28.ルージュに忍び寄る魔の手
ルージュが、ドレスの仮縫いする日がやって来た。
ルージュは、朝からランドルを見送った。
「ラン様、いってらっしゃいませ。」
ルージュは、笑顔でランドルへ言った。
「あぁ…行ってくる。では、今日は午後から私も町へと向かうからな。」
ランドルも、笑顔で行った。
「はい。」
ルージュは応えた。
ルージュは、ランドルを見送ると自分の支度もした。
そして、支度を終えるとエミーと共に馬車に乗り込み領地へと向かった。
領地へと到着すると、ルージュとエミーは町までの距離を歩いた。
そして、町に着くとキャシーとキャシーのすぐそばに小さな子供が待っていた。
「キャシーさん。おはようございます。」
ルージュは、笑顔でキャシーへと挨拶をした。
「ルージュ様、おはよう御座います。お待ちしておりました。」
キャシーは、笑顔でルージュへ挨拶をした。
ルージュは、キャシーのすぐそばにいた子供を見た。
「この子は、キャシーさんのお子さんですか?」
ルージュが、キャシーへ尋ねた。
「はい。うちの息子のジョージ四歳です。今日は母に預かって貰うのが無理でしたので一緒に連れて来ました。」
キャシーが、ルージュへ息子を紹介した。
「まぁ。そうなのですね。ジョージくんおはよう。私はルージュというの。よろしくね。」
ルージュは、優しくニコリと微笑みジョージへと言った。
「おっ……おはようございます…」
ジョージは、照れたようにもじもじしながらルージュへと挨拶した。
「ふふ…可愛いですね。キャシーさん今日はよろしくお願いします。エミー、こちらはラン様の軍の同期の方の奥様のキャシーさんと息子さんのジョージくんよ。キャシーさん、こちらは私の侍女のエミーです。」
ルージュは、クスッと微笑むとエミーとキャシーをお互いに紹介した。
「エミーです。よろしくお願いします。お手伝いする際は言って下さいね。」
エミーは、笑顔でキャシーへと挨拶した。
「はい。こちらこそよろしくお願いします。」
キャシーも、笑顔でエミーへと言った。
「では、ルージュ様、エミー様、ドレスの仮縫いをする場所へとご案内しますね。」
キャシーが、二人へ笑顔で言った。
「「お願いします。」」
ルージュとエミーは、同時に応えた。
そして、ルージュとエミーはキャシーの家へと向かった。
ルージュは、向かっている途中にどこから視線を感じたので急いで振り返って後ろを見た。
しかし、回りを見渡すも特に怪しげな者はいない様だった…
(気のせいかしら…強い視線を感じた気がしたのだけど…)
ルージュは、そんな事を思っていた。
「ルージュ様どうかされましたか?」
ルージュの様子を見て、エミーが心配そうに声をかけた。
「いえ…何でもないわ。大丈夫よ。」
ルージュは、エミーに心配させない様に笑顔で応えた。
そして、再び歩き始めたのだった。
少し歩くとキャシーの家へと到着した。
「どうぞ…狭い所ですがお入りください。」
キャシーが、扉を開けてルージュ達へと言った。
「ありがとう…お邪魔しますね…」
ルージュは、笑顔でキャシーへ言うと扉の横にある窓に映る木の陰に隠れている人影がある事に気づいた。
しかし、キャシーやエミーに悟られない様に何事もない様に家へと入っていた。
(やっぱり…先程の視線は気のせいではなかったみたいね…あの人影が間違いなく私達をつけていた者にね…でも、何故…私達を尾行してるのかしら…とにかく気をつけないといけなさそうだわ…)
ルージュは、そんな事を考えていたのだった……
その頃、時を同じくしてランドルは少し早めに訓練と業務を終えたので、予定より早いがマークと共に軍の基地を出て馬を走らせ領地へと向かうことにしたのだった。
ランドルとマークは、町に着くと町の入口にある川の近くの木に馬の手綱を結んだ。
そして、そこからマークの家までは徒歩で向かった。
「しかし…ランドルが結婚か…」
マークが、染み染みとした表情でランドルへと言った。
「何だよ…」
ランドルが、マークへと言った。
「いや…その歳まで独り身だったランドルがな…ようやく念願の想い人と結婚出来たのだもんな…長かったな…はは…それに…嫁さんはえらく別嬪さんと聞いてはいたが本当に別嬪さんでキャシーが驚いてたよ。別嬪な上にまだ十六だというのにえらくしっなりしているみたいだしな…ランドルには勿体ないんじゃないか?はは…俺は今日初めて会うから楽しみだな。」
マークは、陽気に笑いながらランドルに言った。
「マーク…お前は相変わらず好き放題言ってくれるな…だが…否定はしない。私は本当に私には勿体ないほどの妻を持ったものだ…」
ランドルは、口元が緩み蕩ける様な笑みを浮かべながらマークへと言った。
「惚気かよ。…しかし、軍では鬼の大佐と言われる程の面相の奴が嫁の事となるとこんなに顔の筋肉という筋肉が緩むんだもんな…恋をするという事は偉大だな…」
