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第21話 それは唐突に

 この世界において季節は春夏秋冬とあるものの、春と秋が長く夏と冬が短い。この世界に来て一カ月以上が経過し、クエストも少しずつ難易度を上げて行った。


 もっとも最初の二週間はお金を貯めるため、漆黒花狩りに勤しんだ。魔物と戦うのならできるだけ装備や準備を整えておく、これはサカモトの助言だ。


『いいか、実戦は何が起こるか分からない。それこそ想定外なんてザラだ。だからこそ各々装備やらアイテム、回復薬もしっかり常備しておけ。幸いにもアイテム・ストレージがあるからさほどかさばらないだろう』


 サカモトは合理的かつ教え方が丁寧だった。

 それぞれの性格に合わせた助言や、何気ない気遣いや思った以上に多くの言葉を掛けて労う。その姿はお人好しの姉と被るところがあった。


 春の陽気を感じつつ花畑の奥には《迷宮の大森林》の鬱蒼とした森が広がっている。この辺りまで進むと、三メートルほどの巨大な青紫の暴狂猪(ワイルド・ボー)や、一角兎(ホーン・ラビット)との遭遇が増えた。魔物の息遣いや奇声に慣れず、体が怯む。

 訓練の仮想敵と違い、生きている魔物との戦いに呼吸が荒くなり、戦闘時の動きが鈍くなる。


「──っ、すまない。空ぶった」

「え、ちょ。あの巨体で思ったよりも速いし、勘がいい!」


 暴狂猪(ワイルド・ボー)の突進にジャックは困惑し、俺は盾役としてのサポートが恐怖で僅かに遅れる。


 自分よりも何倍もデカい魔物ともなれば、当然怖い。けれどもこの先、冒険者を生業にしていく以上、強敵の魔物と遭遇する可能性は十分にある。


(こんなところで、怖気づいてどうする!)


 恐怖を抑え込んで一歩、前に踏み出す。

 突っ込んでくる暴狂猪(ワイルド・ボー)に対して左手の盾を押し出し、もう片方の手で三日月刀の柄を強く握りしめ──構える。


(正面から盾としてぶつかり合うのではなく、敵の速度と威力を半減させるため接触の直後、魔物の巨体を受け流す。そうすれば衝撃を殺せる)


 どっ!

 足の踏ん張りで突進を受け、即座に暴狂猪(ワイルド・ボー)の速度を削ぐ。


「うおりゃ! 狂った刃の演舞(クレイジー・ダンス)


 技は名前を口にすることで、魔法と同じように発動する。技のレベルによって威力や効果も異なるが、今回は曲湾の短剣が数本生じて暴狂猪(ワイルド・ボー)の四肢に短剣が命中する。


「居合切り、朧」


 完全に速度が落ち、その隙に瀧月朗の剣技が走る。閃光の如く煌めいたと思ったら、暴狂猪(ワイルド・ボー)は真っ二つに切り裂かれ──肉体が炭化していた。


(いつ見ても剣筋が見えない……。達人だよな)

「煌月先輩。二時の方向に一角兎(ホーン・ラビット)が三匹。私が時間を稼ぎます」

「頼む」

「はい」


 一角兎(ホーン・ラビット)は十センチ前後の角あり兎なのだが、敵と遭遇すると餅のように膨れ上がり、巨大化する。

 これも中々に俊敏だったりする。


「巻き起これ風の剣──風刃ウィンドカッター


 陽菜乃は杖を構え、攻撃系広範囲の風魔法を放つ。不可視の刃が一角兎を襲い、魔物は甲高い悲鳴を上げた。HPゲージが半減し敵の陣形を崩す。彼女は戦闘で視野が狭くなりがちな俺たちのフォローに徹してくれた。


(攻撃のタイミングやサポート、判断力がずば抜けていんだよな)


 俺とジャックは暴狂猪を倒し、そのまま一角兎を一掃すべく駆け出していた。

 剣を突き立てると肉の感触はリアルで、敵のHPゲージが赤から無色になるとHPゲージそのものが砕け散る。


 ガラスが砕ける効果音に似ており、その部分はゲームっぽい。ゲージが消えた瞬間、死体は炭化して消える。それと同時にアイテム・ストレージが増えた知らせが入る。パーティーメンバーで組んでいる際は自動的にアイテムが分配されるようになっていた。他に魔物の姿がないのを確認した後、戦闘体勢を解除。大きく息を吐いた。


