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ヒーローには日向が似合う  作者: とこね紡
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ヒーローには日向が似合う

天気のいい景色に、蒼はよかったと思う。


最高のピクニック日和の日曜日。ここは県内で一番大きな公園。たくさんの子供連れの家族やカップルの姿。

芝生に敷かれたレジャーシートの上、蒼はトートバッグやランチバッグ、小さなリュックを置いて座っていた。

そよ風が吹き、軽く髪を押さえた蒼の左手には指輪が光りーー


「ーーはい。これ、」


蒼のもとへと走ってやって来た男の子が言った。


「おかあさんにあげる」


男の子が差し出しているのは、シロツメクサの花冠だ。

はっとする蒼に男の子は笑顔を見せている。あどけなく、昔の日向によく似た笑顔をーー


「……ありがとう、陽翔(はると)


蒼も笑みを浮かべ、花冠を受け取った。蒼が陽翔と呼んだ男の子が、嬉しそうに照れくさそうに目を伏せる。


「ほとんど俺が作ったけどな」


陽翔の背後に来た男性ーー日向が言った。


三十代になった日向は相変わらず眉目秀麗で、そこに大人の色気が加わっている。

蒼は昔に比べ表情が柔らかくなったせいか、年齢よりも随分と若く見られることが多いが。


「むーおとうさんんー」


日向の方を見て、陽翔が口を尖らせる。そんな彼の頭を日向がくしゃくしゃっと撫でる。


自分の目に映る光景に自然と笑みが(こぼ)れる。

蒼はシロツメクサの花冠を持つ手に優しく力を込めた。

五歳になったばかりの息子に、日向は花冠の作り方を教えたんだろう。

シロツメクサがたくさん生えている辺りで、さっき彼ら二人でしゃがんでいた様子を思い出す。


「二人ともありがとう」


自分がこんな幸せな家庭を築いているなんて、昔には考えられなかったことだ。

もちろん困難もあったし、今だって悩みや不安もある。

それでも日向がいてくれたおかげで乗り越えられたし、日向がいてくれるから解決していくだろう。

日向は昔彼が言ったように、自分が望むものは何でも何度でも与えてくれた。

嫌なことがあった時は、それを掻き消すほどの喜びをーー


「……大丈夫? あお」


黙って思いに浸っていた蒼に、心配そうな顔で日向が聞く。

陽翔に聞こえないようにだろう、その声は囁くようなもので、陽翔は辺りを見回し遊びたくてウズウズしている様子だ。


「大丈夫だよ、ひな」


蒼も小さな声で答えた。


「胸がいっぱいになってただけだから」

「ねぇねぇ!」


蒼と日向の静かなやり取りを、陽翔の大きな声が破った。


「ヒーローごっこしよー」


陽翔はテレビで放送されている戦隊ものが大好きで、三歳の頃からよくごっこ遊びをしていた。

「おとうさんが悪者役で、おかあさんがお姫さま役。でぼくが、悪者からお姫さまを守るヒーローね」

日向や蒼を順番に見ながらそう指示を出していった陽翔に、日向が不満そうな顔をする。

「あおのヒーローはお父さんだろ? 陽翔」

「ぼくだよ!」

「じゃあ、お母さんが悪者役しよっか」

互いに譲らない二人に蒼が提案すると、日向と陽翔は即答した。

「だめだ」

「だーめー」

その後もまだ二人が言い合っているのを見て、蒼は笑む。


「二人とも、私のヒーローだよ」


日向と陽翔も笑う。

そして、陽翔が元気よく駆け出した。彼の名前を呼んで、日向が追いかける。


「おかあさーん、こっちこっちー。早くきてー」

「あお、おいで」


少し先に行った二人にそれぞれ呼ばれ、蒼は立ち上がった。


「うん、今行くー」


ああ、何て幸せなんだろう。

二人のヒーローが私の側にいてくれるだけで、笑ってくれるだけで、十分だ。

私も永遠に、二人を愛し守っていこう。


晴れた空の下、小さな背中と大きな背中を見つめる蒼は、眩しくて目を細めた。

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