48.気づいた気持ち…
ランドルの話を聞いたルージュは、その後誰の声も耳に入ってこなかった。
ルージュは、呆然と立ったままだった。
「ジュ……ージュ…ルージュ!」
カイルが、呆然としているルージュの肩を持ち声をかけた。
ルージュは、カイルの声にハッとなった。
「お兄様…」
ルージュは、何とも言えない表情でカイルへと言った。
「ルージュ…一先ず屋敷の中へと入ろう。話はそれからだ…」
カイルも、何とも言えない表情を浮かべながらルージュへと言った。
ルージュは頷き屋敷の中へと移動して話の続きをしたのだった。
そして、サミエルがルージュへランドルが行方不明になった事の経緯を細かく説明した。
ルージュは、話を真剣な表情で聞いたのだった。
「殿下…ご説明ありがとうございました。お話を聞く限りラン様が無事でらっしゃる可能性も否定できませんよね?」
ルージュは、精一杯悲しい表情をしない様に堪えながらサミエルへと尋ねた。
「あぁ…それは否定は出来ないが確率的にオパール公爵が無事だという可能性は極めて低いだろう…辛いだろうがそこは理解して欲しいのだ…」
サミエルは、困った表情でルージュへと言った。
「助かっているという可能性が0ではないのでしたらその様な事は理解など出来ません。私はラン様を目の前にするまでは理解などしたくはありません。」
ルージュは、真剣な表情で言い切ったのだった。
「ルージュの言う通りです。大佐に何かあったのは間違いないとしても助かっている可能性がある限り早く捜索に出なければ…」
カイルは、真剣な表情で言った。
「許可頂けるのでおれば、今からでも捜索に出たいと思っております。」
マークも、真剣な表情でサミエルとハミエルへと言った。
「兄上…」
ルージュ達三人の言葉を聞き、ハミエルは頷きながらサミエルへと言った。
「分かった。父上の許可も頂いている。私が指揮を取るとしよう。だが、捜索する場所は危険な場所でもある為…捜索は私とのハミエル、マーク大佐、そしてカイルこの四人のみとする。」
サミエルが、真剣な表情で言った。
「「承知しました。ありがとうございます。」」
マークとカイルは頷きながら返事をした。
「では、早速だが捜索ルートを決めて行動をしよう。これを見てくれ…」
サミエルは、そう言うとランドルが落ちたとみられる崖周辺の地図を広げた。
「あの崖から落ちたとするならば、崖の真下へと行き捜索をしよう。また、崖下には流れの早い川がある。もしも、川に流されているとしたらそこから三キロ程離れた先にある滝にへと流されている事になる。そうなると捜索は危険リスクが高いために不可能となる。それは頭に入れておいてくれ。捜索に出て危険な目に遭わす訳には行かないからな…」
サミエルは、険しく真剣な表情でハミエル達へと説明をした。
「「承知しました…」」
ハミエル達三人が険しい表情をしながら応えた。
その話を横で聞いていたルージュは、不安そうな表情を浮かべた。
「大丈夫だ。ルージュ…私達が大佐を見つけてくるから。ルージュはここで大佐がいつ帰って来てもいい様に待っていてくれ…」
カイルは、不安そうにしているルージュへと優しく言った。
「わかりましたわ…お兄様…お兄様達も気をつけてください…」
ルージュは、カイルの手をぎゅと握りながら言った。
「あぁ…」
カイルは、ルージュの手を握り返しながら言った。
「では、日が暮れてしまう前に向かおう。」
サミエルが、ハミエル達に言うと四人は馬車に乗り込み捜索現場へと向かって行ったのだった。
(どうか…ラン様が無事でいてくれます様に…)
ルージュは、現場へと向かう四人の背中を見ながら願っていたのだった。
サミエル達が、ランドルの捜索に出てからどのくらい経ったのか気づけば辺りは日が落ちて暗くなっていた。
「殿下達は、そろそろ戻って来られる頃かしら…」
ルージュが、不安そうな表情でグレイに言った。
「そうでございますね…日も暮れた事ですしそろそろお戻りになられる頃だと思いますが…」
グレイは、ルージュの表情を見て切なそうな表情になりながら言った。
すると、馬車が到着する音がした。
どうやら、サミエル達が捜索から帰って来た様だった。
ルージュ達は、急ぎ玄関先へと向かった。
すると、サミエル達が邸へと入って来た。
しかし、ランドルの姿はなかった…
「お帰りなさいませ…捜索ご苦労様でした…それでその…ラン様は……」
ルージュは、サミエル達に精一杯声をかけてランドルの姿が見えない事に不安そうな表情で尋ねた。
「………。オパール大佐は、恐らく崖から落ちた際に負傷したのだろう…崖下の岩場にオパール大佐のものらしき血の跡が残っていた。血は川の方まで続いていたから恐らくそのまま川へと落ちてしまい滝の方へと流されたのだろう…恐らくオパール大佐はもぅ……」
サミエルは、険しい表情でルージュへと説明した。
「え?そんな嘘ですよね?ねぇ?お兄様!マークさん!ハミエル!嘘ですよね?」
ルージュは、サミエルの言葉を聞き他の三人にも必死で尋ねた。
しかし、マークとカイルは俯き…ハミエルは、ルージュの方を悔しそうな表情で見て首を小さく横へと振ったのだった…
「そんな…嘘…」
ルージュは、そう呟くと身体がふらついた。
「ルージュ様!!」
エミーが、素早くルージュの身体を支えた。
ルージュの後ろでは、使用人達のすすり泣く声が聞こえた。
グレイもアンジーも、俯いたままだった…
「ルージュ…大丈…」
サミエルが、ルージュに言おうとすると…
「申し訳ありません…今は一人にして頂きたいので…失礼します…」
ルージュは、サミエルの言葉を遮る様に精一杯の力を振り絞り言った。
ルージュは、呆然としたままエミーに連れらて部屋へと向かった。
部屋に着くと、エミーがルージュをベッドまで連れて行ってくれた。
「ありがとう…エミー…後は一人で大丈夫よ…」
ルージュは、エミーへ力なく言った。
エミーは、何も言わずにルージュの気持ちを察して静かに部屋から出たのだった。
(ラン様が…死んでしまったなんて信じられない…信じたくない…何故こんな事になったの…?こんな形でラン様とお別れなんて…まだ、ラン様に好きだという気持ちを伝えてないのに………。あっ……そうか…私とっくにラン様に恋をしていたのね…恋なんて前世でもした事なかったからこの気持ちが恋だなんて気づかなかったわ…本当に一緒に過ごして年上でしっかりしてる様でたまに抜けていて…私の事を長年思ってくれる優しい人…こんな事になってラン様に恋している事を気付くなんて…どうせなら本人を目の前に気づいて気持ちを告げたかったわ…)
ルージュは、自分の気持ちに今になって気づきフッと悲しそうな笑みを浮かべたのであった…




