67.それぞれの思い…
ルージュを、離から連れ出したランドルはルージュに自分の上着をかけて抱き抱えたまま離れの外へと出た…
離れの直ぐ側にあるベンチへとルージュをゆっくりと下ろした。
「ルー大丈夫か?」
ランドルは、下ろしたルージュの横へと腰を下ろしてルージュへと心配そうな表情で尋ねた。
「はい…大丈夫です…ラン様が助けに来て下さったので。」
ルージュは、震える中懸命に笑顔を作りながら応えた。
「無理に笑わなくてもいいのだ…こんな目に遭って怖くない者などいない…」
ランドルは、健気なルージュを見て拳を握りしめながら切なそうな表情を浮かべて言った。
そんなランドルの言葉に、ルージュは笑顔から急に涙を目に浮かべてその涙が頬を流れた。
一度涙が溢れるとポロポロと涙を流したのだった。
そんなルージュの姿など今まで見たかった事がなかったランドルは、何も言わずにルージュを優しく抱きしめた。
しばらく、お互い言葉を発する事なく優しく抱きしめ合ったのだった…
ルージュが、少し落ち着いたのか口を開いた。
「ラン様…お怪我はありませんか?殿下が、私を襲った男にラン様を襲わせると言っていたのですが…」
ルージュは、ランドルから体を少し離し心配そうな表情を浮かべながらランドルへと尋ねた。
「あぁ…確かにルーの事を襲った男が私を襲ってきたよ…その手のプロの者の様だったが、私も王国軍の大佐だ。そう簡単には負けないさ。それに、ルーの為なら私は無敵だぞ?」
ランドルは、ルージュの頭を優しく撫でながら少し微笑みを浮かべて言った。
「やはり…襲われたのですね。ですが…本当にラン様の身に何もなくて良かったです…殿下からその事を聞いた時…怖くてたまりませんでした…」
ルージュは、少し俯きながらランドルへと言った。
「私こそ、ルーの身に何かあったかと思うと気がきではなかったのだ…その…ルーの洋服が破かれていたが…もしかして…殿下に…」
ランドルは、不安そうな表情を浮かべながらルージュへと言った。
「いっ…いえ…大丈夫です。殿下には何もされていません。危ない状況でしたがラン様が来て下さったので大丈夫でした。ラン様に触れられるのはとても幸せな気持ちになりますが、殿下に触れられそうになった時は怖くて怖くてたまりませんでした…本当にあの時にラン様が来てくれて良かったです。」
ルージュは、慌ててランドルへと言うとランドルの服をキュッと掴みながら言った。
「そうか…本当に怖い思いをしたのだな…私は殿下を許せない…ルーをこんな目にあわせて許せる訳がない…」
ランドルは、ルージュの話を聞き唇をギュっと噛み締めながら悔しそうに言った。
「殿下は…隣国との戦いの帰りにラン様の命を狙ったのは自分だと仰ってました…もしや、ラン様は気づいておられたのですか…?」
ルージュは、ふと何故自分がサミエルといたのかが分かったのかを不思議に思いランドルへと尋ねた。
「……。ああ…確信を持っていた訳ではないがな…だから誰にも言っていなかったのだ。確信を持てないのに報告などすると王室に大混乱を巻き起こしかねんからな…しかし、ダース団男爵親子の件、私を見る殿下の目、ルーを見る殿下の目…そして、今回私とルーを襲った男から聞き出した依頼主の特徴を聞いた時に殿下で間違いないと確信へ変わり急ぎハミエル殿下の元へ訪れたのだ…」
ランドルは、真剣な表情を浮かべながらルージュへと説明したのだった。
「そうだったのですか…」
ルージュは、ランドルの説明を聞くとどこか切なそうな何とも言えない表情で言った。
「今回の件は、王室を大きく揺らがす事となるだろう…それに、お義父上にもこの事は報告せねばならない。もちろん、被害に遭ったルーも王室へと出向き話をしなければならなくなると思う。」
ランドルは、困った様な険しい様な表情を浮かべながらルージュへと言った。
「やはり…ただ事では済みませんよね…きっと、今…ハミエルも辛い思いをしていると思います…」
ルージュは、寂しそうな表情を浮かべながら言った。
「そうだな…ハミエル殿下も先程の光景を見るまではどこか信じたくないという気持ちがあっただろうに…目の当たりにしただけにショックは大きだろうな…」
