52.ランドルの帰還
カイルの声が聞こえたランドルとルージュは、顔を見合わせた。
そして……
「お兄様ーー!ここにいるわ!ラン様も一緒に居るわーー!」
ルージュは、大きな声で洞窟の入口から真上に向かって叫んだ。
「ルージュ!!そこに居るんだな!オパール大佐も一緒なのだな?!そこで待っていろ!すぐに助けてやるからな!」
カイルは、ルージュとランドルに聞こえる様に上から叫んだ。
「はい。お兄様…気をつけて下さいね!」
ルージュも、上にいるカイルに向けて叫んだ。
そして、しばらくすると縄を使ってカイルが下りてきて洞窟の中へとやって来た。
「ルージュ!!大佐!!」
カイルは、洞窟の中にいる二人の姿を見つけると声を張った。
「カイルお兄様!」
ルージュも言った。
「良かった…無事だったのだな…まったくルージュお前は…」
カイルが、ホッとした表情で言ったかと思えばムスッとした表情でルージュに言った。
「お叱りは後で受けると言ったでしょう?!今は、早くラン様を安全な所へ運ぶ事が優先ですわ!さぁ!お兄様、早くして下さい!」
ルージュは、フンッと鼻を鳴らす様な表情で言った。
「そっ…そうだな…すまない…では、私が大佐を連れて崖を登るから…」
カイルが言うと…
「私は、自分で登れますわ。ラン様をお願いしますね!」
ルージュは、カイルの話を遮り自信満々に言った。
「そうだよな…では、私が先に登るからついて来い!」
カイルは、苦笑いしながらルージュへと言った。
「お任せ下さい。」
ルージュは、自信満々に応えた。
「マーク大佐!今から私がオパール大佐を連れて崖を登るのでそれと同時にマーク大佐も上から縄を引き上げてください!」
カイルは、上にいるマークへと叫んだ。
「おう!任せておけ!では行くぞ!」
マークは、準備万端という様にカイルへと言った。
「オパール大佐、さぁ…私に掴まって下さい。」
カイルは、ランドルへと言った。
「カイル…すまないな…頼んだ。」
ランドルは、カイルへと掴まり言った。
「はい!任せてください。」
カイルは、笑顔でランドルへと応えた。
そして、カイルはランドルを連れて崖を登り始めて上からはマークが縄を引き上げたのだった。
ルージュは、その後をついて崖を登っていった。
そして、三人は無事に崖の上へと登る事が出来たのだった。
「ランドル!無事で良かった…本当に今回の事で寿命が縮むかと思う程心配したんだぞ…」
マークは、ランドルを見るなり心配そうな表情で言った。
「マーク…心配かけてすまなかった…」
ランドルは、ほんの少し微笑みながら言った。
「大佐は…こんな事で死ぬような方ではないと思っていました…本当に無事で何よりです…」
カイルは、嬉し泣きしてしまいそうな表情で言った。
「あぁ…カイルにも心配かけてすまなかった…」
ランドルは、カイルにも少し微笑みながら言った。
「ラン様の腕の傷の応急処置はしていますが、早くお医者様に診てもらった方がいいので急いで公爵邸へと戻りましょう。」
ルージュは、ランドルの事を気にしながら言った。
「そうだな…ルージュの言う通りだな。公爵邸へ急ぎ向かおう。」
カイルが、ルージュの言葉を聞き頷きながら言った。
「では、ランドルは俺が一緒に馬に乗せるよ。」
マークが、ランドルへと言った。
「すまないが…頼んだ。」
ランドルは、マークに言った。
「任せろ。」
マークは、笑顔でランドルへと言った。
そして、四人はランドルの身体に負担にならない程度の速度で馬を走らせて公爵邸へと向かった。
ようやく、公爵邸に到着すると玄関先ではグレイ達使用人がランドル達を心配して待っていた。
「旦那様…よくぞご無事で…」
グレイが、ランドルの姿を見るなり泣きそうな表情を浮かべて言った。
「本当に…ご無事で何よりです…」
続けてアンジーも、ランドルの姿を確認して言った。
「皆…心配かけてすまなかったな…」
ランドルは、フッと微笑みを浮かべながら言った。
「ルージュ様!」
エミーが、馬から降りて玄関先に向かってきたルージュを見て言った。
