第35話:魔核の番人、古の守護者
管理局の魔力抑制結界は破られた。 佐伯は、装置の損傷と、俺の圧倒的な力を前に、苦渋の表情を浮かべていた。 彼らは俺を止める術を失った。 今度こそ魔核へと到達する。
俺は魔核へと向かって歩を進める。 サラは高橋に支えられ、疲労困憊のままだ。 ユウキは震えながらも、魔核の番人の気配を感知している。 その気配は、マラの比ではない。
魔核のすぐ近く。 空間が、ゆっくりと波打ち始めた。 瘴気ではない。 純粋な魔力。
その中心から、巨大な光の塊が現れる。 光が収束し、その姿を現した。 それは、人型をしていた。 だが、その体は、まるで星屑でできているかのようだ。
全身を覆う鎧は、輝く石英のように透明で、内部には宇宙のような光が瞬いている。 顔には表情がなく、ただ、光の柱が伸びているだけだ。 その体からは、マラとは比べ物にならない、純粋で圧倒的な魔力が放たれている。 それが、魔核の番人。
「な、何だあれは…!?」 ユウキが息をのんだ。 彼の感知能力が、番人の圧倒的な存在感に恐怖している。 だが、その魔力には、マラのような邪悪な感情は感じられない。
高橋の顔は、驚愕に満ちていた。 「番人……!まさか、本当に実在したとは…!」 高橋が震える声で呟いた。 「古文書に記されていた、魔核を守護する存在…」 彼の知識も、この存在の前に崩れ落ちる。
番人は、ゆっくりと腕を上げた。 その動きは、まるで時間が止まったかのようだ。 だが、その一瞬で、空間が凍り付く。 俺の体内の魔力までもが、わずかに反応を鈍らせる。
「我は、魔核の守護者」 番人の声が響く。 それは、直接脳内に響くような、無機質で、しかし圧倒的な声だ。 「汝ら、魔核に手を出すことを許さぬ」 拒絶の意思。
俺は番人を見据えた。 マラよりも遥かに強大だ。 だが、その魔力は純粋で、俺の魔王の力とは異なる性質を持つ。 これは、面白い。
「貴様が、この魔核の番人か」 俺は言い放った。 「貴様の使命は終わりだ。この魔核は、俺が掌握する」 俺の意志を示す。
番人は答えない。 ただ、その体から放たれる光が、さらに強まる。 その光は、俺たちを包み込む。 だが、サラの聖なる光とは違う。
この光は、俺たちの力を試しているかのようだ。 魔力の流れを乱し、精神に干渉してくる。 俺の魔力が、光とぶつかり合い、空間が軋む。 高レベルの干渉。
「レグナ様、身体が重い…!」 ユウキが苦しそうに言った。 彼の感知能力が、番人の光の干渉を受けている。 サラもまた、その影響を受けているようだ。
高橋が、番人の光を分析する。 「これは……『調律』の力だ」 高橋が呟いた。 「この世界の魔力の流れを『調律』し、異物を排除する」 番人の使命か。
「我々は、汝らの存在を異物と認識した」 番人が言った。 「秩序を乱す者として、排除する」 無慈悲な宣告だ。
番人は、ゆっくりと腕を下ろした。 その瞬間、光の柱が、番人の周囲に生成される。 光の柱は、俺たちへと向かって高速で飛来する。 光速の攻撃。
俺は魔力で障壁を張る。 光の柱は障壁に激突し、爆散する。 衝撃が全身に響く。 圧倒的な破壊力だ。
高橋が叫んだ。 「あの光は、直撃すれば消滅するぞ!純粋なエネルギー攻撃だ!」 彼の指示は的確だ。 番人の攻撃は、魔物とは次元が違う。
サラが、聖なる光を掌に凝縮させる。 光の柱へと放つが、光の柱はそれを貫通する。 聖なる光は、番人の光に干渉できない。 相性の悪さか。
「レグナ様、光の柱の軌道が見えます!」 ユウキが叫んだ。 彼の覚醒した感知能力が、番人の攻撃の軌道を見抜いている。 「次は、右から二本!」 正確な情報だ。
俺はユウキの指示に従い、光の柱を回避する。 そして、番人へと肉薄しようとする。 だが、番人は、空間を操るように、光の柱を生成し続ける。 接近を許さない。
「番人は、この空間そのものと一体化している!」 高橋が叫んだ。 「実体を持たない!物理攻撃は無意味だ!」 絶望的な情報だ。
実体がない。 ならば、どうやって倒す。 俺は思考を巡らせる。 魔力攻撃が効くか。
俺は番人へと漆黒の魔力を放つ。 雷が、光の塊である番人を直撃する。 だが、雷は番人の体を透過し、その光を乱すことすらできない。 完全に無効化された。
「魔力も、無効化されるのか!」 サラが愕然とした。 番人の放つ光は、あらゆる異界の魔力、聖なる力を「調律」し、無効化する。 まさに、魔核の守護者だ。
俺は苛立ちを感じた。 圧倒的な力を持つ番人。 物理攻撃も魔力攻撃も効かない。 手の打ちようがないのか。
「レグナ様、あの淀み!あの光の柱の中心にあります!」 ユウキが叫んだ。 彼の感知能力が、番人の弱点を正確に捉えている。 光の柱の集合体の中に、微かな淀み。
それは、番人の核だ。 実体を持たない存在の、唯一の弱点。 そこを狙えば、倒せる可能性がある。 だが、どうやってそこを攻撃する。
番人は、さらに多くの光の柱を生成し、俺たちを追い詰める。 空間全体が光に包まれ、視界が奪われる。 俺たちは、光の嵐の中で、回避に専念する。 時間がない。
高橋は、サラとユウキを庇いながら、必死に番人の攻撃を分析している。 「あの番人は、魔核の力を直接利用している」 高橋が言った。 「魔核の力を断ち切れば、弱体化するはずだ!」
魔核の力を断ち切る? そんなことが可能なのか。 魔核は、この世界の魔力の源だ。 それを断ち切れば、この世界そのものが影響を受ける。
俺は思考を巡らせる。 番人の核。 そして、魔核の力。 両者を同時に狙う必要がある。
俺は、体内の全ての魔力を集中する。 この魔力は、魔核から直接吸収したものだ。 魔核の力を利用し、魔核の番人を打ち破る。 それが、俺の支配への道だ。
俺は咆哮した。 漆黒の魔力が、俺の全身から溢れ出す。 光の嵐を切り裂き、番人へと向かって突進する。 ユウキの感知を信じ、番人の核へと一直線に進む。
番人は、俺の行動を予測していたかのように、さらに多くの光の柱を生成する。 だが、俺はそれを恐れない。 俺の魔力が、光の柱を強引に押し開ける。 魔王の力。
そして、番人の核へと、俺の拳が迫る。 光の体を持つ番人。 その核心に、俺の魔力を叩き込む。 この戦いは、この世界に新たな秩序をもたらす。




