表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
141/142

ゲームオーバー

涼しくなったような、なっていないようなそんな日。真夏の空気ではなくなったのはうれしいところ。これから好きな冬がやってくる。それと同時に大学入試もやってくる。やっぱり来なくていいかも。家に帰ってから一生ゴロゴロしている。全てにおいてやる気がない、なにもやりたくない。生きたくない。そんな日もある。そこまでメンタルが強い人間ではないのはみんな知っているか、そうか。クッションに顔を埋めたままペットカメラにピースをする。どのカメラも私を捕らえているんだよな、そう考えるとうれしいかもな。うれしいって思うのも端からすれば異常なのだろうが。

「いつまで床に落ちてるの。」

「ずっとです。」

気付けば先生ご帰宅。暗くなるのもずいぶん早くなったものだ。洗濯物取り込むの忘れてる気がするけど動きたくない。こういう日もある、と自分に言い聞かせてもいつも動いてないだろ?と誰かが言う。誰も言っていないのに。

「要る?」

「大丈夫です、綾音様のなんで。」

先生がお菓子を分けようとしてくれたんですがこれは夢?つねった頬が痛いから夢ではなさそうだ。それは先生のものですなので大丈夫です先生の気持ちだけでお腹いっぱいです幸せですありがとうございますこの幸せな感情のまま死にたいです。

「ゲームしよ。」

「突然どうしたんですか。それは一体…」

「ゲーム機だけど。」

押入れから出てきたゲーム機。どこに仕舞ってあったんだろう。それにしてもなんで急に?ゲームとかしたことがないしどうやってするのかも知らない。初めて見たゲーム機につい夢中になってしまう。どうやって動くんだ、これ。

「私が学生だったときのやつだから動くかは分からないな。どうだろう。」

電源を入れるとちゃんと動き出した。すごい、動いてる。カセットを挿して先生がゲームをする姿を見守る。見ているだけでも楽しいものであっという間に時間が過ぎていく。これ自分がやったら多分抜け出せなくなるだろうな、ひたすらやり続けてしまいそうだ。先生にコントローラーを渡されかけたがなんとか断って観戦。スマホでもパソコンでもゲームができるのは知っているがやったことがない。無料だ、と言われても課金というものがあるからね。怖くて手が出せない。沼にハマったら時間もお金も溶けてしまう、それが怖い。私は先生に時間とお金を溶かしまくるほうがいいんだ。

「やらないの?」

「見てるだけで楽しいです。よそ見してたらゲームオーバーになりますよ。」

そう言い切る前にゲームの主人公、死す。それでも生まれ変わる主人公、強し。何事もなかったようにまた歩きだしている。トラウマとかならないのかな。ゲームの世界にそんなものないか。夜更けまでずっと子どものようにはしゃいでいた。明日も学校なのに。別にいいか、久しぶりにこんなに笑えたし。楽しかった、ありがとう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