第26話:謎の影、監視者
皇居地下への潜入を翌日に控えた。 高橋は、秘密の通路の最終確認を行う。 警備。魔物の配置。 全てを詳細にシミュレーションする。
俺は瞑想していた。 魔力を研ぎ澄ます。 マラとの再戦。 そして、魔核の掌握。
その時、微かな異変を感じた。 視線だ。 強い殺意ではない。 しかし、明確な「視線」。
倉庫の外。 闇に紛れるように、複数の影が蠢いている。 人型の影。 魔物ではない。
俺は目を開けた。 気配は複数。 そして、彼らからは魔力を感じない。 異質な存在だ。
高橋も気づいたようだ。 彼の顔から血の気が引く。 「まさか……このタイミングで」 彼の声が震える。
サラとユウキは気づいていない。 彼らは明日の作戦に集中している。 高橋は俺を見た。 彼の目には、強い警戒が宿る。
「君は、以前『監視されているかもしれない』と言っていたな」 俺は言った。 高橋は頷いた。 「そうだ。だが、こんなにも早く現れるとは」
「彼らは誰だ」 俺は問う。 高橋は周囲を確認する。 サラとユウキに聞かせないように、声を潜める。
「おそらく、私が所属していた機関の残党だ」 高橋が言った。 「異界の情報を独占し、管理しようとする者たちだ」 政府の裏組織か。
「政府の管理下にない。独自の判断で動いている」 高橋は続けた。 「非常に危険な存在だ。私たちとは目的が違う」 厄介な存在。
彼らは、異界の存在を隠蔽し、利用しようとしている。 俺たちの活動は、彼らの計画を邪魔する。 彼らが我々を始末しにきたか。 それとも、監視か。
俺は警戒を強める。 魔力を抑える。 彼らに俺の正体を知られるわけにはいかない。 今はまだ。
「奴らの狙いはなんだ」 俺は問う。 高橋は眉をひそめた。 「おそらく、君の力を解析している。そして、魔核へのアクセスを監視している」
俺の力を解析? 愚かな人間どもめ。 魔王の力など、彼らが理解できるものではない。 だが、油断はできない。
「我々に攻撃を仕掛けてくるか?」 俺は言った。 高橋は首を振った。 「今夜はしないだろう。彼らは慎重だ。まずは観察だ」
高橋はサラとユウキに気づかれないよう、俺に指示した。 「警戒を怠るな。だが、決して行動を起こすな」 彼の指示に従う。 今は彼らの動きを探るべきだ。
夜が更ける。 俺は瞑想を装い、彼らの気配を探り続けた。 彼らは倉庫の周囲に張り付いている。 じっと、俺たちの動きを監視している。
彼らの目的は、魔核を巡る情報か。 あるいは、俺の力を利用することか。 どちらにせよ、彼らは邪魔だ。 いつか、排除する必要がある。
翌日。 皇居地下への潜入作戦を決行する日だ。 夜が明け、太陽が昇る。 監視者たちの気配は消えていた。
彼らは一時的に撤退したのか。 それとも、我々の後を追っているのか。 高橋は緊張した面持ちで、最終準備を進める。 彼の警戒は解けていない。
「あの連中が、我々の邪魔をするかもしれない」 高橋は言った。 「場合によっては、魔物よりも厄介な存在になる」 新たな脅威。
俺は頷いた。 この世界は、複雑だ。 魔物だけでなく、人間の中にも敵がいる。 だが、それもまた、俺の支配を阻む壁だ。
「ユウキ、感知を最大限に集中しろ」 俺は言った。 「周囲の気配を全て読み取れ」 彼らを見つけるためだ。
ユウキは頷いた。 彼の顔には、まだ恐怖の色が残る。 しかし、その目には、強い責任感が宿っている。 仲間を守る覚悟。
サラは聖なる光を掌に凝縮させる。 いつでも戦える準備だ。 彼女もまた、謎の影の存在を気にかけているようだ。 だが、今は目の前の目標に集中する。
高橋の案内で、俺たちは皇居周辺の裏路地を進む。 人通りは少ない。 厳重な警備を避けるルートだ。 彼は地形を熟知している。
「ここだ」 高橋が指差した。 古びた地下通路の入り口。 鉄製の扉が、苔に覆われている。
扉の向こうからは、かすかに冷たい空気が漏れ出す。 そして、微かな魔力の気配。 ユウキの顔色が青ざめる。 「冷たい……すごく冷たい感じがする」
「魔物が、ここに巣食っているな」 俺は言った。 高橋は頷く。 「おそらく、マラが侵入した際に、連れてきた魔物だろう」
俺たちは扉を開けた。 地下への通路が、闇の中に続いている。 その先には、マラが待つ。 そして、魔核。
だが、その闇の奥で、別の気配を感じた。 かすかに揺らめく影。 監視者たちか。 それとも、新たな敵か。
俺は警戒を強める。 この地下は、一筋縄ではいかない。 魔物。謎の勢力。 全てを排除し、魔核を掌握する。
東京の地下深く。 誰も知らない場所で。 魔王レグナの、新たな戦いが始まる。 支配への道は、試練に満ちている。




