26話:起動する破滅機構②
「空想具現・極之番・顕象:理想夢物語」
ラスティの奥の手が発動する。願望を現実に変える力――単純かつ絶対的。だが、膨大な魔力と生命力を消費し、元の状態に戻せない歪みを生む。
真っ白なキャンバスに色を塗るように、元には戻せない。その力は、神の領域に踏み込む禁断の術だった。乱用は禁物だが、使いどころは今しかない。ラスティの瞳には、覚悟と犠牲の炎が宿っていた。
「シャルトルーズを封印する剣を召喚」
「それは……?」
ラスティの手には無骨な剣が現れる。物語を終わらせるデウス・エクス・マキナ。その剣は、まるでこの戦場の運命を断ち切る刃のようだった。
「私が生み出したこの剣は、シャルトルーズの世界破滅を強制的に停止させる効力がある。だから一騎打ちとさせてもらいたい。不死の守護者の相手を頼めるか? エクシア、デュナメス、ネフェルト少佐」
「ええ」
「おう」
「わかったわ」
「ありがとう。感謝する。では征こう、世界を救う戦いだ!」
頭が割れるように痛む。耳鳴りが響き、眩暈が止まらない。苦痛が全身を苛む。だが、死ぬほどではない。なら、余裕だ。死を乗り越えた後では、どんな苦しみも軽い。我慢も、実行も、できる。
勝利する。その信念は、まるで彼の魂を燃やし尽くす焔だった。 ラスティは踏み込む。剣が剛斧に変形する。直径二メートルの巨大な武器。黒と赤の刃は、技巧を捨てた暴力の具現だ。
魔力と理想夢物語で肉体を強化し、最強の自分を想像する。苦痛と引き換えに、片手で剛斧を握る力を得る。
その姿は、神話の戦士が降臨したかのようだった。 風を切り、魔力の胎動が肌を焼く。構わず全速力で突進し、剛斧を叩き込む。シャルトルーズがバックステップで避け、口に熱量が集まる。
その瞬間、戦場はまるで地獄の業火に包まれたかのようだった。
「魔力変形・鎖縛光牢!」
ラスティが手を突き出すと、蛇のような鎖がシャルトルーズを縛る。彼女の頭が下を向き、ブレスが地面へ放たれる。
溶岩のような熱が大地を溶かし、タワーが揺れる。その熱は、世界そのものを焼き尽くす劫火だった。
「魔力変形・耐熱加工の付与」
全員に耐熱シールドを付与し、ラスティは亀裂を回避。熱風が吹き上がる中、シャルトルーズが天井を突き破り、空へ飛び立つ。
黒い翼が生えている。その姿は、終焉を告げる堕天使のようだった。熱が肌を焦がすのを無視し、ラスティは剛斧を投擲。回転する刃が翼に衝突し、シャルトルーズの体勢が崩れる。
「……当てたものの、まだ足りないか。もっと長く、多く、大量に封印の剣をシャルトルーズに与えなければ、世界破滅をさせる行動は停止しない。なら、追跡する槍を生成、発射」
複数の封印の槍が浮かび、シャルトルーズに殺到する。だが、槍は表面を傷つけるのみ。都市のエネルギーを防御に回しているのか、硬すぎる。
その防御は、この要塞都市そのものが彼女を守る鉄壁だった。
ラスティは靴底に魔力を集め、ブースターのような推進力で跳躍。剛斧を再召喚し、シャルトルーズへ振り下ろす。翼と刃が衝突し、弾かれる。空中で後退し、足場がないことを思い出す。
その瞬間、まるで彼女の身体が戦場の重力に逆らう唯一の存在だった。
「意識の外からの攻撃に弱いのが、理想夢物語の弱点だ……学ぶことにしよう」
回転しながら吹っ飛ぶ。吐き気を抑え、飛行魔法を展開。シャルトルーズへ高速で突進する。彼女は口を開き、砲撃を放つ。ラスティは鎖で動きを封じ、顎の下に潜り込み、
「封印蹴り!」
虚空を蹴り、顎を蹴り上げる。シャルトルーズが拘束されたまま浮き上がり、サマーソルトで連撃。封印剣を召喚し、12連の斬撃を刻む。衝突ごとに異音が響き、破壊衝動が削がれる。傷が刻まれるたび、シャルトルーズのオーラが薄れる。
一撃一撃が顔面を粉砕し、バリアを食い破る。封印砲撃が穴に叩き込まれ、緑と青の光が翼を消滅させる。シャルトルーズが鎖を引きちぎり、光量を増す。
その光は、世界を飲み込む闇の輝きのようだった。
ラスティは剛斧を投げ、加速で接近。顔面を掴み、鎖に変形した武器を突き刺す。
「魔力変形・雷」
電撃がシャルトルーズを蹂躙し、破壊衝動の回路を破壊。爆発寸前のエネルギーが霧散する。その瞬間、彼女の存在そのものが砕け散る音が戦場に響いた。
「エネルギー最大出力、封印重撃!!」
「まずい……! ラスティさん!」
ネフェルトが頭上にシールドを展開。空が紫に染まり、雷鳴が轟く。紫電がシールドを融解させ、落下してくる。ネフェルトが支えるが、高度が下がる。その光景は、天罰が降り注ぐ黙示録のようだった。
「封鎖機構とアーキバス、それに世界を滅ぼす遺物を纏めて始末するなら、このタイミングだと思ったわ。ロイヤルダークソサエティはやることが毎回漁夫ね」
紫電は衰えず、シールドに罅が入る。デュナメスとエクシアは不死の守護者を迎撃するが、追いつかない。その戦いは、無限の敵に抗う絶望的な抵抗だった。
「ぐ、これは……!」




