35.ダース男爵親子への処分
ランドルが駆けつけたお陰で、ルージュは無事にオパール公爵邸へと戻って来た。
ルージュを連れ去った男達二人は、王宮に受け渡す事になった。
現在は、王宮にある牢獄へと入っている様だった。
ルージュの、誘拐と殺人を男達へと命令したダース男爵親子も共に王宮にある牢獄へと入れられている様だった。
ルージュが、ランドルに連れられてオパール公爵邸へと帰ってくるとグレイを始めとした使用人達に加え、エミーやキャシー、カンナとアキナが居た。
皆、ルージュが無事に帰ってきた事に歓喜の声をあげたのだった。
ルージュは、皆に心配かけたと謝り色々と協力してもらった事にも感謝を伝えた。
ルージュが戻ってきた事で、心配で満ち溢れていた空気が一気に明るくなったのだった。
その後、ルージュが無事だった事を聞いたパトリック辺境伯のディーンとルージュの兄のカイルとアイルもオパール公爵邸へとやって来てルージュの無事を泣いて喜んだのだった。
その後、ルージュはランドルに連れられて自室へと戻った。
「ルー…少しでも寝て疲れを取るといい…」
ランドルは、何とも言えない様な表情でルージュへと言った。
「はい…ありがとうございます。それと…改めて助けに来て下さりありがとうございました。ご心配おかけして申し訳ありませんでした…」
ルージュは、申し訳なさそうな表情でランドルへと言った。
「ルーを、助けるのは当たり前の事だ。ルーが、一人で男たちに立ち向かったと聞いたときは本当に心臓が止まるかと思った…こうして、目の前にルーがいてくれるという事がどれだけ嬉しいか…」
ランドルは、切なそうな笑みを浮かべながらルージュへと言った。
そんなランドルの表情を見てルージュは、思い切った事をランドルへと言った。
「あの…ラン様…私がラン様の目の前にいるという現実をもっと実感してもらう為に…その…私が眠るまで私の手を握っていて貰ってもいいですか?」
ルージュは、頬を真っ赤にしながら恥ずかしそうにランドルへと言った。
「えっ………」
ランドルは、ルージュの言葉に思わず呆気にとられながら声が出た…
そんなランドルを見て、ルージュは頬を真っ赤にさせたままそっとランドルへと手を差し出した…
「ルー…手首が赤くあとになっているではないか…」
ランドルは、ルージュが差し出した手を見て焦りながら心配そうに言った。
「これくらい大丈夫ですよ…結婚式までには消えますわ…」
ルージュは、ランドルを安心させる様に言った。
ランドルは、そんなルージュの手首を優しく撫でるとそっとルージュの手を握った。
ランドルの顔が、ルージュに負けないくらい真っ赤になった。
それを見たルージュは、クスッと笑みを溢した。
ランドルも、フッと笑みを溢したのだった…
そして、ルージュはランドルに手を握られたままいつの間にか眠りについたのだった………
※
その頃、王宮では………
サミエルが、一人で王宮にある牢獄へと足を運んでいた。
牢獄内にある拷問部屋の中へと入った。
そして、サミエルは獄番の者にダース男爵とナール嬢を自分の元ヘと連れてくる様に行った。
しばらくすると、拷問部屋にダース男爵とナール嬢が連れてこられた。
「サミエル様…来てくださったのですね…」
ナール嬢は、サミエルを見るなり言った。
そんなナール嬢へと、サミエルは何も言わずにとても冷たい視線を向けた。
その視線に、ナール嬢は一瞬ビクリとなった。
そして、ダース男爵とナール嬢は獄番の者によって椅子へと座らされた。
そして、二人は腕を後ろ向きに縛られ足は各椅子の脚へと縛られた。
「でっ…殿下一体…なっ…何をなさるおつもりですか?!」
縛られたダース男爵は、焦りの表情を浮かべて慌ててサミエルへと言った。
「ダース男爵…何をそんなに怯えているのだ……?心配するな…何も拷問しようなどとは思ってはいない…二人の処分の判断は私に一任されたが拷問はするなと父上から言われているのでな…」
サミエルは、まったく感情がない冷たい目をしたままダース男爵へと言った。
サミエルのあまりに冷たい視線に、ダース男爵は思わず息を呑んだ…
「さて…二人の処分についてだが…」
サミエルが言いかけると…
「サミエル様…わたくしはサミエル様を心から愛しておりますのにこんな仕打ちあんまりですわ…」
ナール嬢は、この期に及んでまだそんな事を言っていた。
そんなナール嬢を、サミエルは再びとても冷たい目で見下ろした。
ナール嬢は、息を呑んだ…
「お前たち二人は、許される事のない行為をしたのだ…よりによってルージュに手を出すなど…処刑に値する程の罪だ…」
サミエルは、冷たい表情でとても低い声で二人へと言った…
ダース男爵と、ナール嬢は処刑という言葉に全身の血の気が引いたのがわかった。
「しかし…幸いにもルージュは生きているし大きな怪我などもしていなかった…よって、処刑はしない事にした…自分のせいでお前達が処刑されたとなるとルージュの心労に繋がりかねんからな…だか…先程も申した通りお前達は許される事の出来ない失態を犯した…」
サミエルは、表情を変えることなく二人へと言った。
二人は、処刑は間逃れる事が出来たと思いホッとした表情を浮かべていた…
だが、次のサミエルの言葉でホッとした表情も一変するのだった…
「お前達の処分は既に決まっていて、父上の許可も頂いてるので言い渡す…ダース男爵…お前の処分は、爵位剥奪及び全財産の没収。そして、カサン島への流刑だ。そして…ナール嬢の処分は…ガイス王国の中で一番厳格とされている貴族の家へと奉仕をするメイドとして行ってもらう事とする…以上が、お前達に下す処分だ。明日の朝一で王宮から出る事となっている。」
サミエルは、冷たい表情のまま二人へと言い渡したのだった。
「殿下…カサン島への流刑など酷すぎます…あの島は…流刑地の中でも一番酷い島と言われています…せめて…せめて…どこか違う地への流刑で…」
ダース男爵が、サミエルに向かって必死に言っている途中で…
「よくもそんな事がぬけぬけと言えたもんだな…処刑を間逃れただけでも救いだというのに…どこまでも愚かな男だ…」
サミエルは、冷たい視線のまま吐き捨てる様に怒りに満ちた顔で言い放った…
ダース男爵に反して、ナール嬢はホッとした顔をしていた。
そんな表情のナール嬢をサミエルが冷たく見下ろした…
「ナール嬢…ホッとした様な表情だな…自分は父親より軽い処分だとでも思ったか……?父親が父親なら娘も愚かだな…」
サミエルは、ナール嬢にも冷たい目で冷たく言い放った。
「サミエル様…それはどういう意味…」
ナール嬢が、サミエルの言葉を聞きサミエルに尋ね様としたがサミエルは話など聞かぬまま拷問部屋を出ていったのだった…
そして翌日……
朝一番で、ダース男爵とナール嬢は王宮からそれぞれの処分が下った場所へと送られたのだった…
そして、その同じ日にオパール公爵家にサミエルからの手紙が届いたのだった…




