女サイド
超科学人造人間【ロイド】。
踏み入ってはならない領域に手を出した人間はその日滅んだ。
その世界に生き残るのはロイド達だけとなった。
みんなその過剰科学を使って生活していた。
ある者は一定の条件を揃うと出来る、空間転移を使い宅配便。
ある者は形状変化を用いてモデル。
ある者は過剰にホルモンを分泌して治療全般などを行っている。
そんな中で唯一人、なんの能力かが分からないロイドがいた。
そのロイドは恐れられ強制収容所に無期に渡り入っている。
死刑が執行されないのは、あまりに奇妙であるが為だった。
そして、彼は私の彼氏だったロイドだ。
噂で聞く彼は確かに奇妙だった。
どのような拷問に対しても平気な顔でやり過ごし、あらゆる快楽が抜け落ちた瞳は拷問の執行者を逆に拷問するかのようだったらしい。
独りでもう十年に渡ってそこにいる彼を誰も助けようとはしなかった。
そんなある日、私のもとにいかつい警備服をきたロイドが来た。
私は何故捕まるか分からなかったので、そのロイドから逃げようと思った。
しかし逃げられなかった。
警備員のロイドの能力のほとんどは、身体強化や妨害電波の様な能力ばかりで、私の能力では太刀打ち出来るようなものではない。
あっさり捕まった私が連れてこられたのは収容所だった。
そう、彼がいる場所だ。
しかしその中で私が連れて行かれたのは独房などではなかった。
とある磔にされた囚人の前、そう、彼の前だった。
私はそこで、椅子に座らされて、固定された。
「お前の歪んだ顔が見てみたいなぁ…」
後ろから拷問官のような男が狂った声をだす。
それで何をするか分かったのか、後ろを見れない私の変わりに彼が何かを言おうとした所、それを打ち消すように大絶叫が響いた。
私の悲鳴だ。
あまりの痛さに悲鳴が出てしまったのだ。
私の胸から突き出る物は周囲十センチはあろう極太の杭だった。
それがすぐに引き抜かれて血が溢れ出す、そのはずだった。
しかし血は溢れ出さずに、細胞が急速に再生して、一秒を待たずに完全再生した。
私の能力は全ての治療全般のトップクラスと言われる能力。
その名も、絶対蘇生。
故に杭を刺す程度では痛さしか無く、絶対に死なない。
それをこの拷問官はわかっているのだろう、続けざまに杭が身体を貫いた。
その場所に私の悲鳴がずっと木霊し続けた。
狂ってしまいそうだ。
助けて欲しかった。
それでも……
目の前で私を見て苦痛に歪んでいる彼の顔を見て、少しだけ嬉しかった。
―――――次の瞬間。
もう何が何かわからなくなってしまった。
どうしてこんな場所にいるのかが分からない。
どうして体中が痛いのか分からない。
どうして椅子に固定されているのか分からない。
どうして…こんな温かい気持ちになっているのか分からない。
そんな私の縄はひとりでに解けた。
目の前には見知らぬ男が立っていて、私を収容所から連れ出してくれた。
外の世界は明るかった。
ロイド達だけになってからは、過剰科学によって腐敗した大地と大空、そのどちらも暗かったのにだ。
しかし私はその光景が当然のものとして受け入れてしまった。
理由は分からないが、昔からそうだったような気がするのだ。
その日から私は明るい大地のしたで暮らしている。
しかし、私の胸には大きな穴が空いているようだった。
それが何なのか、私には分からないし、知る術もない。
しかし、それはとても大切なものだったはずだ。