ハットトリックを決めたら手術を決心してくれる子供の為に、全力でゴールネットを揺らしてやる
「マルコ、勇気を出して手術を受けるんだ」
「怖いよ……でも、もしレオナルドがハットトリックを決めたら、手術を受ける勇気を貰える」
「そうか、なら俺がマルコに勇気を与えてやる」
そして俺は病室を出る。そこにはマルコの両親が神妙な面持ちで立っていた。
「レオナルドさん、息子の為にお願い致します」
「ああ、分かってる。だが命を懸けるなら、もっと興味のあるものにしろと言っとくんだ。いいか、俺はゴールキーパーだ」
盲目の少年が、好きな選手のホームランを機に手術を受けると、そんな話を聞いたことがある。結果は打てなかったが、実況が機転を利かして、ホームランを打ったと嘘をついて、盲目の少年はそれを信じて手術を受けた。そんな優しい嘘の感動話だ。
今回もそれに近いが、マルコは目も見えるし、おまけに多分サッカーに興味ない。俺のポジションくらい知っておけ。ただ後味は悪いので、とりあえず約束は果たすことに。
試合がはじまり、やはり俺はキーパーだ。俺はコヴェソトスFCで、相手はACミラソ。強豪だが、俺には秘策がある。3点決めればいいのなら話はとても簡単だ。
「レオナルド、ナイスキャッチです――って、あれあれ……おいおい、あぁあああ! なんてこった。ボールを零してオウンゴールだ!」
まずは1点。どうせマルコはサッカーを知らん。屁理屈言って手術を受けさせてやる。
するとフォワードのマッテオが訪れて、おもいっきしぶん殴られた。
「てめぇ、次やったら交代させてやる」
まずい、交代したらハットトリックを決められない。
俺は次に、相手ゴール付近での混戦の最中に、ゴールから離れてボール目掛けて特攻した。
「えぇえええ! レオナルドが暴挙に出た! いや……あ! あぁあああ! ゴールです! レオナルド、フォワードのマッテオを張り倒し、ゴールを決めました!」
マッテオでもゴールは決められただろうが、子供の為だ。許せ。
あとはもう一回、オウンゴールを決めればOK。交代しても、それで3得点となる。
俺は次にボールをキャッチした時、振り向き様にゴール目掛けて蹴り込む――その間際、マッテオのドロップキックを後頭部に喰らい、そのままノックダウンして病院に運ばれた。
目覚めると病室で、隣にはマルコがいた。
「すまないマルコ。約束は果たせなかった」
「いや、ハットトリックは決まったよ。レオナルドが倒れて、それでゴールを揺らしたんだ。だから手術は受けるよ。ACミラソが勝てて嬉しい」