60.夫婦の愛と疑念〜sideランドル〜
私は、ルーの献身的な看病と自分の回復力の高さのお陰もあり随分と体調が良くなった。
傷の方も抜糸が終わった。
体力の方もほぼ元通りといっても過言ではなかった。
邸へと戻って来た日から、ルーは私の体調を気遣ってか私の体調が良くなるまでは寝室を別々にしようと提案してきた。
しかし、私はそんな事は絶対にありえないと思い全力で拒否をした。
ルーは、困った表情をしていたが私は一歩も引かなかった。
その後も変わらず、二人で同じベッドで眠った。
ルーは、私の傷に障らない様に少し離れて寝るもんだから私はルーが寝たのを見計らい自分からルーに近づきくっついて寝たのだった。
朝になると、ルーが毎朝慌てて私が近くにいるものだから傷口を痛めていないかと心配してきたのだった。
私は、そんなルーが可愛くて愛おしくてたまらなかった。
洞窟で、ルーの私に対する気持ちを聞いてからルーに触れたいという気持ちが抑えられなくなっていたのだ。
体調も傷もすっかり良くなった私を見て、ルーは心底ホッとした様な表情を浮かべながらが嬉しそうに良かったと言った。
それだけでも愛おしくてたまらないというのに、更にルーは看病している間は私の側にいられるからと照れた様に言うのだ…
本当に、ルーは私の心臓を何度止める気だ!と思うほど可愛い事ばかり言うので困ったものだった。
私は、そんなルーについ触れたくて仕方ない気持ちを抑えていると言葉にしてしまったのだった。
私は、思わず言ってしまった言葉を訂正しようとしたその時…
ルーの口から『抑えなくてもいい』という言葉が出たのだ。
私は、思わずルーがそんな事を言うから動揺してしまった。
ルーは、自分の言っている意味が分かっているのか?!と思いルーに声をかけた。
すると、ルーは頷きながら『はい…』と応えたのだ。
私は、その瞬間ルーに触れたいという気持ちが最高潮に達してしまいルーへと近づきそっとキスをした。
キスをされたルーは、くすくすと笑みを溢しながら私とのキスは結婚式以来だと言った。
確かにそうだった。
結婚式後すぐに軍の出動があった上に、私の身に起こった例の事件だ…
本当なら、戦いから帰還した際にただいまのキスをしようと思っていたのだ。
しかし、いざ帰ってきた私はそれどころではなかった為に思っていた事が実行出来ずにいた。
今、ようやく実行出来たのだ。
私は、ルーにこれからは毎日出来るではないかと言った。
すると、ルーは優しく微笑みながら応えた。
そして、私とお互い体温を感じる事が出来て幸せだと言ってくれた。
ルーの、気持ちを知ってから今まで以上にルーの言葉が嬉しくて仕方なかった。
そして、私はルーが愛おしくてたまらなくなり心の底からルーに愛していると囁いた。
何度言っても足りないくらいルーを愛しているからだ…
ルーも、私にも愛していると言ってくれた。
私は、そんなルーに優しく触れた。
私は、ルーを不安にさせない様に優しくすると声をかけた。
ルーは、優しく頷きながら応えた。
正直、私も初めての行為の為内心は上手く出来るかなど不安で仕方なかった。
しかし、年上である私がしっかりリードしなければと思い私の全身全霊の気持ちを込めてルーの身体に触れていったのだ。
ルーの身体は、この世のものとは思えないほど美くしかった。
貪り付きたいという気持ちに襲われたが、グッと堪えて優しく優しく身体に触れた。
本当に、ルーの身体は透き通る様な綺麗で触り心地の良い柔らかさだった。
こんなにも綺麗なルーの姿を見たキャシー達には複雑な気持ちになった。
しかし、私が触れる度にピクリと動く身体も漏れる吐息も全て私がおりなしているのだと思うと優越感と幸福感が同時に押し寄せてきた。
そして、私はゆっくりとルーの中へと入ったのだ。
ようやく、私とルーはこの日心も身体も一つになったのだった。
翌日、朝目覚めた私とルーはお互い恥ずかしながらも良い朝を迎えた。
身体も一つになったことで今まで以上にルーを近くに感じれる事が出来た。
昨夜の余韻に浸っているとグレイがやって来て、王宮から私宛の手紙が届いた事を伝えに来た。
予想はしていたが、手紙の内容は今回の件に関してだった。
私は、手紙を読み何故だか今回は体調がまだ万全ではないが王宮へと足を運び報告をすべきだと思ったのだ。
そして、私は二日後に王宮へ行くと返事の手紙を出したのだった。
そして、王宮へと行く日ルーを先に領地へ向かわせる為に出かけさせた。
(何故だろう…王宮からの手紙を見た時に、何故だかルーを皇太子殿下に会わせたくないと思ってしまった。心も身体も一つになったから元婚約者である皇太子殿下とルーを会わせるのが嫌だと思うのか…?!)
私は、ルーが乗った馬車を見つめながら考えていた。
そして、私も王宮へと向かった。
王宮へ着くと応接室へと通された。
応接室には、皇太子殿下とハミエル殿下がおられた。
早速、殿下達に今回の件を詳しく説明した。
だが、実は私は一つだけ報告しなかった事があった。
私に矢を放った人物はよくわからなかったと言ったが、実は私は崖から落ちる瞬間に矢を放った人物を見たのだ。
実際には、目が霞んでいた為にぼんやりとしか見えていなかったがぼんやりと見えたその姿が何故だか皇太子殿下に見えたのだった。
だが、殿下が私を狙う理由も見当たらなかった上に万が一、国の皇太子がその様は事をしたものなら国の大問題になるからだ…
殿下を探して後を追っていたせいもあって、その人物が殿下に見えたのかもしれないと思っていたし確実にそうだという訳でもないので迂闊に発言出来なかったのだ。
しかし、殿下の私を見る目は何故だか憎しみが込められている様に感じたのだ。
前回、我が邸に訪問された際もそうだったがその目が疑問だったのだ。
なぜ、私をその様な表情で見るのだろうかと…
私が、ルーと結婚した事に理由があるのかとも一瞬考えたがそれもおかしな話だと思ったのだ。
ルーは、元々皇太子妃になる予定だったが殿下自らがルーを捨てたのだから…
では、何故その様な表情をされるのかがわからないままだったがその様な事を気にしていても仕方がないと思ったのだった。
それにハミエル殿下のお心遣いで、休暇が当初の期間より長く取れる事になったのでよりルーとの新婚旅行を楽しめると思い喜びが湧き上がってきたのですぐに不思議に思っていた事も飛んだのだった…
まさか…先に、私の考えが気のせいでなかった事を思い知らされるなどこの時の私はルーとの時間が沢山取れる喜びに浸っていたので思ってもみなかったのだった………
 




