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41.嫉妬という黒い感情〜sideサミエル〜

私は、ダース男爵親子の処分をした翌日オパール公爵邸へと足を運んだ。


婚約破棄を言い渡した時以来久しぶりにきちんとルージュと顔を合わせた。


先日、山の中でルージュを見たが見るに耐えかねてすぐに目をそらしてしまったからだ。


オパール公爵邸に着くと、公爵とルージュが出迎えてくれた。

二人が一緒にいる姿を見てモヤモヤした…


そんな気持ちの中、部屋にて三人で話をすることにした。


その日は、あえて三人の空間で話をしたかった為に側近のアインの付き添いもしなかったのだ。


私が、あえてオパール公爵邸へ尋ねたのはルージュの身体が心配だったからだ。

王宮へ呼び出すことも出来たがしなかった。


私は、ルージュが思っていたより元気そうにしているようで内心ホッとしていた。


今回のダース男爵親子が仕出かした事は、私にも責任があると思っていたのでルージュへと改めて私からも謝罪をした。


すると、ルージュは慌てて私のせいではないから頭を上げてくへと言ってくれた。


私は、内心驚いていた…


正直、私の身勝手な気持ちのせいで結果ルージュを傷つけてしまった。

あの様な公共の場での婚約破棄など、ルージュにとっては屈辱でしかなかったはずだ…


私の事を、恨み憎み顔もみたくないはずだと思っていた…

だが、皇太子である私の訪問を拒否する事など出来ないとわかっていて訪問した程だ…


しかし、ルージュはその様な素振りなど見せなかったのだ…


私は、ここの底からホッとしたのだ。

どんな目で冷ややかに見られてしまうのだろうと訪問を決めたくせに心の何処かで、その様な不安な気持ちを持っていたからだ…


だが、私はホッとしたのも束の間…

ルージュの口から【ラン様】という言葉が出た瞬間、私は心がモヤついたのだった…


ルージュは、すぐに公爵様と呼び直したが私はそんな事はどうでもよくなっていた。


事実、ルージュがオパール公爵を普段は名前で呼んでいる事に変わりはないのだから…


結婚してから、まだ間もないというのに既にルージュがオパール公爵を名前で読んでいる事に私はショックを受けた…


私は、ルージュとはオパール公爵よりも遥かに過ごした時間が多いにも関わらず、私は一度も名前で呼ばれた事はなかった。


そして、私の心を更にえぐったのはルージュがオパール公爵の名前を出したときのオパール公爵の表情だ。


軍の中では、鬼の面相をして厳しい大佐と言われている男がルージュの方をとても愛おしそうに、そして心配そうに見ていたのだ…


私は、そんなオパール公爵を見た瞬間に自分の中にどんどんどす黒い感情が沸き上がってくるのを感じた。


先日の、山でのオパール公爵の行動を見たときもそうだったが私はこの時、オパール公爵へとてつもない嫉妬を覚えたのだ。


私は、そんな感情を抱く中であえてオパール公爵へと話を振った。


私は、淡々と

『オパール公爵のお陰だな…さすが軍でも大佐になっただけの事はある男だよ…』


と、言った。


それに対してオパール公爵は、自信満々に妻を助けるのは当たり前だと言った。


その自信満々に言ったことに、私は更に、自分の中のドロドロとした黒い感情が体に流れ込んできたのだ…


私は、ドロドロとした黒い感情が流れ込む中でルージュに見えない角度で憎しみを込めるような笑顔を作り、オパール公爵に向けて軍への出動参加を感謝すると伝えたのだった。


私は、その後公務があるからと帰る旨を伝えた。


公務があるのは本当だが、目の前の二人を見ているのが正直な辛く思えたのもあったのだ。


帰り際に、オパール公爵とルージュが玄関先まで見送った。

二人は丁寧に私へ礼をした。


私は、礼をしているルージュをじっと見つめた。


(私は…本当に、あの時ルージュを自ら手離してしまった事を後悔している…どうしたらもう一度君を手に入れる事ができる?どうしたら君は私の名を呼び私には微笑みかけてくれる?)


私は、そんな事を思いながらただルージュの姿を見つめた。


すると、ルージュが顔を上げた瞬間にルージュと目があった。

私は、驚き思わず目をそらし二人へと背を向けて馬車へと乗り込んだ。


私は、ルージュと目が合ったことで心臓がドキドキと音をたてていた…


(目が合うだけで、こんなにもドキドキしてしまうとはな…はは…一国の皇太子がこんな様とはな…)


私は、馬車の中でそんな事を思った。

だが、そんな感情に嫌な気はしなかったのだ…



それから、三日後…

オパール公爵とルージュの結婚式の日が訪れた。


私は、その日朝こら公務と執務で慌ただしく過ごしていた。


夕方になり、公務が終わり王宮へと帰宅して執務室へと向かう途中のテラスにハミエルとカリーナ嬢の姿があった。


きっと、ルージュの結婚式に参列した帰りだと思った。

私は、何気なく二人の会話に耳を傾けてしまったのだ…


『今日の結婚式は、本当にとても素敵でしたね。公爵様もルージュ様もとても素敵でした。特にルージュ様のウエディングドレス姿は何とも言えないほどの美しさでしたね…』


『あぁ…本当によい結婚式であったな…。兄上との婚約破棄もありルージュの事を心配していたが、オパール公爵もルージュもとても幸せそうな表情をしていたので私は安心したよ。』


『ふふ…公爵様のあのルージュ様のドレス姿を見たときの固まり様や、誓いのキスが長いこと…キスが終わった後に鼻血を出した事など、失礼ながら傑作でしたわ。』


『はは…オパール公爵は、完全にルージュのドレス姿に見入って固まっていたし、誓いのキスの後の鼻血もよほど照れたのだろう…軍であれ程恐れられているのが嘘のようだったな…参列している者は皆、笑いを堪えていたからな…』


『それほどまでに、ルージュ様を大切に思い愛しておられるのでしょう…見ていて重すぎるほどのルージュ様を想っているの気持ちが伝わってきましたもの…』


『確かにな…きっとオパール公爵はルージュを幸せにしてくれるし、ルージュもまたオパール公爵を幸せにするだろう…きっと今夜の初夜は大変だろうな…』


『ふふ…初夜でも公爵様は鼻血を出しているかもしれませんわね…』


ハミエルとカリーナ嬢は、楽しそうに結婚式での話をしていた。


(オパール公爵は、ルージュを愛している…だと…?!こんな短期間にか?何を戯言を…私の方がどれだけルージュを愛しているか…本当なら結婚式もウエディングドレス姿も誓いのキスも…初夜も…私とルージュが行うものだったのだ…)


私は、ハミエル達の話を聞きそんな事を思っていた。

自分の軽率な行動でルージュを、手放しだとわかっていてもそう思わずにはいられなかった。


そして、また自分の中にドロドロとした黒い感情が流れ込んできた…


(オパール公爵さえいなければ…あの者さえいなければ…もう一度ルージュを手に入れる事ができるのだ…あの者さえいなければ…)


私は心からそう思った…


そして、私の中にある計画が思い浮かんだのであった…

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