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3.婚約破棄成立

ルージュは、ようやく俯いていた顔を上にあげた。


ルージュは、心の中に溢れている歓喜を表情に出すまいと平然を装いながら口を開いた…


「殿下は…そちらにいらっしゃるダース男爵家のナール嬢と婚約をする為に、私との婚約破棄をすると仰るのですね…?」


ルージュは、念の為にサミエルの気持ちを再度確認しておこと尋ねた。


「……、あぁ…そうだ。何か言いたい事でもあるのか?」


サミエルは、ルージュへと応えた後に尋ねた。


「いえ…言いたい事など言える立場ではありません…しかし、言わせて頂くのなら…私が婚約者として至らなかった事申し訳ありませんでした…」


ルージュは、心の中ではわかっていた事だと思っていたが上辺上はきちんと対応したのだった


「あらっ。サミエル様〜、ルージュ様はちゃ〜んと自分が相応しくなかったと自覚してらっしゃるわ〜。ルージュ様、今後は私がサミエル様を支えて差し上げますからご心配なさらないで下さいね。こんな形になってしまったけれど…サミエル様と私の婚約を祝福して下さいね。」


横から、話に割って入ってきたいかにも育ちを疑ってしまいそうな令嬢はダース男爵家のナール嬢だった。


「ナール嬢…今、私がルージュ嬢と話していたのだから君は黙っていてくれないかな…」


サミエルは、急に横から割って入ってきたナール嬢へはっきりと言った。


「サミエル様…申し訳ありません…ついサミエル様と婚約が出来る事が嬉しく…」


ナール嬢は、サミエルに身体をピタリとくっつけ上目遣いでうるうるとした瞳をしてサミエルを見ながら言ったのだった。



(ちょっと…このご令嬢何なの?こんな礼儀も何もないご令嬢と一緒になりたいが為に殿下は婚約者破棄を?よほどご執心なのかしら…こんなご令嬢と一緒になる為に婚約破棄されたなら、それは修道院にも行きたくなるわね…勝手に婚約者に決められ皇后教育も弱音を吐かずこなしたというのにこの仕打ちはね…本当に前世の記憶がある事に感謝してもしきれないわ…婚約破棄されるって部分は聞いていたけど相手の令嬢の事までちゃんと聞いてなかったけど、ここまで酷い令嬢とはね…でも、まぁ…殿下が選んだ相手なんだしいいか…今後の王宮の行方は心配だけどね…)


ルージュは、目の前のナール嬢を見て心の中で呆れながら思い改めて、前世の記憶があり良かったと心から思ったのだった。


「そういう…訳だ。正式な婚約破棄の手続きは後日行うとする…」


そして…サミエルはルージュが何か言おうとした顔も見ることなくナール嬢を連れてその場を出ていったのだった…


その場にいた…


皇帝陛下、皇后陛下、第二皇子殿下、パトリック辺境伯一家、その他の貴族も今起きた状況に目が点になっていた…


その中でも、ダース男爵と男爵夫人だけがほくそ笑んでいた…


(あらま…何とも言えない空気が…それもそうよね…殿下と私の結婚が決まった事をお披露目する場でまさかの婚約破棄を殿下が私に言い渡したのだから…)


ルージュは、目の前の皆の状況を見て一人冷静に考えていたのだった…


すると…………


「陛下…これは一体どういう事なのかご説明頂いてもよろしいですか……?」


その場の空気を更に悪くさせてしまいそうな程の低音で口を開いたのは、ルージュの父であるディーンだった。


「パトリック辺境伯…こっこれは…私にも何が何だかわからんのだ…私も皇后も何も聞いていなかったのだ…まさか…サミエルがあの様な身勝手な事をこの場でするなど…」


皇帝である、カイエルもディーンのあからさまの怒りを剥き出しにた表情と低音に思わずしどろもどろしてしまった。


「聞かされていなかったでは済まされません…殿下のこの様な身勝手な行動で我が娘のルージュの立場はどうなるのですか?皆の前で、結婚の話をするお披露目の場でルージュは恥をかかされました…これはいくら殿下のとられた行動とて許せる訳がありません…」


ディーンは、自分の大切な娘のルージュが皆の前で恥をかかされた事が許せなかったのだ。

パトリック辺境伯家が望んで結んだ婚約でなかったのもあり余計に許せる訳がなかったのだ。


「パトリック辺境伯…誤って許される事ではないとは分かっているが今一度落ち着いて話をしてはくれないか?私と皇后も第二王子もルージュ嬢の事はとても気に入っているし、ルージュ嬢以外は皇太子妃として相応しい令嬢は居ないと思っている…私の方からサミエルを説得してみるので少し待ってはくれないだろうか……?」


カイエルは、ディーンの怒りがおさまっていない事を悟るとディーンへお願いをしたのだった。


ディーンは、カイエルにそう言われても尚表情は険しいままだった…


そんな二人の話を聞いている周りの貴族達がコソコソと話をし始めたのに気づいたルージュが、ここぞというタイミングで口を開いた…


「陛下、お父様、お話中のところ申し訳ありませんが…私からお話をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」



ルージュは、カイエルとディーンの方を真っ直ぐと見て二人へ尋ねた。


「ん?ルージュ嬢どうしたのだ?」



カイエルが、ルージュに言われると何だろうという表情でルージュへ尋ねた。

ルージュの側にいたディーンも同じ様な表情をしてルージュを見た。



「はい…陛下、お父様…私は、この婚約破棄を了承しようと思ってます。殿下がこの様な場であのよ様な事を言われたという事は本気なのだと思います…それに、元々は政略的なものでもありますので…」


ルージュは、はっきりと伝えたのだった。


「ルージュ嬢…この婚約は…」


カイエルが、ルージュに何かを伝えたいかの様に言いかけたがディーンが口を開いた。


「ルージュ?!お前はそれで良いのか?この二年間弱音も吐かずにどれだけルージュが皇后教育を受けながら公務の手伝いやパトリック辺境伯家の公務もこなしたと?それなのに、この様な殿下の身勝手で婚約破棄を言い渡されたのに了承するだと?」


ディーンは、この二年間のルージュの苦労などを知っているのに弱音を吐かず頑張ってきた事を知っている故にそう言わずにはいられなくなりルージュへ尋ねた。


「はい…お父様。いいのです。私は殿下の言い分を了承致します。その代わりに婚約が決まった際に陛下に出させて頂いた条件はのんで頂きたいと思っています。」


ルージュは、内心は一秒でも早く正式に婚約破棄をして平凡ライフを送りたいと思っている為、カイエルの方へと向きカイエルへと真剣な表情で伝えた。


「………。あぁ…ルージュ嬢…分かったよ。今回のこの件は我が愚息の不始末…ルージュ嬢ならびにパトリック辺境伯家には謝っても謝りきれないであろう…二年前の条件の件はのむとしよう…そして、この場を持って我が息子の皇太子とルージュ嬢の婚約を正式に破棄するものとする…」


カイエルは、何とも言えない悲しそうな辛そうな呆れた様な表情をしながら泣く泣く婚約破棄の証書へとサインし、パトリック辺境伯家の出した条件をのむ約束をしたのだった…


(ふふ…これで、念願の平凡ライフを楽しむ事が出来るわ!!)


ルージュは、カイエルのその言葉を聞き心の中では思い切りガッツポーズをしていたのだった。


こうして、この日皇太子サミエルと皇太子妃ルージュの婚約は正式に皇帝陛下により破棄されたのであった。

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