男サイド
超科学人造人間【ロイド】。
踏み入ってはならない領域に手を出した人間はその日滅んだ。
その世界に生き残るのはロイド達だけとなった。
みんなその過剰科学を使って生活していた。
この世界は腐敗している、その用にしか俺は感じる事が出来なかった。
俺は人類の残した最後のロイドだ。
有する能力は、時間跳躍。
俺はそれを使って何度も人生に挑戦した。
故に人の何倍ものスピードで、世界の無情さを思い知ったのだ。
何回やり直したか、そんな事百を超えた辺りから数えるのを止めてしまった。
しかし結果は全て似たようなものだった。
能力の使えない、いや、使ったという証拠が残らない俺は決して受け入れられる事は無かった。
人間だと勘違いされる事も多々あった。
最終的には全ての場合、収容所に納められる事になる事だけは不変だった。
だから俺は自分を殺した。
何も感じない、あらゆる感情をシャットアウトした。
そのつもりだったのに、どうして俺は、今、こんなにも…苦しいのだろうか。
磔にされた状態で目の前に昔の彼女だいた。
唯一俺が先に振った彼女だ。
今でも心残りが有るほどの女だ、今でも一番大好きな…。
その彼女が椅子に固定された状態で串刺しにされ続けている。
彼女の能力は、絶対蘇生の為、串刺し程度では死なない。
しかしその能力はあらゆる感情を敏感にさせてしまうのだ。
故に結果は普通に感じるよりも痛いという悲劇。
彼女の叫び声が俺の頭を通過するたびに、閉ざしていた感情がぶり返してくる。
そして何度目かの響きで、俺は大声で彼女の名前を呼んだ。
それは絶叫にかき消されて、拷問官には聞こえなかったようだったが、彼女は気付いてくれたらしい。
涙に濡れた顔で確かに俺の方を見て、痛いであろうにも関わらず笑ったのだ。
誰もが放棄して、すべてが見放したこの異端者に、だ。
俺の感情は簡単に復帰して、一瞬にして能力を発動した。
飛んだ先は、まだ人が生きている世界。
その中で俺は警察の代わりとなるロイドを造っている工場を破壊した。
力は時間跳躍だが、それを応用すれば、簡単に潰す事は出来た。
そして次に俺が壊したのは拷問用のロイドを造る工場だった。
それも手短に終えて、ふとテレビが見えた。
そろそろ完成が予想されるロイドだった。
有する能力は絶対治癒そう名付けられるロイドだ。
俺はしばらくそれを眺めた後、とある工場を潰した。
その工場で制作される予定だったロイドの力は、時間跳躍、躊躇い無く破壊してその場を去った。
それから幾年も時を経て、人間とロイドは共存する世界になっていた。
その根幹で俺はいつも、世界を見張っていた。
どちらも共存出来るように、そして誰も不幸にならないように。
そして、とうとうこの日がきた。
俺は収容所に来ていた。
ここはただ造られただけの場所であり、ある一つの事柄を達成する為だけに世界が造った場所だった。
その通路をどんどん奥へと進んでいく。
そしてあった。
磔板と、椅子に座る彼女の姿が。
俺は椅子に近づくと、彼女を椅子に縛る縄を解いてやった。
彼女は訳の分からないといった顔でこちらを見るが、説明するわけにはいかなかったので、そのまま無言を突き通した。
そして彼女を安全な場所にまで連れて行った後、俺は彼女と別れた。
それからはただ一つの目的の為に行動した。
彼女の平和を第一に考えて、彼女が楽しいといった感情で笑える為に。
ただそれだけの為に俺は――――――
――――――生き続けた。