マークは、うんうんと頷きながらランドルへと言った。
「また…お前は好き放題…」
ランドルが、マークに言いかけると…
「さっ、着いた着いた。」
マークが、ランドルの話の途中で陽気に言った。
そんな、マークを見てランドルはやれやれといった表情をしたのだった。
そして、マークの家に着いた二人が扉を開けようとした時中から話し声が聞こえた。
「ルージュ様、何て綺麗で大きい胸をしてらっしゃるのかしら…」
キャシーが、興奮気味に言った。
「本当ね…胸もですけど…くびれもとても綺麗にくびれられているしお尻も綺麗な形でキュッともち上がってらっしゃるわ…」
ドレスを作成している一人の、カンナが言った。
「肌も白く透き通り美しいです…」
カンナの妹のアキナが言った。
「これは…公爵様が見られたらあまりの綺麗さに気を失われるかもしれませんね。」
キャシーが言った。
「はははは……キャシーの言う通りです。」
カンナが言った。
「ルージュ様、せっかくなのでもう少し胸元を広げてみてはどうですか?きっと、公爵様もメロメロになられますよ。ふふ…」
アキナが、言った。
「みっ…皆さん、そんなに見られると恥ずかしいですわ…胸元はこれでいいです…あまり広くするとシンプルな清楚なドレスになりませんもの…」
ルージュは、恥ずかしそうに頬を赤らながら言った。
そんな会話をしながら、家の中は笑い声で溢れていた。
そんな会話を、外で聞いていたランドルはマークの耳を塞いでいた。
そして、ランドルの顔は茹でダコの様に真っ赤になっていた。
それを見て、マークはニヤニヤしていたのだった。
少し、顔の火照りを鎮めてランドルとマークは家の扉を叩いた。
すると、中からキャシーが出てきた。
「あらっ。公爵様とマーク…公爵様、ちょうど良い所に来てくださいました。今ちょうどルージュ様のドレスの仮縫いが終わったところなんですよ…さぁ…どうぞお入りください。」
キャシーは、笑顔でそう言うとランドルを中へと案内した。
家の中へと入ったランドルは、目の前にいたルージュを見て固まってしまったのだ。
「ラン様…お疲れ様です。……?ラン様?」
ルージュが、ランドルに気づき笑顔で言ったがランドルが動かないのでどうしたのかと思い名前を呼んだ。
ルージュが、ランドルの名前を呼び少し間が空いた後にランドルは、ハッと我に返った。
「すっ…すまない…そのあまりにもルーの姿が綺麗でな…驚いてしまった…とても似合っている…似合いすぎていて困るほどだ…完成したドレスを着た姿も楽しみだな…」
ランドルは、愛しくてたまらないという様に蕩けた笑顔を浮かべてルージュへと言った。
ルージュは、ランドルがあまりにも優しい表情で真っ直ぐ言ってきた為、胸のドキドキが止まらなかった。
(ラン様ったら、何てお顔をされているの…こちらまで照れてしまうわ…でも、何だろう…ラン様に似合ってると言われたらとても嬉しい気持ちになるわ。キャシーさん達やエミーにも、似合うと言われたのにその時とは違う嬉しさが溢れるわ…)
ルージュは、頬を赤らめながらそんな事を思っていた…
「あっ…ありがとうございます…ラン様…ラン様に見ていただけて良かったです…」
ルージュは、頬を赤らめたままランドルに言った。
「あぁ…私も見れて良かったよ…」
ランドルは、優しく微笑みながら言った。
「何だ…この甘酸っぱい雰囲気は…コホン…。ええ…公爵夫人、初めて。ご挨拶が遅れましたがランドルの軍の同期でキャシーの夫のマークと申します。夫人がこの町の為にと提案して頂いた事など妻から聞きました。ありがとうございます。心から感謝致します。そして、これからもお会いする事があると思いますのでよろしくお願いします。」
マークが、ルージュとランドルの間を割って入ってきてルージュへと挨拶をした。
「あっ…初めまして…ルージュ・オパールと申します。公爵夫人としてまだまだわからない事だらけですがよろしくお願い致します…この町がより住みよい町になる様に私に出来る事があるのならば全力を尽くしいたいと思ってますのでよろしくお願い致します。それと…キャシーさん方にも言いましたが、どうぞお気軽にルージュとお呼び下さい。」
ルージュは、優しい笑みを浮かべながらマークへと自己紹介をした。
「はい…それでは…ルージュ様…今後も夫婦共々宜しくお願い致します。私共でお力になれる事はなりたいと思ってますので何でも言って下さい。」
マークも、笑顔でルージュへと言った。
「ふふ…頼もしいですね。ありがとうございます。」
ルージュは、ニコリと微笑みながら言った。
その後も、ランドルとルージュは皆と笑いが溢れて止まない時間を過ごしたのだった。
ルージュは楽しい時間を過ごしていたからか、誰かに尾行されていた事を忘れていたのだった……




