42.軍への出動
ランドルが、王国軍の大佐として出動する日の前日…………
オパール公爵邸では、明日の出動に備えて皆がバタバタとしていたがようやく落ち着いて一息ついていた…
「ラン様…明日の支度はすべて整いましたか?」
ルージュが、寝室で一息ついていたランドルへと声をかけた。
「あぁ…ルーか。あぁ。ようやく支度が片付いたよ。後は、明日の朝一で出かけるのみだよ…」
ランドルは、ルージュへと応えた。
「そうですか…明日はいよいよ隣国との戦いに向けて出動なのですよね…」
ルージュは、少し寂しそうな切なそうな表情で言った。
「ルー…心配するな…この戦いはこちらが圧倒的に有利な戦いになるだろう…戦いの期間も数週間ほどで終わると見込んでいるからな…それに…今回の戦いは皇太子殿下もハミエル殿下も参戦されるのだから心強いさ。」
ランドルは、ルージュを安心させる様に説明した。
「はい…カイルお兄様も同じ事を仰ってました。ですが…いざ、出動を見送るというのはやはり不安になるものですね…」
ルージュは、切なそうな笑みを浮かべながら言った。
「ルー……」
ランドルは、心配そうな声で呟いた。
「申し訳ありません…何だか空気がどんよりしてしまいましたね…この様なままでは、ラン様が安心して出動できませんわね…あっ…そうですわ…これをラン様に渡そうと持ってきたのです。」
ルージュは、切なそうなそうな表情から一変して笑顔でそう言うと持ってきた袋をランドルへと手渡した。
「これは?」
ランドルは、ルージュから受け取った袋を見てルージュへ尋ねた。
「それは…私が作った恋する実を乾燥させたドライフルーツです。他にも、領地で採れた美味しい木の実なども入っています。恋する実は乾燥させる事で美味しさを保ったまま持ちが良くなるのですよ。木の実も栄養価が高いものを選びました。戦いで疲れた際にも簡単に口に出来ると思いまして…」
ルージュは、笑顔でランドルへと袋の中身の説明をした。
「ルー…君は…ありがとう…大切に持っていき、大切に食べるよ…ルーの事を思い出しながら…」
ランドルは、嬉しさのあまり言葉を詰まらせながらルージュへとお礼を言った。
「ふふ…そうしてください。私達結婚式を挙げたばかりなのですから…必ず無事に帰ってきて下さいね?」
ルージュは、優しく微笑みながらランドルへと言った。
「あぁ…言われなくてもそのつもりだ…無事に帰って来て新婚旅行に行かなくてはならないからな…」
ランドルは、フッと笑みを溢しながらルージュへと言った。
「そうですね…新婚旅行の計画も立ててないのですから、ラン様が戻って来られたら一緒に計画立てましょうね。約束ですよ?」
ルージュは、微笑みながらランドルへと言った。
「あぁ…約束だ…」
ランドルは、微笑みながら言った。
「私が、邸を空ける間…ルーがいるなら安心だな…」
ランドルが、安心した表情を浮かべながらルージュへと言った。
「私に、出来る事はグレイさんなどにもお手伝い頂きながら公爵家も領地も町もお守りしますわ。」
ルージュは、フンッと鼻をならしながら胸を張りランドルへと言った。
「はは…頼もしいな。だが…危険な事はしないでくれよ?」
ランドルは、心配そうにルージュへと言った。
「はい。承知しています…ナール様達の件では色々と皆さんにご迷惑おかけしたので…」
ルージュは、苦笑いしながらランドルへ言った。
「迷惑ではない…ただ…心配なだけだ…だから…約束だぞ?」
ランドルは、心配そうな表情で言った。
「はい。約束です…」
ルージュは、軽く微笑みながらランドルへと言った。
「明日から…当分ルーと離れる事になるかは今夜は朝まで…ルーを抱きしめて寝てもいいか?」
ランドルは、恥ずかしそうにルージュへと尋ねた。
「えっ…ええ…もちろんです…」
ルージュも、頬を赤らめて恥ずかしそうに応えた。
「ありがとう…」
ランドルは、微笑みながら言った。
そして、二人はベッドの中へ入りランドルはルージュを優しく抱きしめたのだ。
(明日から、ラン様とは当分の間離れて暮らすことになるのね…結婚が決まって一緒に生活する様になって、ラン様が帰ってこない事などなかったから変な感じだわ…明日からはこのベッドで一人で眠ることになるのね…寂しくなるわね…)
ルージュは、ランドルに抱きしめられながらそんな事を考えていた。
そして、いつの間にか眠りについていたのだった…
そして…翌日……
朝早くランドルは、軍の基地へと向かう為に馬車へと荷物を積んでいた。
そして、荷物が積み終わるとランドルはランドルを見送る為に玄関にいたルージュの元へとやって来た。
「では…行ってくる。」
ランドルは、ルージュへと言った。
「はい。お気をつけて行ってらっしゃいませ…必ず無事に帰ってきてくださいね。」
ルージュは、微笑みながらランドルへと言った。
「あぁ…約束する。」
ランドルは、優しく微笑みながらルージュへと言った。
「グレイ。私が留守の間ルーの事は頼んだ。私の分までルーの手助けをしてやってくれ。」
ランドルは、ルージュの後ろにいたグレイへと言った。
「はい。旦那様。畏まりました。お任せ下さいませ。」
グレイは、真剣な表情でランドルへと応えた。
「ありがとう。頼んだ。」
ランドルは、グレイへと言った。
「アンジー、エミー…そなたらも私が留守の間ルーの事を頼んだぞ。」
ランドルは、アンジーとエミーにも言った。
「「はい。畏まりました。」」
アンジーとエミーは、二人でランドルへと応えた。
「それでは…行ってくる…」
ランドルは、名残惜しそうな表情でルージュを見つめながら言った。
「はい…お気をつけて…」
ルージュも、少し切なそうに微笑みながら言った。
そして、ランドルは馬車の中へと乗り込んだ。
馬車は、軍の基地へと向かい出発したのだった。
(ラン様…本当にどうかご無事でお戻り下さいね…本当にどうか…)
ルージュは、馬車を見つめながら心の中でそう願っていたのだった………




