第12話:高橋の過去、東京の闇
翌日の放課後。 再び倉庫に集まる。 高橋が待っていた。 顔に余裕が見える。
サラは少し不安そうだ。 ユウキは依然として怯えている。 俺は冷静だった。 この男から情報を引き出す。
高橋が話し始めた。 「私は君たちより、この事態に関わってきた」 彼の声は落ち着いている。 経験者だ。
「私が初めて『異物』を見たのは十年前」 高橋は語った。 「小さな影だった。誰も気づかなかった」 孤独な戦い。
彼は自らの過去を明かした。 学生時代。教師になってからも。 彼は人知れず異界の存在と戦ってきた。 孤独な使命感。
「最初は恐怖だった」 高橋は言った。 「やがて使命感に変わった」 守るべきものがある。
彼は魔力について詳しく知っていた。 「この世界の魔力は『共鳴』によって生まれる」 高橋は説明する。 「強い感情を持つ者が、異界の波動と共鳴する」
感情が魔力を生む。 俺の世界とは異なる。 「ユウキの力がそれだ」 俺は理解した。
高橋は頷いた。 「彼は無意識に異界の扉を引き寄せる」 「サラの力も同じ原理だ。聖なる光は共鳴の結晶」 聖女の力も感情か。
「私は異界の存在を研究してきた」 高橋は言った。 「奴らは『魔核』を求めている」 マラの言葉と一致する。
「魔核は東京の地下に眠る」 高橋は明かした。 「この都市そのものが、巨大な魔核の上に築かれている」 驚くべき事実。
東京が魔核。 都市全体が力の源。 それは俺の支配欲を強く刺激した。 巨大な獲物。
「奴らは地下へと潜ろうとしている」 高橋は続けた。 「だが魔核には結界がある。人の営みが結界となる」 人の営み。
「都市の『活気』が結界の源だ」 高橋は説明した。 「人が密集し、活動することで、魔核を守っている」 皮肉な真実。
「しかし最近、その結界が弱まっている」 高橋は顔を曇らせた。 「人々の活力が失われつつある」 泥魔の仕業か。
「学園の異変はその一部だ」 高橋は言った。 「街全体で、少しずつ活力が吸い取られている」 異界の侵略は着実に進む。
「魔物の数は増えている」 高橋は続けた。 「都市の地下にも奴らの根城がある」 隠された敵。
「我々だけでは限界だ」 高橋は俺たちを見た。 「君たちの力が必要だ。私の知識と君たちの力」 協力を求める。
「貴様は研究者か」 俺は問うた。 高橋は笑った。 「元々はな。今はただの教師だが」
彼はかつて、政府機関に属していた。 異界の研究機関。 しかし彼の警告は届かず、機関は解体されたという。 愚かな人間だ。
「その知識を全て提供しろ」 俺は言った。 高橋は頷いた。 「それが協力の条件だ」
「貴様も俺の指示に従え」 俺は言い放った。 高橋は顔をしかめた。 「それは無理だ」
「対等な立場だと言ったはずだ」 高橋は反論する。 「支配はしない」 俺の言葉に彼は敏感だ。
「貴様の守りたいものを守る。そのために協力する」 俺は言った。 「だが指揮は俺が執る」 譲れない一線。
高橋は沈黙した。 深い葛藤が見える。 彼の使命感と、俺の支配欲。 相容れないが、今は共通の敵がある。
「分かった」 高橋はついに頷いた。 「だが、人間に危害を加えることは許さない」 制約。
「必要とあらば排除する」 俺は譲らない。 高橋は眉をひそめたが、何も言わなかった。 彼も理解している。
「では、今日からだ」 高橋は言った。 彼は小さな通信機を取り出した。 「これを使え。異界の反応があれば連絡する」
現代の技術。 この世界の道具も使える。 俺は通信機を受け取った。 冷たい感触。
高橋は異界の情報を細かく説明した。 魔物の種類。弱点。出現パターン。 東京の地下構造。 全てが俺の支配に役立つ情報だ。
サラは真剣に耳を傾けている。 ユウキは怯えながらも情報を吸収する。 新たな仲間。 彼らは俺の支配の道具となる。
東京の闇。 地下に眠る魔核。 異界からの侵略。 全てが俺の支配の舞台だ。
夜空を見上げる。 月が輝く。 この都市。 いずれ我がものにする。