59.もっとも邪魔な存在〜sideサミエル〜
予定通り敵軍との戦いの日がやって来た。
私は、王国軍の指揮を取ることになっていた。
敵軍との戦いは、当初から予想されていた通り我が王国軍が圧倒的に有利な戦いであった。
勝利は目に見えている戦いであった。
予想通りに、我が王国軍の有利な戦いの運びとなった。
その為、我が軍の休息を取る時間を多めに取ることが出来た。
有利な戦いとはいえ気は抜けないので、戦いの指揮を取る私は気力体力共に削られるのは確かだった。
私は、ハミエルと共に軍の作戦会議をする為のテントで作戦会議を終え休息をとっていた。
私は、少し外の風が浴びたいとテントの外へと出た。
すると、オパール公爵が仲間や部隊の部下達と休息を取っており何やら話しが盛り上がっている様だった。
私は、少しオパール公爵達が休息を取っていると場へと近づき耳を傾けた。
オパール公爵達は、ルージュの話をしていた。
どうやら、ルージュからオパール公爵へ手紙の返信が届いた様だった。
(いつの間に、ルージュに手紙を送っていたんだ…)
私はふとそんな事を思った。
そして、オパール公爵はルージュからの手紙を読むなり顔の表情が一気に緩んだ様だった。
そして、手紙が入っていた封筒の中かは写真の様な物を取り出して見た瞬間…
オパール公爵は、何とも言えない程の優しい表情で写真を見つめていた。
きっとルージュが写っている写真だろうと思った。
時期的に、結婚式の写真だろうと…
(私は、ルージュと写真など撮ったことがなければ手紙のやり取りなどもした事がなかった…ルージュとの婚約中に何度も王国軍として戦いに出たというのに…だが…私も出した事がなかったのだな…私は戦いに出ている間、王宮へといるルージュは自分の心配をしてくれているだろうかと何度も考えた事があったがそれを聞いたことなどなかったな…)
私は、オパール公爵達を見つめながらそんな事を思っていた。
(本当に…オパール公爵は私がルージュとやりたくても出来なかった事をしているのだな…しかし…そんな事が出来るのも今日までだな…)
私は、オパール公爵を見つめながら考えていた…
私の中におる黒い感情はオパール公爵を見るたびに増していっていたのだ…
それから、我が王国軍は敵軍に勝利をした。
戦いを終えた我が王国軍は、時間を置くことなく国へと戻る支度をした。
マーク大佐の部隊はハミエルと…
オパール公爵の部隊は私と共に国まで別れて王宮を目指すこととなった。
そして、国までの帰り道に急斜がきつい崖があるのだ。
その道は危ないからと、作戦会議中からその道は通らず帰還する予定としていた。
しかし…
私は、逆にその危険な場所を使いある計画を自分の中で立てていたのだ。
それは、その崖からオパール公爵を落とす事だった…
その崖から、落ちるとまず助からないと知っていたのだ。
万が一、落ちて助かったとしても落ちた先には流れの早い皮が流れているのだった。
その川に一歩でも足を入れてしまえば流れの早さに逆らえず下流まで流され最後は滝になっている所から落ちてしまうのだった。
そうなれば助からないと知っていたのだ。
そんな計画を、この戦いを期に実行しようと考えていたのだった。
私は、早速計画通りの動きをしたのだ。
私が、怪しい人影を見たからと崖がある方へと一人で向かったのだ…
そうすれば、必ず正義感の強いオパール公爵は一人で私を追いかけてくるだろうと踏んでいたのだ。
案の定、オパール公爵は私の後を追ってきた。
私は、馬から降りて馬の手綱をその場にあった木へと結び崖の方へと急いで向かった。
崖がある場所へ着くと木の陰へと身を潜めていた。
すると、そこへオパール公爵がやって来た。
オパール公爵は、私の名を呼んでいたが私が返事するわけもなくその場にいた。
すると、オパール公爵は私が崖から落ちた可能性を考えたのか崖の下を覗いていた。
その時、私は今だと思いあえて草を揺らし音を立てた。
すると、音を聞いたオパール公爵はこちらを振り返った。
その瞬間、私は構えていた矢をオパール公爵の心臓めがけて放った。
放った矢は、オパール公爵の胸ポケットのあたりに命中した。
そう…
私は、事前にこの場所へ弓矢を隠しておいたのだ。
この計画を思いついた時から…
そして、私の計画通りにオパール公爵へ矢を放つ事に成功した。
オパール公爵は、矢を射たれた拍子にバランスを崩し崖から落ちたのだった。
私は、急ぎオパール公爵の落ちた場所へと行き下を確認した。
既にオパール公爵の姿は見えず完全に崖下へと落ちたと確信したのだ。
