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55.誰よりも会いたかった存在〜sideランドル〜

どのくらい時間が経ったかわからないが、私は気を失っていた様だった。


私は、目開けて自分の状況を確認した。


下手に動かず状況を確認すると、どうやら私は崖の斜面に生えてる小さな木の上に落ちた様だった。

お陰で直接岩場に落ちる事がなかったので命拾いした様だった。


私は、ふと胸矢が刺さったことを思い出した。

崖から落ちた拍子に矢は胸から抜け落ちたみたいだった。


私は、自分の胸元を見た。

しかし、そこには胸ポケットに穴が空いているものの出血などはしていなかった。

よく考えれば矢が刺さったにしては痛みの感じ方が弱かったと思った。


胸ポケットを触ると、ポケットの中に何かが入っていた。

私は、ポケットの中から入っていた物を取り出した。

ポケットに入っていた物は、手帳だった…


『そうだ…昨夜、寝る時に手帳を胸ポケットに入れたのだ…ようやくルーに会えると思い、ルーへの愛おしい思いから昨日は手帳を胸ポケットに入れて眠りについたのだ…この手帳のお陰で矢が手帳で止まったのだな…』


私は、たまたま昨夜ルーに会える嬉しさから手帳を胸ポケットに移したのだ。


(ルーが私を守ってくれたのかもしれないな…)


私はそんな事を思った。


しかし、そんな思いも束の間崖から落ちて木に落ちるまでに負傷したのか腕に思い切り深く傷を負ってしまっていた。


傷がかなり深く出血が止まらずにいた。

私は、一先ず出血を止めなければと思い木からゆっくりと降りた。


木から降りた岩場の直ぐ側には、川が流れていた。

私は、傷口の出血を洗い流そうと川へと近寄った。


しかし…川に近づくと思いの外出血していたせいか立ちくらみに襲われ身体のバランスを崩し川へと落ちてしまったのだ。


川の流れは早く流されるがままの状態に陥ってしまった。

私は、何とか川から出なければ助かった命もすぐに奪われると思った。

流されている中、私は川の流れに沿って洞窟の様なものがある事に気づいた。


私は、必死に流れに逆らいその洞窟へと必死に泳いだ。

そして、どうにか洞窟へと辿り着く事が出来た。


しかし、洞窟に辿り着いた時にはかなりの出血と体力の消耗で起き上がる事すら出来なくなっていた。


私は一先ず、洞窟の一番奥へと入り込み横になった。

そして、私はいつの間にか眠りについてしまっていたのだ。


次に目を覚ました時には、陽がすっかり暮れて夜になっていた。

夜になっている事に気づいたと同時に腕に酷い痛みを感じた。


どうやら、負傷した腕の傷に汚れが入ったのか化膿し始めていた…


痛みが増し、発熱まで起こしている様だった。

傷口を手当てする物などある訳がなくただひたすら痛みに耐える事しか出来なかった…


食料もなく、助けを求める事も出来ない状況であった。

そんな時、私は腰につけていた小袋がある事に気づいた。


その小袋は、ルーが持たせてくれたドライフルーツや木の実が入ったものだった。


(そうだ…これはルーが私の為にと持たせてくれた物なので腰へとずっとつけていたのだ…)


私は、そんな事を思いながら小袋の中のドライフルーツを口の中へと入れた。


ルーの持たせてくれた、ドライフルーツと木の実のせいで空腹を満たすことが出来た。


しかし、傷口は悪化しているのを自覚していた。


気が朦朧とする中、私はルーの事を考えていた。


(ルー…きっと私の帰りを待っていてくれているだろう…私が帰って来ない事で不安で泣いているかもしれない。必ず無事に帰ると約束したのに…私はこんな所でへたる訳にはいかないというのに…だが、この様な場所に助けなど来るわけがない…ルーすまない…約束をしたのに約束を果たすことが出来ずにいる…ルー……ルー……ルーに会いたい…ルーに会ってただいまと言いたい……)


