魔人と聖人
急に思いついて勢いのままに書きました。まさかの結末をお楽しみに!
男A「あれ?こんなところに金ピカのランプが落ちてる。」
男B「本当だ。『アラジン』に出てくる急須に似たランプみたいだな。」
男A「もしかしてこれこすったら中から魔人が出てきて願いを3つ叶えてくれるんじゃね?」
男B「お前何夢みたいなこと言ってんだよ。」
男A「ものは試しじゃん?な?こすってみようぜ?」
男B「あーまあやってみるか?」
男A・男B「「………」」
男B「おい?どうしたんだよ?拾えよ?」
男A「え?お前がこすってくれるんじゃねぇの?」
男B「なんで俺だよ?言い出しっぺのお前がやれよ。」
男A「でもこんな道に無造作に落ちてるものを拾うのはちょっとなぁ…」
男B「はぁ⁉お前、友人を犠牲にするタイプか⁉最低かよ⁉」
男A「頼む!こするだけだから!蓋はあけなくていいから!」
男B「お前…何かあったらお前が治療費とか出せよ?」
男Bはランプを拾い上げて表面を擦った。
男B「やっぱり何も起きな…うおっ!」
男A「わぁっ!」
ランプから光と煙が一気に解放される!
魔人「やぁ!私は魔人だ!願いを3つ叶えるといい!」
男B「嘘だろおい!」
男A「魔人だすげぇ!やっぱり本物だ!」
男B「実在したのかよ!」
魔人「だって私は魔人だから!次元を超えるのもお手の物さ!」
男B「そういうのありなのか!」
魔人「あり中のありさ!さあ若者二人よ、なんでも良いぞ?己の願いを3つ私に言いなさい。一瞬で叶えてあげよう!」
男A「えぇー!マジかよ!絶対に外せねぇやつだぞ。なににしようか…」
男B「世界中の国同士の争乱を今すぐ止めてください!!」
男A「はぁぁぁぁぁッ⁉」
魔人「いいだろう!ハァァァァァァァァァッ!はい止まりました。」
男A「早いッ!」
魔人「魔人ですから。」
男A「魔人だからか~てかおい!B!お前抜け駆けしてんだよ!」
男B「ランプをこすって魔人を呼び寄せたのは、この俺だぞ!」
男A「だけど言い出しっぺは俺だろうが!そしてお前なんだその欲望にまみれてない清廉潔白な願いは!」
男B「人間として当たり前の願いだろ!」
男A「それはわかるけどせっかくの機会なのに自分の夢を叶えないのは勿体なさ過ぎるだろー!」
男B「うるさいな!俺は俺の欲望を満たす!」
男A「願いが綺麗すぎて欲望と呼ぶのかどうかも怪しいな!」
魔人「さあ!願いは残り2つだ!」
男A「次は俺だ!同じサークルのレナちゃんと俺を…」
男B「世界中の病気に苦しむ人たちを健康で幸せにしてやってください!」
男A「だからぁー!!」
魔人「いいだろう!ハァァァァァァァァァッ!はい叶いました!」
男A「だからお前!B!出し抜くなって!」
男B「先に出し抜こうとしたのはお前だろうが!」
男A「2人で平等に願いを叶えようってことだろうが!」
男B「俺達2人だけしか得しない夢を叶えて何が平等だ!」
男A「この聖人がぁぁぁぁぁぁッ!!」
魔人「ハッハッハッハッハッ!元気な二人だ!因みに今の2つ目の願い事で世界中の医療業界が崩壊を始めたぜ!」
男A「ほぅらB!お前のせいだ!お前のせいで世界中の医師と看護師とその家族が困り始めたぞ!」
男B「医療従事者はみんな、それを願っていたはずだ…」
男A「…はぁ?」
魔人「さぁ若者たちよ最後の願い事だ!次に願いを叶えるのはどっちだ?」
男A「もちろん俺だ!同じサークルのレナちゃんと俺を…」
男B「100億円をくださぁい!」
男A「ぬっ!?ぎぃっ!が!」
魔人「いいだろう!ハァァァァァァァァァッ!君の口座に100億円を振り込んでおいた!」
