58.ランドルの王宮訪問
ランドルが、王宮へと出向く日が訪れた。
「ラン様、それでは私は一足先に出ますね。ラン様もお気をつけて王宮へと行ってくださいね。」
ルージュが、支度を済ませて出かける前にランドルへと言った。
「あぁ。ルーも気をつけて行くのだぞ。」
ランドルは、ルージュへと言った。
「はい。」
ルージュは返事をすると、エミーと共に馬車へと乗り込み領地へと向かった。
ルージュが、無事に出かけたのを確認したランドルは自分も王宮へと向かう支度をしたのだった。
ランドルが王宮へと到着した。
ランドルは、王宮の応接室へと通された。
応接室には、サミエルとハミエルが居た。
「オパール公爵よく来てくれた。かけてくれ…」
サミエルが、ランドルへと言った。
「この度は、こちらの都合に合わせて頂き感謝致します…」
ランドルが、サミエルとハミエルへと深く頭を下げながら言った。
そして、ランドルは椅子へと腰掛けた。
「いや…オパール公爵の体調も万全ではないだろうにわざわざこちらへ出向いてくれた事感謝する…」
ハミエルが、ランドルへと言った。
「いえ…妻の看病の甲斐もありまして私はすっかり体調も良くなりましたので問題ありません…お気遣いありがとうございます。」
ランドルがハミエルへと応えた。
「ルージュの看病ほど、オパール公爵に効き目があるものはないな…はは…」
ハミエルは、思わず笑いながらランドルへと言った。
ハミエルの横にあるサミエルは、まったく笑う素振りなど見せることななかった…。
そんなサミエルが口を開いた。
「それでは…本題に入る…今回のオパール公爵が王国への帰還中に行方不明になった件だが…マーク大佐の報告によると、オパール公爵が落ちる崖から落ちる前に人影を見たとか…それに、その人影に矢を放たれたと聞いたのだが事実だろうか?」
サミエルは、真剣な表情でランドルへと尋ねた。
「はい。マーク大佐のご報告通りでございます…私は、あの日人影を見たという皇太子殿下の後を追って崖がある方へと向かいました。しかし、殿下のお姿が見当たらなかったので崖の方も見てみようと思い崖へと近寄ったのです。その時でした…私の後ろから音がしたのです。私はすぐに後ろを振り返りました。しかし…振り返ったと同時に私に矢が放たれその矢が私の胸にと刺さったのです…その拍子に目が眩み体制を崩してしまい崖から落ちてしまったのです…」
ランドルは、サミエルとハミエルへと自分のその時に起きた状況を詳しく説明した。
「つまり…その物音がした先には何者かがいてその者が、オパール公爵に矢を放たっと?」
サミエルが、ランドルの話を聞きランドルへと尋ねた。
「はい…間違いないかと思います。」
ランドルは、真剣な表情で応えた。
「兄上が人影を見たという場所では熊しか見当たらなかった様ですが…オパール公爵の話ですとやはり本当に怪しい者がいた様ですね…」
ハミエルが、真剣な表情でサミエルへと言った。
「……。あぁ…その様だな…しかし、一体何者なのだろうな…敵国の者だとしたら皇太子である私を狙うはずだからな。オパール公爵だと知った上で狙ったのか…誰でもよいので狙ったのか…どちらにせよ矢を放った者を見つけるのは困難であろうな…」
サミエルは、何かを考える様な真剣な表情で言った。
「はい。その者を見つけるのは困難でしょう…下手に敵国へ問う事も困難ですし…」
ハミエルも、真剣な渋い表情を浮かべてサミエルへと言った。
「しかし…オパール公爵は、腕に酷い傷を負いそのせいで体調も悪化したと聞いていたが…胸に矢を放たれたというのに胸は大丈夫だったのか?」
ハミエルは、ふとランドルの話を思いだすかの様に不思議に思った事をランドルへと尋ねた。
「はい…それが…その時にたまたま私の胸ポケットにお守り代わりでもある手帳を入れていたのです…厚みがある手帳ですので矢が手帳に刺さりそこで矢を食い止めてくれた様で胸は無傷だったのです…」
ランドルは、ポケットから手帳を取り出した説明した。
「何と?!そんな事が?オパール公爵は運が良いのだな。お守り代わりなだけあるな。まさか、手帳にルージュの写真でも入れていたとかではないのか?はは…」
ハミエルは、驚きつつも笑いながらランドルへ冗談じみた事を言った。
ハミエルに言われたランドルは、顔を赤くした。
「まさか…本当にそうなのか?!」
ハミエルは、驚いた様にランドルへ尋ねた。
「……。はい…」
ランドルは、恥ずかしそうに返事をした。
「はは…冗談で言ったつもりが本当とは。オパール公爵の居場所を突き止めたのもルージュと聞いたが…ルージュとはいい夫婦関係を築いているようだね…」
ハミエルは、笑顔でランドルへと言った。
「はい…ルー…妻とはお陰様でいい関係を築けております…」
ランドルは、照れた様に顔を赤らめ言った。
「それは何よりだ…あっ…兄上申し訳ありません…つい話が過ぎました…」
ハミエルは、笑顔でランドルに言ったが横にいたサミエルに気づき咄嗟にサミエルへと言った。
「いや、構わないさ…私の身勝手な行動でルージュには色々と迷惑をかけたのだ…しかし、オパール公爵と結婚した事で上手くいっているのであれば良いことだからな…オパール公爵には感謝しなければな…」
サミエルは、ランドルを見ながら言った。
「その様なお言葉…光栄でございます…」
ランドルは、サミエルへと言った。
その場に、微妙な空気が流れた…
その空気を流すべくハミエルが口を開いた。
「そっ…そうだ。オパール公爵…元々、隣国との戦いが落ち着いたら休暇を取る予定だったと聞いた。そこで、療養も兼ねて休暇を少し長めに取るといい。父上にもその事は伝え許可を取ってあるのだ。軍の方の公務や執務も今は落ち着いているという報告も受けているしな…ルージュとの新婚旅行はこれからだろう?ゆっくり二人の時間を楽しむと良い。」
ハミエルが、場の空気を変えようとランドルへと言った。
「その様なお気遣い…感謝致します…ありがとうございます。」
ランドルは、一礼をしながらサミエルとハミエルへとお礼を言った。
「いや…今回の件は元々は私が一人で動いた事が原因でもあるからな…仕事の事は忘れしっかり休暇を過ごすと良い…」
サミエルが、ランドルへと言った。
「ありがとうございます…」
ランドルは再びお礼を言った。
「今回の件については、もう少し捜索はしてみるつもりではある…また何かわかった際はこちららオパール公爵へと話を聞くことがあるかもしれないがその時は協力をお願いしたい…」
サミエルが、ランドルへ言った。
「はい。畏まりました。」
ランドルは応えた。
こうして、ランドルはサミエルとハミエルへの報告を済ませたのだった…