私は、傷口の痛みを感じる中…急に意識の朦朧さが増しながらそんな事を思っていた…

そして、私はいつの間にか気を失う様に眠りについていたのだった…


どれほど眠っていたのだろう…

意識が朦朧とする中、ルーの声が聞こえた気がしたのだった…


私は、いよいよ走馬灯でも見るのかと思った。

でなければ、ルーの声など聞こえるはずがないからだ…

 

その後、私はまた眠りについたのか気を失ったのか気づけば朝日が登っていたのだった。


私は、目が覚めると身体が軽くなっているのを感じた。

少し身体が休まったせいかと思い身体を起こそうとしたその時…自分の手に温かい何かを感じたのだ。


私は、何だ?!と思い自分の手を見てみるとそこにはルーが居たのだ。


私は、目の前の光景に思わず大きな声を出してしまった。


私の声で、眠っていたルーを起こしてしまった。


そこには確かにルーがいたのだ…


私は、あまりに信じられない目の前の光景に驚きを隠せずにルーに本当にこれは夢ではないのかと呟いた。


ルーは、微笑みながら夢ではないと言った。


本当の本当に、目の前は愛しのルーが居たのだ。


ルーは、私の事が心配で私を助けに来たと言った。


そして…ルーは私に恋をして私を好きだと言った。


私は、これは自分にとって都合のいい様に思っている妄想ではないかと思った。

しかし、妄想などではなかった。

ルーは、本当に私の目の前にいて私に恋をして私を好きだと思いを伝えてくれたのだ…


私は、それが現実だと知ると泣きそうになる程の喜びが襲ってきたのだ。


今まで、何度も何度も願ってきた願いと思いが今…叶ったのだから…


ルーが、私を好きだと言ってくれたのだから…


私は、そんな一生懸命に私を助けに来てくて…想いを伝えてくれたルーが愛おしくてたまらず思い切りルーを抱きしめた。

ルーも、私を抱きしめ返してくれた…


こんなにも満たされて、幸せで自分が生きてルーとこうして重い合い抱きしめ合っている事に言葉では表現出来ない程の気持ちを感じたのだった。


その後、ルーが危険な行動までして私の事を助けに来てくれた事を知った。

ルーの行動が、危険過ぎたので思わず私はムスっとしながらルーに強めの口調でそんな事をするなとは言ったが、当のルーはケロリとしていた。


まさか…ルーが剣術の他に乗馬までもこなすとは思ってもみなかった…


本当に、ルーにはどれだけ驚かされるのかとそれ以上怒る気にもなれなかったのだった。


それ程に、ルーの本気の思いが伝わってきたからだ…

私は、ルーが危険な行動をした事にムスっとなってしまった事よりもやはりルーが私の事を思い助けに来てくれて想いを伝えてくれた事の喜びの感情の方が買ってしまっていたのだった。


私は、ルーに今回こうなった事の経緯を説明した。


私が見た人影は分からないと言った。


しかし…私は、私が見た人影について信じられない人物が思い浮かんでいたのだ…

目がかすむ中で見えた人影の存在を…


ルーと、話をしているとカイルとマークが救出へ来てくれた。


どうやら、ルーがカイルへ言伝を残していた様だった。


私とルーは、無事に救出されてオパール公爵邸へと帰還したのだ。


グレイやアンジーを始めとした、使用人達がとても心配そうな表情で出迎えてくれた。

私が、無事に帰還した事にホッとしたのかグレイトアンジーを始めとした使用人達は、涙を浮かべながら私の無事を喜んでくれたのだった。



私は、負傷はしたものの無事にここへ帰ってこれた事を神に感謝した。


もう一度、ルーの元へと帰ることが出来たのだから…


気持ちが通じ合った今、私はルーと過ごす時間をこれからもっと大切にしようと改めて思ったのだった…

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