61.新婚旅行
ルージュとランドルの新婚旅行の行き先は、ルージュの父であるディーンから教えでもらった場所に決まった。
その場所は、ディーンとルージュの母であるアンジュが新婚旅行で行った場所だった。
二人が新婚旅行へ行く日があっという間に訪れた。
「では…行ってくる。留守を頼んだ。」
ランドルが、玄関口でグレイへと言った。
「はい。お気をつけていってらっしゃいませ。こちらの事はお任せくださいませ。」
グレイは、しっかりとランドルへと応えた。
今回の新婚旅行は、ランドルとルージュ二人だけで行く事にしたのでルージュの侍女のエミーは留守番組だった。
ルージュとランドルは、使用人達に見送られ新婚旅行へと旅立ったのだった…
目的地にあと少しで着くというところで、馬車が止まった。
そこからは、目的地まで馬車を降りて馬に乗り換えて行く予定を組んでいたのだ。
ランドルが、ルージュの乗馬姿を見てみたいという一声から決まった事だった。
二人は、馬に乗り換えてゆっくりと乗馬の時間を楽しむように目的地へと向かった。
「ルーは、本当に乗馬が出来るのだな…驚く程に慣れているな…」
ランドルは、馬に乗っているルージュに驚きながら言った。
「そうですね…慣れているといえば慣れていますね…乗馬に関してはお父様にもお兄様方にも褒めて頂いていましたので。」
ルージュは、笑みを浮かべながらランドルへと応えた。
「お義父上は、よく女の子に乗馬を教えてくれたな…」
ランドルは、不思議そうに言った。
「最初は、乗馬をやりたいと言うと酷く反対されたました…しかし、ふふ…私があまりにもしつこいのでお父様が折れてくれたのです…」
ルージュは、その時の事を思い出す様にくすくすと微笑みながら応えた。
「はは…お義父上も、カイルもアイルもルーには弱そうだからな…」
ランドルは、笑いながら言った。
「本当に、お父様やお兄様たちには色々と無理を沢山言いました。ですが、今こうして私が幸せな生活を送っている事を本当に喜んでくれています。皆、ラン様にはとても感謝していますわ。」
ルージュは、にこりと微笑みながら言った。
(本当に、お父様達には今まで沢山のわがままを言ったわね…特に前世の記憶が蘇ってからは平凡ライフを送るために身に着けておいた方がいい事は全て身に着け様としていたからな…それでも、何だかんだ言ってお父様達は優しくいつもわがまま聞いてくれていたものね…殿下との婚約破棄で気を揉ませる様な事になってしまったけどこうしてラン様との生活を送っている事で安心させる事が出来て良かったわ…)
ルージュは、ランドルと話をしながらそんな事をふと考えていたのだった。
そうこうしていると、二人は目的地まで到着した。
「ラン様、あの辺りに馬を繋いでピクニックしましょう。」
ルージュが、いい場所を見つけたのか指差しながらランドルへ言った。
「あぁ。そうしよう…」
ランドルは応えた。
そして、二人はルージュの指差した方へと向かった。
馬の手綱を木に結ぶと、ルージュは木の下に敷物を敷いて持参したお弁当を広げた。
お弁当は、料理長のサンが朝早くから腕を振るって作ってくれていたのだった。
二人は、穏やかな空気が流れる中でお弁当を食べながら和気あいあいとしていた。
「お義父上が気に入っている場所だけあるな…とてもいい所だな…元々は、ルーのご両親が気に入って通っていた場所に娘であるルーが私と来ている…いつか、私とルーの子供も一緒にこの場所へと連れて来たいものだな…」
ランドルは、心地よい風を感じながら幸せそうな笑みを浮かべながら言った。
「本当に不思議な感覚です…お父様とお母様も今の私達の様にお弁当を食べながら沢山の話をして時間を過ごされたのでしょうね…そんな場所に将来子供も連れてこれたら本当に楽しいし嬉しい気持ちになるでしょうね…ですが、私…子供を産むという事に不安があるのです…」
ルージュは、ランドルの言葉を聞き遠くの方を見つめながら少し笑みを浮かべながら言ったが急に不安そうな表情を浮かべて言った。
「お義母上の事か?」
ランドルは、ルージュへと尋ねた。
「はい…私もお母様と同じ様になってしまわないかと不安になる時があるのです…お母様は私を命がけで産んでくださいました…ですが、私はお母様との時間を過ごすことが叶いませんでした…子供を助けるか、母親を助けるかという選択が迫られた時に私は間違った判断をしてしまわないかと思うのです…」
ルージュは、不安でどこか切なそうな表情を浮かべながらランドルへ言った。
「ルー…心配する事や不安になる事などない!母の命、子供の命の選択などしなくてもよい!私が必ずどちらも助かる様に全力を尽くすからな。ルーは、ただ自分と子供の事だけを考えて私を信じて出産に挑めばよいのだ。私が必ずルーも子も守るからな。」
ランドルは、自信満々に胸を張り満面の笑みでルージュへと言った。
「ラン様は…どうしてそんなにも嬉しい言葉をかけていとも簡単に私を安心させるのですか?ラン様にそんな事を言われると絶対に守ってくれるとしか思えなくなっていますよ…」
ルージュは、目に涙を浮かべながら微笑みランドルへと言った。
「当たり前だ。大切なルーと私とルーの宝物を私が守らないわけないであろう?」
ランドルは、ニヤリと笑いながら自信満々に言った。
「はい…そうですね。いつでもラン様は私を守ってくださいますものね。本当に私には勿体ない旦那様ですわ…」
ルージュは、零れそうな涙を拭きながら笑顔でランドルへ言った。
「それは、私の台詞だ。ルーは私には勿体なさすぎる妻だ…本当にルーを妻に出来て、こうして二人で心地よい風を感じながら将来の私達の子供の話をしているとは…何とも幸せな一時だ…私とルーの子供なら何人でも欲しいものだな…」
ランドルは、幸せそうな満面の笑みを浮かべながらルージュへと言った。
「本当に…幸せな一時です…こうしてラン様とここへ来れて良かったです…ラン様との結婚が決まってから色々とありましたけどこうして隣にラン様が居てくれる事に感謝しなければなりませんね…」
ルージュも、幸せそうな笑みを浮かべながらランドルへと言った。
ランドルは、そんなルージュを見てたまらずルージュにキスをした。
「ラン様?!」
急にキスをされたルージュは、驚きながら言った。
「すまない…ついルーが可愛くてな…ははは…」
ランドルは、笑って誤魔化しながら言った。
そんなランドルにつられてルージュも笑ったのだった。
「新婚旅行、二人で素敵な思い出を沢山作りましょうね。」
ルージュが、笑顔でランドルへと言った。
「あぁ。将来子供達に私達の新婚旅行の話をしてやりたいからな…もしかすると…今日その子が出来るかもしれないからな…」
ランドルは、自分で言っておいて耳まで赤くしていたのだった。
「もう…ラン様ったら…恥ずかしいですわ…」
ルージュも、ランドルにつられて頬を赤らめながら恥ずかしそうに言った。
そして、二人は顔を見合って笑ったのだった……




