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先生、恋人になりませんか?!  作者: 雨宮雨霧


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救って

昼休みは中庭の隅っこで泳ぐ鯉を見ている。というのもお手洗いから戻るとクラスの一軍と呼ばれるような人たちに席を取られていた。陰キャを通り越して空気な私がそこをどけと言えるはずもなく。そんなことを言ったらもう学校に行けなくなりそうだし。仕方がないので鯉と戯れている。木漏れ日を浴びながら静かに流れていく時間に更けながら。ここで勉強するのもありかもしれない、と思っていると予鈴が鳴った。時間の流れは変わってくれないんだった、戻らないと。

「鯉です。」

意味不明な文と鯉の写真を先生に送りつけておく。今日の1枚はこちらです。既読は夜になるまでつかないだろうけどそれでいい。その間に覚えていたら送信を取り消しておこう。あ、急いでいるのに返信が来た。悪いけど未読のままにしておくね、授業が終わったらすぐに確認します。

とか思っていたのに未読のまま電車に乗っている。確認しないとな。「叶の写真はないのか」だってさ、ちょっとかわいいが過ぎるのでは。自撮りなんてするわけないよ。先生の写真はたくさんありすぎているけどね。久しぶりに実家に行こうかな、家がなくなっている可能性もあるからたまには見に行かないと。

「あ、」

「…」

何年ぶりに会っただろう、この人と。挨拶代わりに殴られるとか久しぶりすぎて動揺してしまう。そんな様子も気に食わないんだよね、知ってる。私はサンドバッグではない。もし本当にそう見えているのなら、それは大分やばめの病気なのだろう。あの頃とは違うんだ、この家。先生が置いていったペットカメラというものがあってだね。それもこんなところにあったの?と思うような場所にあるんだ。

「もうやめましょう、私はあなたの奴隷ではないです。」

「偉そうな口を利くようになりやがって。」

うん、痛い。痛いのはそんな好きじゃない。もう私はそんなに弱くないし逃げもしない、でも立ち向かうのはやっぱりできない。なんでこんな人が親になれたんだろう。不思議だ。お金を置きに来てくれたのはありがたい、それはありがとう。でも―

もう一発くらいそうなところで電話が鳴った。また不倫ですかね。好きですね、そういうことをするの。声色が面白いくらいに変わっている。こんな大人にはなりたくないなー、絶対。なにもなかったように去っていく親。さてと、帰るか。

「叶!」

「わー、綾音様。早いご帰宅ですね。」

そんなことを言っている場合かと先生の手当てを受けます。先生に手当てされるならもうちょっと殴られてもよかったかもな。なんてね。本当は警察に駆け込んででも逃げるべきなんだろうけど。もう今更だし。あともう少しで実家も消滅するだろうし。まぁいいや。

「無事でよかった。」

「生きて帰るのが私です、そんなに弱くありません。」

笑ってみせるが先生は笑わない。そりゃそうだよな、ごめんね。私だって先生が傷だらけになって帰ってきたらいくら元気そうに見えても、笑っているように見えても。笑い返すことはできない。先生が居る、居てくれる。それがどれだけ心の救いになっているのかを痛感した今日だった。

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