46.狙われたランドル
王国軍が、敵軍との戦いを始めて二週間と少しが過ぎた日の事だった。
この日、とうとう王国軍が敵軍に勝利したのであった。
当初の予想通り、ノーマン王国軍の方が圧倒的に有利な戦いであった。
敵軍に勝利した王国軍は、戦いに勝利した二日後にノーマン王国帰郷に向かっていた。
ランドル達の隊は、皇太子筆頭に…
マーク達の隊は、ハミエル殿下筆頭に行動をしていた。
「皆、もう少しすればノーマン王国へと入る。後少し辛抱してくれ…」
ランドルが、疲れている部下達に向かって声をかけた。
「「はい。大佐…」」
部下達は、ランドルへと疲れながらも大きな声で応えた。
ノーマン王国へと近づくと、空が暗くなり雲行きが怪しくなってきた。
王国軍は、雨が降る前にと少し足取りを早めて王国を目指した。
ノーマン王国へと入る手前には、急な斜面が崖になっている場所があるのでそこは避けて通っていた。
すると……
「おいっ!今崖のあちらの方に誰かいたぞ!何者だ!」
急に、皇太子のサミエルが崖の方をを指さして険しい表情で言った。
「殿下!何事ですか?」
サミエルの言葉を聞いたランドルが、サミエルへと慌てた様子で尋ねた。
「今、あちらの方に怪しい人影が見えたのだ。まさか…敵軍の奴がこの当たりに潜んでいたのか…?!だとしたらまずいな…皆…ここで待機していろ。私が見てくる。」
サミエルは、率いてる軍の者達へと告げ素早く人影が見えたという方へと馬を飛ばして行った。
「「殿下!!」」
その場にいた者達が、馬を飛ばして行ったサミエルへ声をあげた。
「お前たちは、ここまで待て。私が殿下の後を追う…」
ランドルが、部下たちへと言った。
「「大佐!!」」
部下達が同時にランドルに声をかけた。
「心配するな。殿下をお守りしなければ…カイル!もしも、殿下が見たられた人影が敵軍の者だとしたら仲間が潜んでいるかもしれない…周りを十分に気にしておくのだぞ。すぐにハミエル殿下やマークがこの場所を通るはずだからそうしたらこの事をすぐに報告してくれ!頼んたそ。」
ランドルは、急ぎカイルに指示を出した。
ランドルの指示を聞いたカイルは真剣な表情でしっかりと頷いた。
それを見たランドルは、急ぎサミエルの後を追った。
「殿下ーー!皇太子殿下ー!どこにおられますかー?!」
ランドルは、サミエルが向かった方へと馬を走らせながらサミエルへと叫んだ。
しかし、サミエルからの応答はなかった。
ランドルは、サミエルに何かあったのではないかと嫌な予感が頭を過ぎった。
ランドルは、更に馬のスピードをあげて辺りを探した。
そして、ランドルは崖の付近までやって来て馬から降り辺りを見回した。
「殿下ー!!!」
ランドルは、大きな声でサミエルに届く様に叫んだ。
すると、ランドルの後ろの辺りでガサガサと音がした。
ランドルは、音のする方へと振り向いた。
その瞬間、ランドルめがけて矢が飛んできたのだ。
ランドルは、一瞬何が起きたか分からなかった…
ランドルは、矢が飛んできた方向を見た。
しかし、目が霞んできて誰かいるのはわかるが誰だかよく見えなかった…
そして、ランドルは胸に痛みを感じたのだった…
ランドルが、胸へと視線を落とすと胸ポケットめがけて矢が自分に刺さっている事を理解したのだった。
「うぅ…」
ランドルは、鈍い痛みに思わず声が出た。
そして、痛みのせいで体のバランスを崩してしまい目の前の崖へと転げ落ちてしまったのだった…
ランドルは、崖の遥か下へと落ちたのだった…………
ランドルに言われ、その場に待機していたカイル達の元へとハミエル殿下とマーク達がやって来た。
「カイル!こんなところで何をしているんだ?!何かあったのか?!」
マークが、カイル達がただならぬ表情をしてその場にいる事に何かを察した様に声をかけた。
「ハミエル殿下…マーク大佐…」
カイルが、ハミエルとマークに気づくとやりきれないという表情で言った。
「どうした?!何があった?兄上やオパール大佐はどうした?!」
ハミエルも、カイル達の表情を見て何かを察して真剣な表情でカイルへと尋ねた。
「それが…ここを通っていた際に、皇太子殿下があちらの崖の方に怪しい人影を見たと仰って…もしかすると敵軍の者かもしれないと人影が見えた方へと向かわれたのです。大佐がすぐに皇太子殿下を追いかけられたのです。私達には、ハミエル殿下やマーク大佐が来られるのでここで警戒しながら待っていろと言われました。」
カイルが、ハミエルへと詳しい状況を説明した。
「兄上もオパール大佐もまだ戻らないのか?!」
ハミエルが、カイルから説明を受け尋ねた。
「はい…未だに戻って来られません…」
カイルは、心配そうな表情でハミエルへ応えた。
「はぁ…そうか…」
ハミエルが、ため息をつきながら呟いた。
その時だった…
サミエルが、ハミエル達の元へと戻って来た。
「兄上!」
ハミエルが、サミエルの姿を確認して焦った表情でサミエルに声をかけた。
「ハミエル…お前達もここまで戻ってきただな…」
戻ってきたサミエルが、ハミエルへと言った。
「はい…それより、話は聞きました。怪しい人影というのは見つかりましたか?!オパール大佐とは一緒ではなかったのですか?!」
ハミエルは、慌ててサミエルへと尋ねた。
「人影だと思っていたのは、どうやら熊の様だった…私とした事が人影だと勘違いしてしまうとは。それよりオパール大佐がどうかしたのか?オパール大佐は見ていないが…」
サミエルは、状況をハミエルへと説明した。
「敵軍の者ではなく良かったです…オパール大佐は、兄上の後を追ったそうなのですが…見ておりませんか…」
ハミエルは、サミエルの話を聞き心配そうな表情で言った。
「オパール大佐が?!私は、会わなかった。オパール大佐はまだ戻っていないのか?!」
サミエルは、慌てた表情でハミエルへ言った。
「まだ、戻ってきていない様なのです…」
ハミエルが、更に心配そうな表情で応えた。
その時…崖がある方から馬がサミエル達の方へと向って歩いてきたのだった…
 




