表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/38

第35話 裏切り者は誰?

 この世界に魂をデータ化して、新たな肉体を与えて再現させた――といってしまえば、なんとも味気ないがイメージとしては間違ってないだろう。


「レベル100を超えた方には、この事実をお伝えしているようです。もっともレベル100になっている者の殆どは、代理戦争時代の記憶が断片的に蘇っていたりしていますから、この世界の真実を理解するのは早いでしょう。それでも現実を受け入れられず精神異常を起こす者もいたので、隔離あるいは記憶改竄、レベルダウンを起こさせるなどの対処をしてきました」


 となると漆黒花というのは、魔王が意図的に作り出した存在ではないのだろう。それは魔王とは真逆の世界を望んでいる。


「この世界の設定がゲーム寄り――システム化したのは、管理しやすくするためでした。そして一元管理外に生まれたバグ。それは旧人類の怨念であり、概念であり形はなかったが百年という年月をかけて種に宿ったのです。物に魂が宿るというアニミズムという概念が日本では根強く存在しており、その概念を漆黒花は利用したと魔王はおっしゃっていました」

「……」


 だとすると黒魔獣という形状もまた魔王()の知識にある『聖書ヨハネの黙示録』に出てくる獣から形を得たのではないか?

 陽菜乃のおかげで妙な知識はあったし。


「平和な世界だったが漆黒花の出現により、魔獣専門殲滅部隊である《狩人》の設立、異世界人の手厚い保護が必要になったということか」

「はい。黒魔獣の出現は約百年前から始まっており、その圧倒的な脅威に対抗すべくSランクに新たな役割が与えられました」

「それは──なんとも面倒だな」

「厄介ではありましたが、報酬として《探し人》の再転生率の優遇、Sランクの肉体の維持に寿命が延びることなどの特権を得ました」


 一度は絶望と断絶で終わったからこそ探し人との再会を切に望み、今度こそ幸せな人生を謳歌したいと思うのは当然だ。

 その気持ちはわかる。


「私もずっと彼女を待っております。元の世界でいつも助けてくれた大事な人。ダリアやシエスタは出会えたみたいで羨ましいものです」


 シエスタ。その名にドキリとした。


「陽菜乃──シエスタのことを」

「ええ。彼女は貴方が再転生するのを、ずっと待っていたのですから。そして魔王直々に《魔王の半身》を漆黒花から守るように命じられていました」

「なっ!?」


 思い返すと陽菜乃は俺の傍にずっと居たし、やたら高価な魔道具を身につけるように渡してきた。


「でも、それなら三年前に俺たちが黒魔獣に襲われた時に、シエスタはなぜ本来の力を解放しなかった!? その後も、すぐに姿を消したのは──」


 ずっと胸の内に引っ掛かっていた感情が爆発する。だが途中でこの感情をぶつける相手はクローではないと気づき言葉を切った。


「そう思うのは当然でしょう」

「すまない。……貴女にいう言葉ではなかった」

「かまいません。……そうやって感情をぶつけたいと思う相手がいるのが羨ましいですわ。あの一件によって漆黒花や黒魔獣の脅威判定は跳ね上がりました。それほどまでに旧世界の怨念は深く年月を重ねるにつれ狡猾になってきています」

「漆黒花に人格が芽生えたことで、三年前以上の厄災が降り注ぐ可能性があるというのか?」

「はい。漆黒花と結託した冒険者が出た以上、状況は最悪といえるでしょう」

「!」


 冒険者が敵側に寝返った。なにかの冗談のように聞こえたが、クローは言葉を続ける。


「普通ならあんなモノと手を組もうなどと考えません。なにせ漆黒花の本懐はこの世界の破壊なのだから。でも世界を破壊してまで手に入れたい願いがあったとしたらどうです」

「──っ!」


 たとえば《探し人》との再会。再転生するとはいっても欠けた魂の修復速度(バックアップ)に個人差があるとクローは語る。頭で理解していても待ち続けるというのは、根気がいるものだ。


