とか魔法道具とかって呼ばれている物があると思うんだけど、それを魔法に頼らないで、殆どが電力に依存した物。かな」


「……電力って?」


「あー……うん、そっかぁ……」


 確か前世でも、電気の発見は中世ヨーロッパ以降、1700年代だったと調べたことがある。凧の実験で雷が電気であることを証明したアレだ。電気の概念を発見すること自体は紀元前にあったはずだけれど、生活に取り入れたのは近代からと言ってもいいはずだ。

 この世界には魔力が、魔法が存在している。してしまっている。ならば、科学という世界の理を解明する技術が発展する速度は恐ろしく遅いことだろう。

 なぜか。必要がないからだ。魔法は便利だ。きっと、なんだってできてしまう。だからこそ、発展できない。魔法をうまく使えず、落ちこぼれと言われるような者が、反骨精神で真理を解き明かしたとしても、それを聞き入れる者が世界のどこにいるのだろうか。


 陰の者(オタク)としては、科学が真理を証明することで、魔法という神秘が薄れる。なんてことがあるとちょっぴり心が踊る。

 ……いや、今はそんなことはどうでもいいんだ。


 まぁ、きっとそういう魔法のある世界なんだから、この世界は中世くらいの発展にしか至っていないと考えていいだろう。

 どう説明したものか。


「雷魔法ってないの……?」


「わたしは見たことないけれど……わからないわ」


 箱入り娘め。チュートリアルくらいは適切な案内役がほしい。

 いや、決してリラに不満があるわけじゃあないんだよ? むしろ好き。こんなかわいい子をひとりにするなんてことはあってはいけない。

 でも、それでも。異世界に来たら神様が解説とか最初の村人とかが懇切丁寧に説明してくれるのがお約束ってヤツじゃない?


 わたしは静電気が溜まる想像をしながら、魔力を練ってみることにした。幸い、もう魔力を練る。という感覚は掴むことができていた。そして、なんとなく、身体に静電気が溜まっている気がする。


「リラ、ちょっとわたしに触れてみて」

 

 リラは訝しげにわたしを撫でるように触った。バチッとなるかと思っていたけれど、そうはならなかった。その代わりに、静電気がリラに移り、彼女の白くきれいな髪が膨らんでいた。


「えっとね、指一本で突いてみて」


「こう……?」


 リラがわたしにその可憐な指を伸ばすと、バチッと音がして、電気が流れた。


「……いっ!」

「……いったぁぁぁい……」


 リラは指を押さえてうずくまっている。今まで感じたことのない痛みの感覚に悶えていた。

 わたしは得意気になって、リラに言う。

 

「これが、雷魔法だよ! ……たぶんね!」

「んわわわわわ……」


「痛いじゃない! なにするのよぅ!」


 リラは少し涙目になって、わたしをもみくちゃにする。モチモチ攻撃が一段落して解放されると、わたしは軽く謝り、わたしが思う、雷魔法らしい雷魔法を使ってみることにした。


 ◆


「では、今から雷魔法の実演に入りたいと思います」


 恭しく挨拶をして、泉の対岸の木を狙う。森に向かってだと遮蔽物が多くて遠くまで見渡せないし、なにより火事が怖い。


(かっこいい詠唱とかしたいなぁ)


 そんなことを思いながら、雷魔法らしい雷魔法ってなんだろう? と考える。

 落雷はありきたりすぎるし、電気ショック程度だと弱すぎる。ここは大きく、電磁砲(レールガン)とか撃ちたい。

 電磁砲といえば、前世の世界でも超威力の化学兵器で、その破壊力ゆえに耐久性が確保できず、実用には向いていないものだったと思う。

 けれど、この世界では撃ち放題だ。そう、魔法があるからね!

 魔力をたっぷりと練って、わたしの身体は青白く光っていた。帯電しているのかもしれない。


「撃ちまーす」


「はーい!」


 わたしたちは気が削がれるような緩い雰囲気でそれをやろうとしていた。そして、当然のように後悔することとなる。


『バリリリリリッ!』

 

 泉の対岸に向かって放たれた電磁砲、もとい雷魔法は、その直線上の水を一瞬にして蒸発させ、水蒸気爆発を起こした。

 その衝撃で泉は荒れ狂い、空いた穴に水が戻ろうとする勢いで、さらに波打っていた。

 当然のごとく、狙われた対岸にあった木々は消し炭になっていた。唯一の救いは、荒れ狂った波によって消火されたことだろう。


「わァ……ぁ……」


 思っていたよりも威力が高い。

 リラは口元を押さえて絶句してしまっている。

 わたしたちは互いに、泉とお互いを交互に見るものの、今この惨状を言葉にすることができないでいる。


 ◆


「――いやぁ、すごかったですね。雷魔法」


 わたしが他人事のように念話を飛ばす。


「す、すごかったではすまないのだと思うのだけれど……」


 リラは怒りも忘れてしまったらしい。

 兎にも角にも、コレが今できる最高出力の雷魔法だと思う。

 ……はい、自重します。

 そういえば、俺強ぇ! の無双がしたいって言った気がするけれど、もしかしてもしかしなくても、わたしは結構、いやものすごく。

 ヤバい存在なのかもしれない。


「そ、そう! すごかったじゃないのよ!」

「なによ! アレ!」


 我に返ったリラが、わたしを掴んでもみくちゃにする。


「んにゃにゃにゃにゃにゃ……」

「いやごめんなさい。本当に。もう、本当に!」


 いけない。少し楽しくなってきた。リラの温かい手は、少しくすぐったい。わたしにとっては身体全体がくすぐられているような感覚なので、どうにも怒られているような気がしない。


「……アレが雷魔法なの?」


「……違うと思うよ?」


 わたしは正直に答えた――。

 

ご読了ありがとうございます!

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