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32.ルージュの居場所

小屋の中で、男達と取り残されたルージュはドレスの袖に隠し持っていたナイフを男達に気付かれない様にそっと手まで下ろしていた。


そして、上手く手にナイフもち少しづつ腕を締めつけている縄を切り始めていたのだった…


(前世で、おじいちゃんに教わった事のあるを思い出して良かったわ…極道の組長の孫娘ってだけで色々狙われる事も少なくなかったから、おじいちゃんが万が一誰かに捕まった時の為にとナイフを忍ばせて縄を切る方法を教わってて良かったわ…まさか今世で、このやり方を使う日が来るなんて思わなかったけれど…)


ルージュは、そっと縄を切りながら考えていた…




ルージュが、そんな状況の中ハミエルが王宮へと戻ってきた。


ハミエルは、皇帝である父カイエルへとルージュの誘拐事件を急ぎ伝えようとして王宮内を走っていた。


すると……


「ハミエル、何をそんなに血相を変えて急いでいるのだ…何かあったのか?」


サミエルが、ハミエルへと声をかけてきた。


「兄上?今の時間は公務へとでかけておられたのでは?」


ハミエルは、サミエルが王宮にいた事に驚き尋ねた。


「あぁ…先程公務から戻ったばかりだ。予定より大幅に早く終わったので戻ってきたのだ。一旦部屋に戻り着替えを済ませたら、執務室で残っている執務をやろうと思っていたところだ…それよりそれ程までに急いでどうしたのだ?」


サミエルは、ハミエルへと説明をしながら尋ねた。


「はい。急ぎ用を父上にお伝えしに戻ってきたのです。実は……オパール公爵家の領地にてルージュが何者かに誘拐されてしまった様なのです。ですので、父上に軍の出動の許可を頂きにきたのです…」


ハミエルは、真剣な面持ちでサミエルへと言った。


「何?!ルージュが誘拐されただと?!」


ハミエルの話を聞いたサミエルは、驚いた表情で大きな声を張り上げて言った。


あまりにも、大きな声を張ったのでハミエルは驚いた。


「私も急ぎ探しに出る…」


サミエルは、少し焦ったような表情で言いながらその場を後にして自室へと走り出した。


「兄上……!」


ハミエルが、サミエルへと言ったがその声はサミエルには届いてはいなかった。


サミエルは、着替えて支度をする為に急ぎ自室へと向かった。

自室へ戻り扉を開けようとした時、中から誰かの声がしたのだ。


サミエルは、不審者かと思い腰につけていた剣に手をかけ中の声に聞き耳を立てた…


「お嬢様…いくなんでもこんなやり方は無謀でございます。無断で皇太子殿下のお部屋に入るだなんて…こんな事が知られたら私達は終わりでございます…」


女性が、小声で言った。


「大丈夫よ…サミエル様は今公務に出られているし戻ってこられたのを見計らって計画通りにすれば、最終的に問題なくなるわ…勝手に部屋に入った事もお責めになれなくなるのだから…」


もう一人の女性が小声で応えた。


「それに…ルージュ様の事も…旦那様とお嬢様の仕業だとバレたらこんな計画も無意味でございます。やはり、この様な事はおやめになって邸へと戻りましょう…」


女性が、焦ったような小声で必死で言った。


扉の前で聞き耳を立てていたサミエルは、女性がルージュの名前を出したので驚いた。

今すぐ部屋の中へと入りたい気持ちを抑え、更に聞き耳を立てた。


「それも、問題ないわ。あの男達には上手くあの女を痛めつけて始末した後は隣国へと逃亡する様に指示して来たし、あの女の遺体が発見されるまでには数日はかかるはずだから私とお父様に疑いを向けられる事はないわ。そして、私はこの媚薬を使いサミエル様との既成事実を作れば完璧だわ…あの女がいなくなるお陰で何もかも上手くいきそうだわ…ふふ…」


女性が、ほくそ笑みながら言った。


サミエルは、その女性の話を聞いた瞬間に部屋の扉を思い切り開けて入り剣を抜きながら話をしている女性達の元へと近づいた。


物凄い勢いで部屋の扉が開いたので、中にいた女性達は驚きのあまりその場から動く事が出来なかった。


そして、サミエルは女性の一人に抜いた剣を突きつけたのだった。


「貴様…今何といったのだ!ルージュを誘拐させたのは貴様か?!ルージュを殺そうとしているだと?ルージュは、今どこにいる!首をはねられたくなければ居場所を言え!!」


サミエルは、凄まじい怒りの表情と声で女性へと言った。


そう……

剣を突きつけられていたのは、ナール嬢だったのだ…


「サッ…サミエル様…どうし…て…こちらに……」


ナール嬢は、体をカタカタと震わせながら言った。


「貴様に教える必要などない!ルージュは今どこにいる!吐け!!」


サミエルは、更に怒りの表情を浮かべてナール嬢へと言った。


「オパール公爵家の……領地から…三十分ほど離れた……山の…中の……小屋です……」


ナール嬢は、カタカタと体を震わせ涙を流しながら怯えた表情で応えた。


「山の中の小屋…以前、忠告したはずだ…次に私の前に現れたら容赦はしないと…覚悟しておけ…そしてルージュに何かあってみろ…ただでは済まさない…」


サミエルは、冷めきった冷たい今にも人を殺めそうな目でナール嬢を見下ろして言い捨てた。


そこへ、扉が開く大きな音を聞きつけたアインがやって来た。


「殿下…何事ですか?とても大きな音がしましたが…って…ナール嬢?」


急ぎやってきたアインは、目の前の状況に驚きながら言った。


「アイン…詳しい話は後だ。どうやらこの女が男達を使いルージュを誘拐し殺そうとしている様だ…私はすぐにルージュの救出に向かう。父親であるダース男爵も協力している様だ。この事を急ぎ父上に伝えよ。そして、この二人を牢にぶち込んでおけ。」


サミエルは、驚いているアインに手短に説明して伝えた。


そして、サミエルは着替える事もしないまま部屋を後にしたのだった。


厩舎に向かう途中で、ハミエルと会った。


「兄上!急ぎどうされたのですか?」


ハミエルが、焦った表情で急いでいるサミエルへと声をかけた。


「ハミエル、ルージュの居場所がわかった。今は時間がないので説明している暇はないから私の部屋に居るアインに詳しい事を聞いてくれ。そして、父上にも協力して貰える様に伝えてくれ。出動させる軍にはダース男爵家へと向かわせる様に伝えてくれ!」


サミエルは、ハミエルへと急ぎ伝えた。


「一先ず分かりました。すぐにアインの元へと向かいます。兄上はどちらに?」


ハミエルは、目の前状況を判断した上で応えてサミエルへと尋ねた。


「あぁ…頼む。私はルージュの救出に向かう。」


サミエルは、ハミエルへと言った。


「……。畏まりました…お気をつけて…ルージュを必ず無事に救出して下さい。」


ハミエルが、何か思う事がある様な表情でサミエルへと言った。


サミエルは、ハミエルの言葉に頷き厩舎へと急いだ。


そして、急ぎ馬に乗り山の方へとスピードを上げて向かったのだった……

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