第38話:マラの最後の策略、異界の胎動
魔核は、俺の掌中にあった。 番人の警告など、俺の支配への欲求を揺るがすことはできない。 魔核から流れ込む膨大な魔力が、俺の全身を満たしていく。 俺は、この世界の魔力の源を完全に掌握した。
サラは高橋に支えられ、ユウキは俺の圧倒的な力に畏怖している。 彼らは、俺の支配の始まりを目の当たりにしている。 この瞬間、皇居地下の空間が、再び大きく揺れ始めた。 それは、番人の消滅によるものではない。
「レグナ様!これは……!」 ユウキが叫んだ。 彼の感知能力が、新たな異変を捉えている。 その気配は、かつて感じたものと酷似している。
瘴気が、再び空間に満ちていく。 それは、マラの瘴気だ。 だが、マラは確かに消滅したはずだった。 その瘴気は、どこから現れたのか。
魔核の周囲に、黒い泥の塊が、ゆっくりと形成されていく。 それは、マラの残滓だ。 俺が吸収しきれなかった、わずかな瘴気結晶と、その怨念が、魔核の力を利用して再生しようとしている。 執念深い奴だ。
「まさか……マラが、まだ生きていたのか!?」 高橋が驚愕した。 彼の声には、信じられないものを見たかのような動揺が混じる。 完全に消滅させたはずの敵。
泥の塊は、急速に形を成していく。 それは、以前のマラとは違う。 より小さく、だが、より禍々しい姿。 その体には、無数の目が光っている。
「違う……あれは、マラの本体ではない」 ユウキが震える声で言った。 「マラの怨念が、魔核の力で形を成した…残滓の集合体だ!」 彼の感知能力が、正確にその本質を見抜く。
マラの残滓は、魔核へと向かって、ゆっくりと触手を伸ばし始めた。 その触手は、魔核の輝きを汚染するように、黒い泥を垂らしている。 「マラの目的は、魔核を汚染することだったのか…!」 高橋が叫んだ。
「異界の門を完全に開放するつもりだ!」 彼の言葉に、サラの顔から血の気が引く。 番人が警告した「世界の破滅」が、今、現実のものとなる。 マラの最後の策略。
俺はマラの残滓へと魔力を放つ。 漆黒の雷が、泥の塊を貫く。 だが、泥の塊は、魔核から溢れる力を吸収し、瞬時に再生する。 まるで、無限の再生能力を得たかのようだ。
「レグナ様!再生が早すぎます!」 ユウキが叫んだ。 「魔核から直接、魔力を吸い取っています!」 最悪の状況だ。
マラの残滓は、魔核の力を利用し、自身をさらなる異形へと変貌させていく。 その体は、泥と瘴気でできていたはずなのに、今や、異界の不気味な植物のような、グロテスクな姿へと変化していく。 無数の触手には、鋭い爪が生え、空間を切り裂く。 異界の胎動。
「このままでは、魔核が完全に汚染される!」 高橋が叫んだ。 「異界の門が完全に開けば、この世界は終わりだ!」 彼の声は、絶望に満ちている。
サラは、疲労困憊の体で、聖なる光を放とうとする。 だが、彼女の力は、まだ回復していない。 微かな光が放たれるが、マラの瘴気には届かない。 無力感。
俺はマラの残滓へと突進する。 魔核の力で強化された俺の魔力。 その拳で、マラの残滓を打ち砕こうとする。 だが、マラの残滓は、空間の歪みを利用し、俺の攻撃をかわす。
それは、以前のマラが使っていた空間干渉能力だ。 だが、今回は、魔核の力を直接利用しているため、その精度と速度が格段に上がっている。 予測不能な動き。 俺は翻弄される。
「レグナ様、奴の動きが読めません!」 ユウキが叫んだ。 彼の覚醒した感知能力をもってしても、マラの残滓の動きは捉えきれない。 魔核の力は、マラを想像を絶する存在へと変貌させている。
マラの残滓が、魔核へとさらに深く触手を伸ばす。 黒い泥が、魔核の輝きを覆い隠していく。 魔核の光が、徐々に弱まっていく。 汚染が進行している。
「止めろ!レグナ!」 高橋が叫んだ。 彼の顔には、焦りと、そして覚悟が見える。 彼は、この世界の破滅を阻止しようとしている。
俺は、マラの残滓の動きを必死に追う。 だが、奴は魔核の力を利用し、俺の魔力をも弾き返す。 まるで、魔核そのものが、マラの盾となっているかのようだ。 苛立ちが募る。
このままでは、本当に世界が破滅する。 俺の支配の前に、世界が消滅してしまっては意味がない。 俺は、マラの残滓を排除しなければならない。 だが、どうやって。
その時、高橋が、突然、叫んだ。 「レグナ!魔核の力を利用しろ!」 高橋が言った。 「お前は、魔核を掌握したのだろう!その力で、マラの残滓を制御するんだ!」 驚くべき提案だ。
俺はハッとした。 そうだ。 俺は魔核を掌握した。 この魔核の力は、俺のものだ。
俺は魔核へと意識を集中させる。 魔核から流れ込む膨大な魔力を、俺の意思で操ろうとする。 マラの残滓が、魔核の力を吸い取っている。 ならば、その吸い取る力を、俺が奪い返せばいい。
俺の全身から、漆黒の魔力が溢れ出す。 それは、魔核の魔力と共鳴し、空間に満ちていく。 マラの残滓の動きが、わずかに鈍る。 魔核の力が、俺の意思に反応しているのだ。
「レグナ様……すごい……」 ユウキが呟いた。 彼の感知能力が、俺と魔核の繋がりを捉えている。 俺は、魔核の力を利用し、マラの残滓を内部から破壊しようとする。
マラの残滓が、苦悶の声を上げる。 その体から、黒い泥が逆流し始める。 魔核から吸い取っていた力が、俺の意思によって奪い返されているのだ。 マラの最後の策略は、俺によって打ち破られる。
俺は、マラの残滓へと手を伸ばす。 漆黒の魔力が、マラの残滓を包み込む。 そして、そのまま、圧縮していく。 マラの残滓は、悲鳴を上げながら、ゆっくりと消滅していく。
完全に消滅した。 その場には、何も残らない。 魔核は、再び本来の輝きを取り戻している。 俺は、この世界の魔力の源を、完璧に掌握した。
高橋は、安堵の息を吐く。 サラも、ユウキも、その顔には、安堵と、そして俺への畏敬の念が浮かんでいる。 マラの最後の策略は、俺の支配の前に、無力だった。 異界の胎動は、俺が止めた。
だが、番人の警告は、まだ俺の脳裏に残っている。 「汝の支配は……この世界に……破滅を……もたらす……」 異界の門は、まだ完全に閉じていない。 俺の支配は、新たな段階へと進む。




