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先生、恋人になりませんか?!  作者: 雨宮雨霧


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独りじゃない

朝、先生を見送ってこれでもう会うこともないと思っていた。

思っていたら先生が家の前に居るではないか。

「先生?」

「やっと帰ってきた。待ってたよ。」

いやなんで居るの。別に遅い時間なわけでもないのに。いやもう20時すぎてるか。遅いのか。てか親居たらどうするつもりなんだ。先生はなんでここに居るんだ。

「忘れ物でもしましたか?」

「してないけど連絡先交換するの忘れてたなって。」

「とりあえず家入ってください。冷えますよ。」

なんか今日も家に先生居るんだけど。なんで?大好きな先生が居るのはうれしいけど。うれしいけどさ。心臓もたない。

「体調大丈夫?朝倒れたのにこんな時間までなにしてたの?」

いや親かよ。私の親より親じゃん。

「学校終わってからぼーっとしてたらこの時間でした。」

「ぼーっとする時間長すぎない?本当はなにしてたの?」

やっぱり親なのか。私の親そんなこと聞いてきたことないよ。

「ビルの屋上で寝てました。」

「なんでビル?分かった、死のうとしてたな。」

「してないしてないしてないです。」

別に飛び降りてないし生きてるからいいじゃん。屋上から下見たら足竦んで怖くて無理だったんだよ。それで日向ぼっこしてたら寝てただけ。

「無理して言う必要はないけどさ。恋人になりませんかって言われたのに聞かずに終わるのもね。」

「恋人はもう忘れてください。手紙も捨ててください。」

「無理だね。さて、話を聞かせてもらおうか。」

無理して言う必要ないって言ったじゃん。なんか問い詰められてるんだけど。

「別に死にたいわけじゃないです。死にたいけど死ねないだけで。」

「それで?」

まだ聞く?聞きたいかこんな話。先生の立場上とはいえ私は元生徒。別に聞かなくてもいいだろう。

「親も私に興味ないし学校も家もずっと独りです。特別なにかができるわけでもない。何なら劣っている。なんで生きてるのか分からない。死んでも誰も悲しまないし私ももうこれ以上辛い思いをしないでいい。死んだらwin winなんです。」

段々先生の表情が曇っていく。怒られるな、これ。別にいいんだけどね。先生になら怒られていいや。

「早瀬は独りじゃない。私が居る。早瀬が死んだら私は悲しいし辛い。win winなんかじゃない。」

涙目になりながら話す先生。悲しませるつもりはなかったんだけどな。

「死ぬな。私と生きろ。」

「なんかかっこいいですね、先生。大丈夫です私は死にませんよ。」

私と生きろってことは付き合えるってこと?!なわけがない。それでもひとりじゃない、そう言ってくれたのは少しうれしい。

「先生、ご飯なにがいいですか?」

「いや、今日はこのまま帰るよ。明日また来るね。あ、連絡先交換しとこう。」

先生の連絡先ゲット!やった。夢のようだ。

「じゃあおやすみ。いい夢見てね。」

「おやすみなさい。先生、ありがとうございます。」

何だか濃い一日だった。

スマホを見ると一件のメッセージが来ていた。

「これからもよろしく。」

「よろしくお願いします。」

返信するとすぐに既読がついた。

これは夢なんだろうか。夢なら覚めないでほしい。

先生、私は先生が思っているより面倒な人です。愛も重たいです。好きになってごめんね。

先生が居なかったら多分死んでます、とっくに。

生きます、先生が居る限り。

また私はご飯を食べず眠りについた。

先生の居ないベッドで。

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