(これで…これで…邪魔なオパール公爵は居なくなった。オパール公爵が死んだとなるとルージュはショックを受けて泣き崩れるかもしれないが、すぐに私がオパール公爵との離縁の手続きを行いもう一度ルージュを皇太子妃として迎えいれるとしよう…)
私は、崖下を見下ろしながらそんな事を考えていた。
その後、私は何食わぬ顔で軍の者達の元へと戻った。
そこにはハミエルも合流していてハミエルにオパール公爵の事を尋ねられたが遭遇していないと応えた。
そして、皆が心配する様に私も心配する素振りを見せたのだ。
その後、先に国へと戻り今回の事を父上に報告する事が優先とされオパール公爵の事は置いといて急ぎ国へと戻った。
国へ戻ると、戦いの件を父上に報告するとマーク大佐とルージュの兄であるカイルがオパール公爵の捜索許可が欲しいと願い出た。
私は、そうなるだろうと想定していたので父上が捜索許可を出しても問題などなかった。
そして、それからオパール公爵の事をルージュへと話をする為にオパール公爵邸を訪れた。
公爵邸へ到着すると、オパール公爵の帰りを待っていたルージュが出てきた。
とても、嬉しそうな表情で出てきたのだ。
(その様な表情…私には一度もしてくれた事などなかったな…)
私は、ルージュの表情を見て思った。
そして、そんなルージュの表情が私の言葉で一気に変わったのは言うまでなかった…
その後、ルージュは愕然とした表情のままだった。
しかし、オパール公爵の捜索をすると聞くと少し表情が落ち着いた。
(ルージュ…残念だがオパール公爵はもう既に息絶えているだろう…)
私は、ルージュの表情を見ながら思った。
その後、私とハミエル、マーク大佐とカイルでオパール公爵の捜索へと繰り出した。
だが、もちろんオパール公爵は見つかる事はなかった…。
落ちたと思われる現場には大量の血の跡も残っていたのだ。
(あぁ…オパール公爵は川に流されたのだな…しかし、その顔を見たくはなかったから好都合だ…)
私は、血痕を見つめながら思った。
その後、ルージュへ報告を済ませま。
ルージュは、愕然とした表情のまま一人で部屋へと籠もってしまった…
私達四人は、それぞれ帰宅する事にしたのだった。
私は、王宮へ戻るなりルージュの離縁の手続きをする準備に取り掛かった。
少しでも早くオパール公爵夫人ではなくしたかったからだ…
しかし…翌日予想外の事態が起こったのだ…
何と、オパール公爵が生きていたのだ。
マーク大佐が王宮まで報告にやって来たのだ…
酷い負傷をしていて、一時は危なかった様だが生きていたのだ。
それも、ルージュがオパール公爵の居場所を突き止めたというのだ…
(何故…生きているのだ…私は確かに矢を放ったし、崖から落ちるところも見た…それに血痕も…なのに何故…)
私は、報告を聞いてから頭の中でそんな考えがグルグルと回っていた。
オパール公爵が生きていると分かった父上は、今回の件についてハミエルへと任せると言ったが私は自ら自分に任せて欲しいと懇願した。
父上は、渋い表情をしていた。
私の身勝手な行動の事を考えれば仕方のない事だがそこは譲れなかった。
自分の目で本当にオパール公爵が生きているのかを確かめたいのもあったが、万が一矢を放った者が私だと見られていてはまずいと思ったからだ…
結局、父上は渋々許可をして下さった。
私は、ルージュの顔を見たいという気持ちがあったのでオパール公爵の元へ足を運ぼうと考えていたが、オパール公爵は王宮へと足を運ぶとの手紙が届いたのだ。
予定通り、オパール公爵が王宮へと足を運ん出来た。
私は、オパール公爵が生きていると思い知らせれたと同時にルージュを手に入れる計画が失敗に終わった事を理解した。
その後、オパール公爵の話を聞くとどうやら矢を放たれたが放った者の顔は認識出来なかった様なのでそこは正直ホッした。
しかし、矢を撃たれても無事だったのはルージュの写真を入れていたという手帳のお陰だった様だ…
ハミエルに、ルージュとの関係が良好な様だと言われ幸せそうな表情を浮かべていた。
ハミエルが、私に気づきすぐに話を切ろうとした。
私はハミエルに気にするなと言ったが、既に私はオパール公爵に対してどんどん黒い感情が溢れていくばかりだった。
日に日にルージュとの仲を深めていっているのだろうと私はそれをひしひしと感じたのだ…
一体どうすればオパール公爵の手からルージュを取り戻せるのかをひたらすら考えていたのだった…
(もう…無理にでもルージュを閉じ込めてしまおうか…)
私は、頭の中でそんな事を考えてしまっていたのだった…




