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人生リトライ。  作者: 丸井ヒロユキ
少年期編
7/7

?? クズの話

遅くなってしまい申し訳ございません!!

すっごく短いですが一応生存報告的に……!



モーターの音と紫煙。

自分の敷布団を囲うフローリングだったものの上には乱雑に脱ぎ捨てられた衣服と中身のないペットボトル、菓子類の空き箱が転がっている。

カーテンを締め切って太陽光の入らないその部屋では今が日中なのか、それとも日の沈んだ深夜なのか。それすらも確かめる術を持たなかった。

カチャカチャとPSのコントローラーを弄る音が響いて、モニターから発せられるブルーライトが無精髭の目立つ男の姿を薄ぼんやりと映し出す。

「……激ロー激ロー。やりきれよ野良…………クソっ…使えねぇ……死ねよゴミ野良が……」


「使えねぇな…お前ほんと。死ねば」


自らの発した言葉で数ヶ月前自分向けて呟かれた言葉を思い出す。

目の前のモニターには大きく部隊全滅と表示されていた。

「あつっ」

人差し指と中指の間に鋭い痛みを感じてコントローラーを手放してしまった。一体何がと思い手元を見れば、いつの間にかフィルター付近に達していたアメスピの火元が自分の指を焼いたらしい。

コントローラーと共に床に落とした吸殻を拾って灰皿に押付ける。結局ゲームに熱中してこのタバコは半分も吸っていなかったように思う。

「……勿体ねぇな」

ボソッと呟きながら1本取りだしてまた火をつける。燻る紫煙を眺めつつさっきの吸殻を思い出す。

あの吸殻と今の自分はどこか似ている。

火をつけるだけつけて対した活躍もせずに無駄になって、最終的に誰かを傷つけて落ちていく。

誰から見ても無駄。

何かを頑張りたくて、だけど才能もなくて、ろくな努力もせずに逃げ帰って当たるだけ当たって傷つけて。気づいた時には落ちぶれてしまった。


あの吸殻はきっと俺だ。


この部屋に閉じこもるようになって一体どれだけの月日が経過したのだろうか。

ネット通販なんてものが普及した今の時代ではタバコですら家に届く。年齢確認なんてのもあってない様なものなのだから最近の未成年は楽なもんだろう。

軽く火傷になったらしい指の間を擦り合わせながら短くなったタバコを吸いきって灰皿に押付けた。昔ならヤニが頭に回ってどこかボヤボヤとした独特の気分にでもなれたが近頃は連続で吸っても薄れてしまった。

一つ気づく事に時間の流れを感じて自分が無駄にしている今という現状を突き付けられた気分になる。そう考えると吐き気がした。

これを自由と呼ぶならその通りかもしれない。だけどそんな前向きな考えが出来る頭をしていたら俺は今こんな部屋に閉じこもっちゃいない。前向きな自分の未来なんて想像できた頃はもう遠く昔になってしまったのだから。


今ライターに残ったオイルを布団にでもぶちまけてそこに火をつければ火に巻かれて死ぬ事も出来るだろうか。死ねばこんな俺を迎えてくれた母替わりの彼女はどう思うのだろう。悲しんでくれるだろうか。それともやっと負担が消えたと喜んでくれるだろうか。口もきけないほど衰弱した優しい老婆は薄れた意識で何を思うのだろうか。


遠く離れた土地で新しい命を育てている父は今の俺をどう思っているのだろうか。


いまの俺は。



本当に生きていていいのだろうか。



使い古したPSの電源を落として敷きっぱなしの布団に身を委ねる。いつもなら息子を可愛がるタイミングだがどうにもそんな気分にはなれなかった。


目を瞑って、心を閉ざして、ごちゃごちゃと渦巻く思考を頭の中の引き出しに無理矢理押し込む。


どうか


どうか次に目を覚ました時。


全てが夢でありますように。



クズは震えた子供のように縮こまって息を潜めた。

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