25.ルージュの隠していた事
ランドルは、先程ハミエルから聞いた話を考えながらルージュの元へと向かっていた。
ランドルは、一先ずルージュには先程のハミエルとの皇太子の話は黙っておこうと思った。
今は、公爵夫人として頑張ろうとしているし結婚式までの日数も沢山ある訳でもないので、ルージュには余計な心配はさせたくないと思ったのだった。
ランドルが、色々と考えていると訓練所に到着した。
訓練所に着くと、グレイが何やら見ていた。
「グレイ…待たせたな…何をそんなに真剣な顔で見ているのだ?」
ランドルは、グレイを不思議な表情で見ながら尋ねた。
「旦那様…ハミエル殿下とのお話は終わられたのですね。よいところにいらっしゃいました。今ちょうどいいところなのですよ…」
グレイは、クスッと微笑みながらランドルへ言うと訓練所の方を指さした。
グレイが指さした方を見たランドルは、あまりの驚きに声も出なかった。
「えっ…ゔぅ…え…」
ランドルは、声を出そうとしたが驚きのあまり変な声しか出なかった。
ランドルが見た先には、カイルと剣を交えているルージュの姿があったのだ…
ルージュはいつの間に着替えたのか、ドレスを脱ぎパンツスタイルになりカイルと剣を真剣に交えていたのだ。
他のランドルの部下もランドルと同じ様に、ルージュとカイルの姿にあ然とした表情で見つめていた…
「ルッ…ルーは、何をしているのだ?グレイ!何故止めなかったのだ?!」
ランドルは、ようやく声を出したと思ったらグレイに強めの口調で言った。
「はい?止めるも何も…止める必要はないかと…ルージュ様は目を輝かせて久しぶりのカイル様との剣の練習に気分が上がっておられたのでそれを無理にお止めするのも…」
グレイは、ランドルに言われてもきょとんとした表情で首を傾げながら応えた。
「なっ…何を言っているのだ。ルーは女性なのだぞ?あの様な剣に剣を持たせるなど…何かあったらどうするのだ?!」
ランドルが、少し怒った様な表情で勢いよくグレイに言うと忙いでルージュとカイルのいる方へ向かった。
それを見たグレイは、クスッと笑っていた。
ランドルが、ルージュ達のいる場所へと到着すると部下達がランドルへと声をかけた。
「大佐…ルージュ様は剣術もやられるのですか?カイルも何だか当たり前の様にルージュ様と剣を交えておりすけど…」
軍人の一人が、あ然とした表情のままランドルへと尋ねた。
「ルージュ様だと?」
ランドルは、軍人の一人がルージュの名前を呼んだことに睨みをきかせて反応して言った。
「いっ…いや…あのルージュ様ご本人から公爵夫人ではなく名前で呼んで欲しいと頼まれたのです…」
ランドルに睨まれた軍人の一人は、ギョッとした様な表情で言った。
「ルーがだと?まったく…」
ランドルは、ルージュからお願いしたのだと知るとやれやれといった表情で言った。
「それよりも…大佐…ルージュ様の剣術は…かなり慣れてらっしゃる様に見えますが…カイルに怠らない剣のさばきですが…」
軍人の一人が、驚いた表情でランドルへと尋ねた。
「あぁ…そうだな…実は私も今初めて見た光景なのだ…」
ランドルは、あ然とした表情で応えた。
「「そうなのですか?!」」
部下の者は、ランドルの言葉を聞いて皆驚き口を揃えて言った。
「はぁ…そこの二人!そこまでだ!!」
ランドルは、ため息をつくとルージュとカイルへと声を張り上げて言った。
ランドルの声に驚いたルージュとカイルは、剣を止めたのだった。
そして、ルージュはランドルを気まずそうな表情で見た。
「あっ…ラン様…お戻りになられたのですね…」
ルージュは、ランドルのあ然とした表情を見ながらバツが悪そうに言った。
「あぁ…それよりルー…これはどう言う事か説明してくれるか?」
ランドルは、ふぅ~と息をつきながらルージュへと言った。
「はい…」
ルージュは、気まずそうに返事をしてランドルの元へとやって来た…
「お前たちは、自主練習をしておけ。カイルはこちらへ来なさい。」
ランドルは、部下達とカイルに言った。