「煌月先輩。お疲れ様です」


 魔物との戦闘が終わり袖で汗を拭っていると、陽菜乃がタオルを差し出した。


「陽菜乃こそ、フォローありがとな」

「いえ、先輩をサポートするのは、私のやりたいことですから!」


 俺はタオルを受け取って汗を拭う。思った以上に緊張して汗を大量にかいていたようだ。

 ジャックと瀧月朗はアイテム・ストレージに入っている戦利品の確認をしてもらい、俺と陽菜乃は周囲の警戒を続ける。


 大森林近くだとやはり魔物の遭遇率が高い。そのため周囲の警戒は、二人で交互に行うようにしている。


(今日はこのあたりで引き上げてもいいかもな。村に戻る途中で漆黒花狩りをしていけば夕暮れには戻れる)


 再度周囲を見渡すが魔物の気配や影はない。静かなものだ。


「煌月先輩」

「ん?」

「今日もクスノキさんに会いに行くのですか?」


 唐突な話題に俺は小首を傾げつつも「ああ」と答える。


「そろそろ貯金も増えてきたからな。武器の新調や魔法アイテムのことで相談を──」

「わ、私も一緒に行っていいですか!」


 前のめりになる陽菜乃の勢いに俺は「ああ」と首肯した。彼女はグッとガッツポーズをして飛び上がる。


「やった!」

「煌月も罪作りじゃのう」


 瀧月朗がまたよくわからないこと言い出した。クスノキとは仕事を頼むだけで何でもないというのに。


「ぐっ……ハーレムなんて羨ましくなんてない……。オレには、マイハニーがいるんだから……」とジャックもいじけ出す。収拾がつかなくなる前に撤収することにした。


 何気ない会話や日常が特別に思えるのは、魔物との戦いで常に命の危険があるからだろうか。この感情がなんなのか分からないまま、俺は陽菜乃たちに撤収するよう声をかけた。


 その日のクエストが終わって早めにギルド会館に訪れたのだが受付ホールが騒がしい。

 このアルヒ村では冒険初心者のF、Eランクが多く中堅のC、D、ベテランのBランクは数名しかいない。


 Aランクの冒険者はギルドから黒魔獣の警戒と危険な魔物の討伐依頼があるので、定期的に見回りとして立ち寄る程度だ。上位ランクとは時間帯的にも会うことは少ないのだが、今日は勢揃いだからかホール内がいつになく混雑していた。


「ふむ、妙じゃな」

「ああ」


 ふとCランク《夜明けの旅団》が見当たらない。ここを拠点にしつつ《大都市デケンベル》でのクエストをこなしたりするので、たまたま留守なのだろうか。


「お祭りか? それとも新しいクエスト? このジャック様を差し置いて──」

「煌月先輩、ギルド職員の人に話を聞いてみましょう」

「そうだな。手が空いている職員に聞いてみるか」

「オレの意見は無視かよ!? 泣いちゃうぞ」

「泣いている場合か。ジャック、いくぞ」

「ううー、わかってるやい」


 ピリピリと張り詰めた空気、これは決していい話ではないだろう。案の定、ギルド職員から話を聞くところ《迷宮の大森林》で数人の行方不明者が出たそうだ。氷の女王と呼ばれ笑みを見せない職員のクレアが、今にも泣きそうな顔をしている。


「あの子は確か《夜明けの旅団》ともよく話をしていた……」

変態神官(レンジ)さんの恋人です」


 陽菜乃はこっそり俺に教えてくれた。相変わらず距離が近い。良い匂いがするので、あやうく彼女の放ったパワーワードが右から左に抜けていくところだった。


「え、……あのレンジの?」

「はい、レンジさんのドストライクの方だったとか」

「ち・な・み・に。行方不明になっていたのは、もうすぐBランクに昇格するはずだったCランク《夜明けの旅団》という四人パーティーの人たちなのぅ」

「!?」


 突如、第三者が俺と陽菜乃の間に割り込んできた。


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