男A「お前最後の最後で欲を解放したな!」
男B「さっきまでので十分徳を積んだんだ!それを今ここで解放したんだ!」
男A「それはもうちょい先か来世に持ち越せよ!なんか俺が言うのもなんだけどちょっとカッコ悪いぞ!あとその100億円は俺と山分けしてくれるよな?」
魔人「フハハハハハハハハ!おもしろい二人だな!ん?ちょっと待って?はい魔人です。はい、はい…」
魔人は両手の人差し指の先を側頭部に添える。
魔人「はい、はい…はい了解です。今、魔人事務局から連絡があってな。そっちのBくんという子が世界平和と世界保健に多大な貢献をしたということで願い事をもう二つ叶えても良いことになった!」
男A「え?ありなのそういうの?」
男B「よっしゃ…俺の欲望はまだまだ終わらない…」
男A「お、お前、さっきまでの聖人ぶりはどこへ行った…まあでも今のお前になら願い事を任せられる。お前と山分けして得た50億さえあれば魔人に頼らずともレナちゃんは振り向いてくれるはずだしな!」
男B「さっきの100億円を全額慈善団体に突っ込んでください!」
男A「Bィィィィィィィッ!!100!!億!!100億!!!」
魔人「グレイト!いいでしょう!ハァァァァァァァァァッ!主要な10の慈善団体に10億円ずつ寄付しておいた。」
男A「100億…100億…100億…」
男B「A、最後の最後はお前が叶えてもいいぜ?」
男A「何!?」
男B「さすがに5分の4を俺が持ったのは不公平だった。世界中の人々を想うあまりに…平等を叫んでたのは俺だったのにな。」
男A「そうか…よし!最後は俺が!」
魔人「ちょっと待って。」
男A「何?」
魔人「ごめん、これは私の説明不足で申し訳なかったが、スペシャルオプションで追加された2つの願い事を叶える権利はBくんへのものなんだ。」
男A「ほえ?」
魔人「Bくんの世界平和と世界保健に対する貢献に対するオプションだから。Bくんへの贈り物ってことだ。つまり最後の一つの願い事はBくんに願う権利がある。」
男A「………うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
男B「なんかすまねぇ。」
男A「お前が謝る必要は無い。だってお前は心の綺麗な人間だからな。自分じゃなくて顔も名前も知らない他人の幸せを願えるヤツだからな。俺は欲望にまみれすぎてた。でもお前は欲を良いように使えている。お前になら最後の願い事の権利を任せられる。B、お前の願いを叶えてくれ。」
男B「A…よし、最後の願い、慎重に選ばなきゃな。」
Bは腕を組み、熟考する。
男B「戦争は終わった…病人たちも救った…慈善団体への高額寄付で貧困も解決に向かう…世界中の人間はほぼ全員救った…残るは…自然か…動物か…?」
男A「環境保全と動物愛護か。それはいいな。」
男B「よし、決めたぞ。」
魔人「決まったか。さあ最後の願いを言うがいい!」
男B「自然を破壊しているのは人類…自然で過ごす動物を苦しめているのも人類…環境破壊の元凶である人類を滅亡させてくださぁぁぁぁぁぁぁぃ!」
男A「B!!お前!!」
魔人「いいだろう!」
男A「魔人!!待て!!タンマ!タンマ!あっ…」
魔人「はい叶いました…ってそうだいないんだ。」
男Aと男Bは魔人の前から忽然と姿を消した。そして辺りは静寂が広がる。聞こえてくるのは近くを飛んでいった小鳥のさえずりだけだった。
魔人「人間というのは愚かなものだな…」
そう言いながら魔人はランプの中へと消えていった。
人間の欲望は恐ろしいですね☆
最後まで読んで頂きありがとうございました!