第16話:深まる謎、高橋の提案
新宿地下の戦いを終えた。 俺たちは再び倉庫に集まる。 高橋が照明を灯した。 彼の顔は疲労が見える。
サラは安堵した様子だ。 ユウキはまだ顔色が悪い。 だが、あの戦いを生き抜いたことで、彼の目には変化があった。 微かな自信。
高橋が口を開いた。 「君たちの力は想像以上だった」 高橋は言った。 「特に黒須君。あの魔力は一体…」
俺は何も答えない。 高橋は深く追及しない。 「今はそのことよりも、共有すべき情報がある」 現実的な男だ。
彼は地下で回収した物をテーブルに置いた。 泥魔の残骸。 そして、マラが消滅した場所に残されていた、微かな黒い粒子。 それは俺が吸収した結晶のようだった。
「これは『瘴気結晶』と呼ばれるものだ」 高橋は説明した。 「魔物がこの世界で活動する際に生み出す」 俺の力を増幅させた物。
「これを吸収すると、魔力が増幅される」 俺は言った。 高橋は目を見開いた。 「まさか、君は…」
俺は頷いた。 高橋は複雑な顔をした。 「危険な行為だ。瘴気は人間の精神を蝕む」 俺には関係ない。
「だが君の魔力は、それを凌駕しているのか」 高橋が呟く。 彼は驚きを隠せないようだ。 この世界の常識を覆した。
「マラの消滅は、一時的なものかもしれない」 高橋は続けた。 「奴は上位の魔人。そう簡単に滅びるはずがない」 厄介な存在だ。
「奴らが狙うのは、東京の『魔核』だ」 高橋は繰り返した。 「その侵攻ルートは、地下鉄網だけではない」 他にもあるのか。
高橋は別の地図を広げた。 それは東京の地下水道の地図だ。 無数の線が入り組んでいる。 複雑な構造。
「地下水道も、異界への抜け道となっている」 高橋は言った。 「特に排水溝。そこから地上へと現れることもある」 隠された経路。
サラは顔を曇らせた。 「じゃあ、街のどこでも魔物が出る可能性があるってこと?」 高橋は頷いた。 「その通りだ」
「学校の異変も、そうした経路を通って来た泥魔の仕業だろう」 高橋は結論付けた。 ユウキは恐怖に顔を歪めた。 逃げ場はない。
「では、どうする」 俺は問うた。 高橋は表情を引き締めた。 「次の段階だ。防衛と迎撃」
「異界の門が開かれる場所を予測し、先回りする」 高橋は提案した。 「そして、魔物が地上に出る前に排除する」 効率的な作戦だ。
「ユウキの感知能力が鍵となる」 高橋は言った。 ユウキは身体を震わせた。 だが、あの戦いを経験したことで、彼の表情には覚悟が見えた。
「できる……」 ユウキは震える声で答えた。 「冷たい感じが強くなったら、すぐに伝えます」 成長の兆しだ。
「サラ、君には聖なる力で結界を強化してもらう」 高橋は言った。 「街中に薄い聖なる結界を張り、魔物の侵入を阻む」 広範囲の防衛。
サラは頷いた。 「やってみる。でも、まだ完全に制御できないから」 高橋は言った。 「私と黒須君がサポートする」
「そして黒須君」 高橋が俺を見た。 「君の圧倒的な魔力で、現れた魔物を殲滅する」 殲滅。
俺の目的と一致する。 力を使い、敵を排除する。 「異論ない」 俺は答えた。
高橋は安堵の息を漏らした。 「これで、東京を守る体制が整う」 守る。 彼は純粋にそう信じている。
俺は別のことを考えていた。 この防衛作戦は、俺の魔力回復を加速させる。 魔物を倒し、瘴気結晶を吸収する。 支配への道だ。
高橋の知識と計画。 サラの聖なる力。 ユウキの感知能力。 そして、俺の魔王の力。
奇妙な四人組が、東京の地下と闇に挑む。 新たな戦いが、幕を開ける。 俺の支配の序章。