「待てなかった──ということか」

「ええ。それが三年前の襲撃を手引きした実行犯なのです」

「それは、一体──」


 三年前。

 黒魔獣の襲撃で得をする人間などいるだろうか。あの一件がなければ陽菜乃は俺の傍に居てくれた──と思う。そう考えて俺が《魔王の半身》だということを前提に思考を巡らせる。あの一件がなければ三年でレベル86になれたか不明だ。

 俺のレベル上げ、そして急成長を遂げさせるのなら──。


(主犯が陽菜乃という可能性も──いや。もし俺が急速に強くならないといけない状況になったのなら、もっと別のやり方があったはずだ。なにより得をしているとは思えない)


 陽菜乃を容疑者から外すとして、他に得をした人間。


「ここは図書館。気になるのでしたら調べることを推奨しますわ。そして答えに辿り着いたら、私から一つ贈物を差し上げましょう」


 そう言ってクローは、図書館の更に奥へと消えた。

 彼女が去ったことで力が抜けて座り込み、暫くその場から動けなかった。

 どのくらい経っただろう。

 腕の中で身じろぎする存在に気づき、俺は視線を落とした。幼竜は「あるじぃ……りんご」と、規則正しい寝息を立てている。その姿に力が抜けてしまった。


「ははっ……。ほんと、お前には救われてばかりだな」


 情報量が多かったものの、ずっと胸の奥にあった靄が少し晴れた気がした。確かにいきなり魔王に会うより、自分の中で受け入れ易かった気がする。



楽しんでいただけたのなら幸いです。

下記にある【☆☆☆☆☆】の評価・ブクマもありがとうございます。

感想・レビューも励みになります。ありがとうございます(ノ*>∀<)ノ♡

お読みいただきありがとうございます⸜(●˙꒳˙●)⸝!


新作連載のお知らせ

深淵書庫の主人、 鵺は不遇巫女姫を溺愛する

時代は大正⸜(●˙꒳˙●)⸝

今回は異類婚姻譚、和シンデレラです。

https://ncode.syosetu.com/n0100ks/1/ #narou #narouN0100KS


同じく新連載

ノラ聖女は巡礼という名の異世界グルメ旅行を楽しみたい

https://ncode.syosetu.com/n2443ks/4/ #narou #narouN2443KS


リメイク版

最愛の聖騎士公爵が私を殺そうとした理由

https://ncode.syosetu.com/n3516ks/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

(↓書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください↓)

https://potofu.me/asagikana123

html>

平凡な令嬢ですが、旦那様は溺愛です!?~地味なんて言わせません!~アンソロジーコミック
「婚約破棄したので、もう毎日卵かけご飯は食べられませんよ?」 漫画:鈴よひ 原作:あさぎかな

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

【単行本】コミカライズ決定【第一部】死に戻り聖女様は、悪役令嬢にはなりません! 〜死亡フラグを折るたびに溺愛されてます〜
エブリスタ(漫画:ハルキィ 様)

(↓書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください↓)

https://potofu.me/asagikana123

html>

訳あり令嬢でしたが、溺愛されて今では幸せです アンソロジーコミック 7巻 (ZERO-SUMコミックス) コミック – 2024/10/31
「初めまして旦那様。約束通り離縁してください ~溺愛してくる儚げイケメン将軍の妻なんて無理です~」 漫画:九十九万里 原作:あさぎかな

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

コミカライズ決定【第一部】死に戻り聖女様は、悪役令嬢にはなりません! 〜死亡フラグを折るたびに溺愛されてます〜
エブリスタ(漫画:ハルキィ 様)

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

攫われ姫は、拗らせ騎士の偏愛に悩む
アマゾナイトノベルズ(イラスト:孫之手ランプ様)

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

『バッドエンド確定したけど悪役令嬢はオネエ系魔王に愛されながら悠々自適を満喫します』
エンジェライト文庫(イラスト:史歩先生様)

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