表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バーチャル無双  作者: ヤマト
7/40

ありがとう


 ヤテンさんが昔お世話になっていたという、村の復興は順調に進んでいた。というのも、オークションのオーナーが多額の資金を投入して、より侵入者に対して厳重な警備ができるよう、自動警備用ゴーレムを入れたり、藁の家から石のブロックの家に変えたり、巨大なコンクリートの塀を作ったり。償いだと言って、色々とやってくれたみたいだった。


「まだ償いができたなんて思ってはいない。これからはちゃんと人に喜んでもらえるような、娘に胸を張れる仕事で、稼いで、娘と2人慎ましく生きるよ。」


そう言い残して、オーナーは去っていった。


「素空さんや。」


「はい。」


後ろを振り向くと、村の長老らしき人が、俺に話しかけに来てくれた。


「本当に感謝しております。あなたがいなければ、我々はとうに身を売られ、地獄のような日々を過ごしていたでしょう。」


「そんな……本当によかったです。俺ができること……、だいぶ来るのが遅れましたが何かありませんか。」


「いえいえ、我々を救っていただいた方に、何かをまだしていただくことなど、とても……あぁ、そうだ。我々の知っているとても綺麗な夕日の見れる場所があるんです。そこに、ヤテンと行ってきてはどうですか?あの娘も、疲れで少し気が滅入ってしまっているようで……」


「あぁ、そうなんですか!?分かりました!ヤテンさんと行ってきます!」


「えぇ、そうしてください。(チャンスじゃ、ヤテン!!告白のチャンスだ!!行ってこい!!!)」


「(このクソジジイ、念波で何話しかけて来てんだ!!!余計なお世話だよ!!恥ずかしい!!!)素空も、疲れてるでしょう。そんなに急ぐ必要はないわ。しばらくゆっくりしましょう。」


「(お前が結婚しないか、心配でわしも、そろそろ孫の顔が……)へぶしっ!!」


ヤテンさんが、何故か村長の頭を殴った。


「わわっ!!?ヤテンさん、何してるんですか!!!」


「あっ!!!しまった!!!いや、何でもないのよ。ともかく、素空はゆっくり休んでいて。」


頭からしゅ〜っと湯気の上がった長老は首根っこを掴まれて、ヤテンさんに連れて行かれた。


「一体何だったんだ………」


「素空〜!!!」


振り向くとそこには、満点の笑みを浮かべたルルがいた。


「村の人と、クッキー作ったよー!!!一緒にたべよー!!!」


「えっ!?そうなの!分かった!一緒に食べよっか!」


机で、エルフの人たちと一緒に食事タイム〜


クッキー、とってもおいしかった。







「お兄さん、助けてくれてありがとう。」


小さなエルフの女の子から、花冠を受け取った。


「ううん。こちらこそ。」


俺は受け取った花冠を頭にかぶせてみた。


「似合ってるね。」


隣にいたルルはにこやかな笑みを浮かべている。


「しばらく身につけていようかな?でも、落として形が崩れちゃったら嫌だな。」


「……私がまだ使える機能。」


ルルは宙に手をかざし、何かスクリーンのようなものが現れた。


「形が崩れちゃいけないから、ちゃんと綺麗な箱にしまっておくね。」


「うん。分かった!お姉ちゃんありがとう!」


お姉ちゃん、そう呼ばれたルルは少し顔を赤らめて、エルフの子どもの頭をそっと撫でた。


空中に、電子的な青白い箱が現れ、その中に花冠をしまうと、とても綺麗なデコレーションの施された可愛らしい箱に代わり、そして空に上げると、再び電子の光に包まれて、見えなくなった。


「ここが1番安全。お兄さんきっとたくさん動くから、絶対壊れないようにしまっておく。」


女の子は、おぉー!という声をあげて、目をキラキラさせていた。


「見たことのない魔法!お姉さん、すごい魔法使い?」


「魔法……うーん、、そうね、未来の魔法使いよ。」


「お姉さん、未来から来たの!?」


「まぁ……うーん。未来……そうかもしれないわね。」


ルルは、どう説明したものかと頭を悩ませている。


「俺たちは、ちょっと遠い世界からきたんだよ。」


「遠い世界?」


「うん。でもね、こことそんなに変わらない。とても楽しい世界だよ。」


「楽しい世界!!私、行ってみたい!!」


「だってさ、お姉さん。」


「そうね。……いつか、私が連れていってあげる。ここと同じくらい、たくさん綺麗な景色の見れる場所があるわ。」


「わぁーい!!やったぁーー!!!」








気づけば、夕方になっていた。


俺と、ルルの2人は村のはずれの少し見晴らしのいい崖で腰を置いて、話していた。


「私、この世界に、あなたを閉じ込めるために、あの子たちをつくったわ。」


「……うん。」


「現実世界と変わらない、あなたが楽しめる、そんな世界。ずっと私と一緒に、住める世界。」


「そうだね。」


「………間違ってた。いや、間違ってたなんて言っちゃいけない。わたしには、あの子たちを作り出した責任がある。かならず幸せにする。あの子も、この世界も。」


「ルル……ルルは本当に優しいんだね。」











愛する人は、あの時と同じ言葉で、同じ表情で、わたしの顔を見ていた。


「……ありがとう。」


わたしは、もう泣かない。

一度、愛する人の胸の中で泣けたから。


「よし!!必ず、私は魔王を倒して、この世界を守ってみせる。絶対、絶対、不幸になんかさせない。私と同じような、思いを子どもたちにさせない。1人にさせない。わたしは、みんなを幸せにする!!」


「ルル。俺もルルと一緒に頑張るよ。何か悲しいことがあったら、一緒に悲しんであげる。辛いことがあったら、真っ先に俺に話してくれ。俺は、いつでもルルの味方だよ。」


わたしは、素空の言葉に思わず顔を赤らめる。


「なっ、ななっ、プロポーズ!!?」


「プ、い、いや、違………と、友達として………」


ベシコーン!!と気づけば、ヤテンさんが素空の後ろにいて、頭をきつくしばいていた。


「女の子に、そんなこと言ったらそうとられるに決まってるでしょ。このスカポンタンが!!!そんなこと言うなら、最後まで責任取りなさい!!!」


「せ、責任って……」


「女の子をここまで惚れさせてるんだから、ほら……」


「いいえ、私しばらく素空君から離れます。」


「えっ?離れるって、あなた……」


わたしは素空くんの顔を見ながら言った。


「あなたから自立しなきゃならない。わたしは、わたし自身で自分をしっかりと守れるように。わたしは、わたしのことを好きになれるように、これからあなたとは対等な関係を望みます。」


「……あぁ、よろしく頼むよ。」


素空君は、とても穏やかな笑顔で私に言った。

わたしは、本当に幸せだ。生きてて、本当によかった。ありがとう、素空くん。















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