「エミー!」
ルージュは、エミーに気づき言った。
「お怪我などありませんか?!」
エミーは、ルージュの体を心配そうに見ながら尋ねた。
「心配してくれてありがとう。大丈夫よ。どこも怪我などしてないわ。勝手に抜け出して心配かけてごめんね…」
ルージュは、困った様な表情でエミーへと言った。
「本当にもぅ…ルージュ様にはいつも振り回せれてばかりですね…でも、怪我などなくご無事で何よりです…公爵様もお戻りになられて良かったですね。」
エミーは、困った表情をして微笑みながらルージュへと言った。
「ええ。ラン様が戻られて本当に良かったわ…ふふ…私の侍女は、エミー以外には無理ね。心臓がいくつあっても足りなさそうだなら。」
ルージュは、クスッと微笑みながらエミーへと言った。
「本当ですわ。」
エミーも、クスッと微笑みルージュへと言った。
ルージュ達が無事に戻ってきた事に、公爵邸の使用人達はホッとて笑みが戻ったのだった。
グレイが、既に医者を呼んでいたのでランドルはすぐに寝室へと連れて行かれ医者の診察を受けたのだった。
診察して貰った結果…
ルージュの素早い応急処置のお陰で、ランドルの腕の傷は化膿がおさまっていてすぐに縫うことが出来たのだった。
他には、体に軽い打撲が見られたもののその他は問題なさそうだった。
それを聞いて周りは、ホッとした表情になったのだった。
「ラン様、当分の間は体を休めて安静にしていて下さいね。私達が出来る範囲で出来る事などは補っていきますので。」
ルージュは、ランドルへと優しく言った。
「すまない…少し安静にしていればすぐに良くなると思うからそれまではお願いするよ…」
ランドルは、申し訳なさそうな表情で言った。
「私は、ラン様の妻ですよ?そのくらいの事などお任せ下さいですわ。」
ルージュは、優しく微笑みを浮かべながらランドルへと言った。
「あぁ…そうだな…私の妻は心強いな。」
ランドルも、微笑みを浮かべながらルージュへと言った。
その後、ランドルを休ませる為にルージュは部屋から出たのだった。
ルージュは、ランドルが崖から落ちた経緯をマークやカイルに話そうと思い二人が待っている応接室へと向かった。
応接室に向かうと、何故かそこにはルージュの父であるディーンの姿があった。
事情を聞いて急ぎ公爵邸へとやって来た様だった。
「お父様…」
ルージュは、気まずそうな表情で言った。
「ルージュ、私の言いたい事はわかるな?」
ディーンは、顔を強張らせながら言った。
「えっ…ええ…わかりますわ。ですが、お叱りなら後で受けまさわ。今は先にラン様が行方不明になった経緯をお父様達に話さなければなりませんので…」
ルージュは、気まずそうな表情のまま言った。
「はぁ…わかった。では、話を聞くとしよう。」
ディーンは、ため息をつきながら言った。
そして、ルージュはランドルがま崖から落ちて行方不明になった経緯をディーン、マーク、カイルに話したのだった。
「公爵殿に矢を放った人物は誰だったのだろうな…」
話を聞き終わったディーンが呟いた。
「わかりません。ですが、ラン様も矢を打たれた拍子で目がかすんだ事もありその者の顔はよくわからない様でしたから…ですのでその矢を打った犯人を見つけ出す事は難しいかと思います。」
ルージュは、真剣な表情で言った。
「そうだろうな…その矢を打った者も何故そこにいたのかも分からないからな…」
ディーンも、真剣な表情で言った。
「一先ず、ランドルが無事だった事の報告を王宮へとしておく事にします。今回の捜索の件は陛下が許可して下さり皇太子殿下が指揮を取ってくださったので。」
マークが言った。
「あぁ…そうだな。報告はお願いするよ。」
ディーンがマークへと言った。
「はい。お任せ下さい。」
マークが応えた。
そして、話が終わりマークが王宮へ報告に向かう為に公爵邸を後にした。
その後、ルージュがディーンとカイルからこっぴどく叱られたのは言うまでもなかったのだった…




