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第22話:サラの聖域


高橋の戦術は功を奏した。 魔物の出現を予測し、先回りして迎撃する。 俺たちの連携は深まった。 渋谷、新宿、池袋。戦場は東京全域に及ぶ。

だが、魔物の数は減らない。 排除しても、異界の門から次々と現れる。 いたちごっこだ。 活気の減少は止まらない。

学園の屋上。 サラが目を閉じ、両手を広げている。 彼女の体から、微かな白い光が放たれる。 聖なる力の訓練だ。

「もっと、意識を広げるのよ」 高橋の声が響く。 彼はサラの隣に立ち、指導している。 専門的な知識がある。

サラの目的は、聖なる力で広範囲の結界を張ることだ。 魔物の侵入を防ぐ「聖域」を作り出す。 これまでの戦闘での援護とは、次元が違う。 広範囲を覆う。

「これは聖女の力が完全に覚醒すれば可能な術だ」 高橋が言った。 「だが、今の蒼月君には負荷が大きい」 彼女の限界。

サラの額には汗が浮かんでいる。 顔色は青白い。 全身が震えている。 力の消耗は激しい。

「聖なる力は、精神力と直結している」 高橋は説明した。 「広範囲に展開するには、膨大な精神力が必要だ」 聖女の苦悩。

俺はサラを見ていた。 彼女の力は、たしかに俺の支配に役立つ。 広範囲の結界で、魔物の侵入を阻む。 都市の守護。

だが、その力の消耗は激しい。 彼女の限界を超える必要がある。 俺は彼女の潜在能力を冷徹に評価する。 どれほどの器か。

「聖なる力が、瘴気から身を守る壁になる」 サラが呟いた。 「みんなの活気を守りたい」 彼女の願い。

彼女の純粋な願いは、俺には理解できない。 守る。 その概念は、支配欲とは相容れない。 だが、その力は利用できる。

高橋がサラの肩に手を置いた。 「無理はするな。少しずつでいい」 彼の声は優しい。 教師としての顔。

サラは息を吐き、光を収束させた。 訓練は中断された。 彼女は疲労困憊だ。 地面にへたり込む。

「今のままでは、広範囲結界は不可能か」 俺は問うた。 高橋は頷いた。 「そうだ。あと数年は修行が必要だろう」

数年。 それでは遅すぎる。 魔物の侵攻は加速している。 待つ時間はない。

俺はサラに近づいた。 「貴様の力は、まだ足りない」 俺は言い放った。 サラが俺を見上げた。

彼女の目に、悔しさが浮かぶ。 「分かってるわ……でも」 言葉を詰まらせる。 力の限界。

「俺が、貴様の力を引き出してやる」 俺は言った。 サラは驚きの顔をした。 高橋も目を丸くする。

「まさか、君が聖なる力を?」 高橋が問う。 「魔王の力が、聖なる力に干渉できるわけがない」 彼の常識を覆す。

「貴様の常識は、この俺には通用しない」 俺は言い放った。 俺はサラの手を取った。 冷たい感触。

サラの体内に、微かな魔力を流し込む。 漆黒の魔力が、彼女の聖なる力と混ざり合う。 聖なる力は、魔力によって強化される。 それは俺の世界では禁忌だった。

サラの体が震える。 彼女の顔に苦痛の色が浮かんだ。 だが、同時に、彼女の聖なる力が激しく脈動し始める。 光が強くなる。

「な……何これ……」 サラが呟く。 彼女の体から、これまでになかったほどの強い光が放たれた。 屋上全体が白い輝きに包まれる。

高橋が驚愕した。 「まさか、魔力で聖なる力を増幅させるなど…!」 彼の声は震えている。 前例のない現象だ。

俺は手を放した。 サラは呆然としている。 彼女の聖なる力は、確かに増幅された。 だが、同時に、疲労も激しい。

「短時間なら可能だ」 俺は言った。 「だが、持続はできない。貴様の体が耐えられない」 限界はまだある。

サラは自分の掌を見つめた。 そこに残る、強力な聖なる力の残滓。 「レグナ……ありがとう…」 彼女の声は震えていた。

感謝など不要だ。 これは俺の支配のための手段。 彼女の力が強くなれば、俺の負担が減る。 それだけだ。

「この方法を使えば、広範囲結界も可能になるだろう」 高橋が言った。 彼の顔には、新たな希望が見える。 同時に、俺への警戒も強まっている。

「だが、諸刃の剣だ」 高橋は続けた。 「聖なる力を無理に増幅すれば、蒼月君の体に深刻な影響が出るかもしれない」 危険な賭けだ。

「必要とあらば、利用する」 俺は言い放った。 サラの命など、俺の支配に比べれば取るに足らない。 彼女は俺の道具だ。

サラは俺の言葉を聞いていた。 だが、その目には、もはや恐怖はない。 ただ、静かな決意が見える。 彼女は聖女だ。

訓練は続行された。 俺はサラに魔力を少量ずつ流し込み、彼女の聖なる力を補助する。 彼女は力を制御することに集中する。 二人で作り出す聖域。

高橋は、その様子をじっと見つめている。 彼の表情は複雑だ。 魔王の力。 聖女の力。 二つの力が混ざり合う。

夕暮れの空。 屋上に広がる白い光。 それは、東京の街を守る、新たな希望の光か。 あるいは、魔王が支配を広げるための布石か。



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