ランドルは、ハミエルの事を思うとやるせないという様な表情を浮かべながら言った。
その時、ハミエルが離から出てきた。
「オパール公爵…ルージュ…この度は、兄上がとんでもない事をしでかしてしまい申し訳なかった…兄上の分まで謝る…」
ハミエルは、ルージュとランドルの元まで来ると二人へ頭を下げながら謝った。
「ハミエル殿下!」
「ハミエル!!」
ルージュとランドルは、そんなハミエルを見て同時に言った。
「ハミエル…頭をあげてちょうだい…ハミエルが謝る事ではないわ。あなただって辛いはずよ…」
ルージュは、慌ててハミエルへと切ない表情を浮かべて言った。
「いや…兄上は許されない事をしてしまったのだ…私が辛いなど言ってる場合ではないのだよ…」
ハミエルは、悔しそうな悲しそうな切なそうな表情で言った。
「ハミエル殿下…」
ランドルが、そんなハミエルを見て言った。
「一先ず…馬車を用意するからオパール公爵邸へと戻るといい…二人共まずは体を休めてくれ…おって王宮から連絡がいくと思うがその際は、連絡をくれると助かるよ…」
ハミエルが、二人へと力なく言った。
「はい…ありがとうございます。連絡が来た際にはきちんと協力させて頂きます。」
ランドルが、礼をしながらハミエルにお礼を言った。
「ハミエルありがとう…あなたにも迷惑をかけてしまってごめんなさいね…」
ルージュは、礼を言うと申し訳なさそうに謝った。
「ルージュが謝る事など何もないさ…」
ハミエルは、精一杯平常心を保ちながら言った。
そして、ハミエルが用意してくれた馬車に二人は乗り込みオパール公爵邸へと向かったのだった。
馬車がオパール公爵邸へ到着すると、予定よりも早く帰宅した二人に使用人達は驚いた。
そして、二人の様子を見て何かあったと察したグレイがすぐさま対応したのだった。
そして、ルージュはエミーへ自室までついて来てもらい湯浴みをしてからベッドへと入り体を休めたのだった。
ルージュは、オパール公爵邸へ戻ってきた安心感からかすぐに眠りについてしまったのだった。
ルージュがどのくらい眠ってしまったのかわからないが、一階から物凄い剣幕で話している声が聞こえてルージュは目を覚ましたのだった。
ルージュは、何かあったのかと思いベッドから出て急ぎ一階へとおりたのだった。
「おっ…お父様?!お兄様?!」
ルージュが、驚いた表情で言った。
物凄い剣幕で話していたのは、ルージュの父であるディーンだった。
ディーンと共に、兄のカイルとアイルもいたのだった。
「「ルージュ!!」」
ルージュが声をかけると、三人は同時にルージュの名前を呼んだ。
そして、すぐさまルージュの元へと駆け寄った。
「ルージュ!どこも怪我などしてないか?大丈夫なのか?」
ディーンは、焦った様な表情でルージュへと尋ねた。
「えっ?ええ…大丈夫ですわ、お父様。一先ず大丈夫ですので少し落ち着いて下さい。」
ルージュは、ディーンの勢いに驚き言った。
「これが…どう落ち着いていられるのだ!!皇太子め…私の大切な娘によくも……」
ディーンは、怒りを最大限露わにしながら言った。
「お父様!!本当に一旦落ち着いて下さい。」
ルージュは、興奮気味のディーンへと少し声を張り言った。
すると、ルージュは頭が少しくらついたのか体がふらっとなった。
「「ルージュ!!」」
そんなルージュを見た、ディーン達は三人でルージュを支えた。
「ルージュ大丈夫か?」
カイルが心配そうな表情でルージュへと言った。
「ありがとうございます…カイルお兄様…大丈夫ですわ。」
ルージュは、カイルへと言った。
「ルージュ、横になった方がいい…」
アイルも、心配そうな表情でルージュへと言った。
そして、ルージュはもう一度自室に戻りベッドへと横になったのだった。
その後も、ディーン達の怒りはなかなかおさまらなかったがランドルと話をした事で少し落ち着いた様だった。
その日は、ルージュの事を心配している三人の事を考えランドルは三人にオパール公爵邸へと泊まって貰ったのだった………
ご覧頂きありがとうございます★
※休日は、更新が疎らになってしまいますが出来るだけ更新出来たらなと思ってますので更新後引き続き読んで頂けたら光栄です✧◝(⁰▿⁰)◜✧