そして、カイルはランドルの元へとやって来た。
そして、ランドルとルージュとカイルは訓練所のそばにある休憩所へとやってきて椅子に腰をおろした。
「さて…ルー、君が何故カイルの剣術の相手をしていたのかな?」
ランドルは、少し呆れた様な表情でルージュへと尋ねた。
「それは…ですね………。ラン様…申し訳ありません。実は私…幼い頃から剣術が得意なのです…」
ルージュが、少し考え込んだ後に意を決してランドルへと言った。
「はっ?」
ランドルは、ルージュの予想外の言葉に思わず言った。
「え?」
ルージュも、ランドルの思わず出た言葉に??となり言った。
「私が、聞きたかったのは何故私の居ない間に危険な事をしたのか…だったのだが…」
ランドルは、きょとんとした表情で言った。
「あっ…そういう意味だったのですね…私はてっきり勝手に剣を交えた事にラン様が怒っておられるなだとばかり…」
ルージュも、きょとんとした表情で言った。
「怒ってはいない…ただ心配したのだ。しかし…剣術が得意とはどういう事だ?」
ランドルは、ルージュへ尋ねた。
「はい…私は幼い頃からお父様に剣術を教わっていたのです…やっているうちに楽しくなってしまい気づけばとても得意な事になってまして…ですが、皇太子妃に選ばれてからは全く剣を握らなくなっていて婚約破棄されまたお父様に剣術を教わる事が出来ると思っていたのですが、ラン様との結婚が決まり…さすがにいくら旦那様が軍人でもあるとはいえ夫人である自分が剣術が出来るなどと知られれば、オパール公爵家の評判にも関わってくると思ったので当分の間は剣を握る事はできないと思っていたのですが…お兄様に少し打ち合いをするかと言われてつい嬉しくなり打ち合いを始めたら無我夢中で楽しんでしまっていたのです…」
ルージュは、苦笑いを浮かべながらバツが悪そうな表情でランドルへと説明したのだった。
「大佐…私がつい、ルージュの羨ましそうに見ている姿を見ると声をかけずにはいられなかったのです…ルージュは私に言われてやったまでです。ルージュを責めないでやって下さい…お願いします…」
カイルが、ルージュを庇うように必死でランドルにお願いした。
「カイルお兄様…お兄様は悪くありませんわ…私が…」
ルージュが、カイルに慌てて言おうとした時…
「ぷっ…はははは……はは…は…」
ランドルが、耐えられなくなったのか大きな声を出して笑ったのだった。
その姿に、ルージュもカイルも驚いた。
「あの…ラン様?」
ルージュは、驚いた表情でランドルに尋ねた。
「すまない…笑いを堪える事が出来なかった…それに、私はルーを責め様などとは思っていない。驚きはしたが、まさか剣術までやるとは…本当にルーには驚かせれてばかりだな。私は、ルーが公爵夫人だからといって剣術をするなとは言わないよ。ただ、今度剣を振るときは心配だから私の目の届くところでやってくれ。」
ランドルは、まだ笑いを含んだままルージュとカイルへ言った。
それを、聞いたルージュとカイルはきょとんとした表情だった。
「では、私はこれからも剣術の練習をしてもよいのですね?ありがとうございますラン様。嬉しいです。これで運動不足にならずに済みそうです。」
ルージュは、目を輝かせながら満面の笑みを浮かべながらランドルへとお礼を言った。
「あぁ…今度は是非、私とも手合わせをしよう。」
ランドルは、いつもの優しい笑みを浮かべてルージュへ言った。
「はい。是非に。」
ルージュも、笑顔で応えた。
「良かったな。ルージュ…大佐ありがとうございました。大佐は、ルージュの前だと本当に別人な程の表情をされるのですね。はは…」
カイルは、笑顔でルージュへ言った後にランドルにお礼を言った。
「カイル…礼は分かるが一言多いぞ…?」
ランドルは、少しキッとした目つきでカイルへと言った。
「いや…あの…はは…」
カイルは、苦笑いを浮かべて言った。
それを、横で見ていたルージュはクスクスと笑い始めた。
それを、見たランドルもカイルも笑い始めた。
休憩所に、三人の笑い声が響いたのだった………
 




