19.妻は女神〜sideランドル〜
ルージュが、私の妻となり我がオパール公爵家にとやって来た。
私は、この日が来るのをとても楽しみにしていた。
ルージュには、突然の結婚だったのもあるし少しでも過ごしやすくしてもらう為に、パトリック辺境伯家に用がなくともルージュが帰りたいと思った時には好きに帰れる様にパトリック辺境伯へと伝えておいた。
ルージュの待女も、ルージュと共に我が邸へと招き入れる事にした。
ルージュは、オパール公爵家に着くと感謝の言葉を述べた。
我が邸で、私が幼い頃より仕えてくれている執事のグレイとメイドのアンジーへと邸の中の案内を頼んだ。
私が、ルージュの為に改装したルージュの部屋を彼女が気に入ってくれるのか内心ドキドキしていた。
私は、ドキドキしながらも残っていた執務を片付ける為に一人執務室へと向かったのだ。
執務も終わりグレイへと、ルージュを応接室へと連れて来る様にと伝言を伝えた。
しばらくすると、ルージュがグレイとアンジーに連れられ応接室へとやって来た。
私は、てっきり部屋にはグレイやアンジーも居てくれるのだと思ったが彼らは私とルージュを二人きりにして部屋からニヤりと微笑みながら退出したのだった…
私は、ルージュと二人きりなるとは思わなかったので心臓の鼓動がうるさかった…
何も話さない訳にはいかないと思った私は、なるべく平然を装いルージュに話かけた。
私は、ルージュに改めて結婚を承諾してくれた事にお礼を行った。
そして、ルージュとの結婚式についても話をした。
ルージュにとって最高の結婚式にしてもらう為に何年も前から、ルージュとの結婚式用の費用を別に貯めていた。
ルージュには、好きなドレス、その他を欲しいものや結婚式でやってみたい事などを好きに決めていいと伝えた。
しかし、ルージュは予想外の事を言ったのだった…
結婚式は、二人の事だから私と二人で決めていきたいと…
ルージュは、申し訳なさそうに言っていたが私はルージュの言葉が嬉しいあまり天にも昇りそうな気持ちになっていた。
そして、私はそんな気持ちの中私の事を名前で呼んでほしいとお願いしたのだ。
ルージュは、私にそう言われて困った表情をしたが少し考えだと後にこう言った。
『名前で呼ぶなどさすがに恐れ多いです………。呼び捨ては出来ませんので……ラン様とお呼びしてもいいでしょうか?』
と言った。
私は、七年前に初めてルージュと出会った斎の事を思い出した。
あの時、私が名前を教えてると『ランさんとお呼びしますね』
と言った事を…
私は、七年前と同じ様に名前を呼ばれて嬉しくて愛おしくてたまらなかった…
私は、ルージュに幸せが溢れ出そうな程笑顔でランでいいと応えた。
そして、私もルージュの事を『ルー』と呼ぶ事にした。
この世でたった一人、私だけが呼ぶ呼び方だ。
更に、幸せな気持ちになった…
その後、ルーから何故求婚をしたのかと聞かれたので上手く説明しようと思ったが私は、思わず…
ルーが好きだからと口にしてしまったのだ。
ルーは、もちろん驚いていたがそう口にした自分にも驚いていた。
私は、口にしてしまった事を今更撤回など出来ないし何よりルーを好きな事は事実なのだからと、ルーへと七年前の出会いから今日までの話をしたのだった…
ルーは、その時の事は忘れていたみたいだったがそれは仕方ない事だと思った。
ルーは、私が小さな少女であったルーに恋をした事を不思議に思ったのか今までに何人もの女性と接点があったのでは?と尋ねてきた。
私は、正直に話した。
軍人でもある自分は、元々接点がない上に左目の傷のせいでさらに女性との接点がなくなったと…
事実、元々社交場などにいる女性に対して心を動かされる事もなかった上に、この左目に傷を負ってからは女性の私を見る目は冷たいものだった。
それに…マイケルを失う原因にもなったこの左目の傷が私自身は嫌いだったのだ。
しかし、ルーは私の傷を勲章だと言ってくれた。
それも、慰めではなく本心からだ。
私は、ルーがそう言ってくれただけでとても気持ちが軽くなった。
本当に、ルーの言葉は私の心を軽くして癒やし満たしてくれるのだ…
その後、ルーは邸の庭へ畑を作りたいと提案してきた。
私は、畑など作る事が出来るのかと驚きルーに尋ねたがルーは目を輝かせながら自信満々に畑についてを説明してくれた。
畑の話から、庭にある私が育てた実の話へとなった…
すると…アンジーがルーにペラペラと色々な事を話すものだから私は恥ずかしくなり一旦話をやめ、ルーへ邸の使用人の紹介をして回った。
皆を紹介した後に、歩きながらルーと話をしていた。
ルーは、オパール公爵夫人として自分は私に恥をかかせない様に心がけると何とも健気な事を言うものだから私は思わず自分の思っている事を口に出した…
いつか、ルーも私の事を好きになってくれたら嬉しいと…
すると、ルーは
『その…何と言いますか…はい…いずれは…そうなれば良いなと私も…思います…』
と言った。
私は、今日ルーが公爵邸に来てから今までで何度ルーに幸せな気持ちにさせられたか…
もう…本当に死んでもいいと思う程心が幸せな気持ちでいっぱいだった…
そして、あまりの嬉しさに思わずルーの手を両手で握ってしまった。
今まで、何度も想像したルーの手を握る行為…
咄嗟な事とはいえ、ルーを驚かせてしまったがルーが頬を赤らめているのを見て私まで一気に恥ずかしくなってしまい、私はルーに部屋で休む様にと伝えた。
ルーを部屋まで送っていった私は、先程の握ったルーの手の温もりが残った自分の手を見つめたのだった…
そして…翌日、私はルーと共にオパール公爵家の領地にある町へと繰り出した。
二人きりの外出に、私はドキドキしていたが楽しみでもあった…
何年も、ルーと二人で出かける事を想像してきたのだから。
町に着くと馬車から降りて、徒歩で先まで行かなければならなかったがルーは歩く事は問題ないと言ったので二人で歩いて先へと進んだ。
ルーが、歩きながら幼い頃にパトリック辺境伯家の領地へとよく行っている話をしてくれた。
パトリック辺境伯家の領地は、とても素晴らしい領地で有名だ。
きっとルーの事だから、ルーもパトリック辺境伯の手伝いをしていたのだろうと思った。
町を歩いていると、ルーが何が見つけたのか川の近くにいる女性へと声をかけた。
その女性は、私の軍の同期でもあるマークの妻のキャシーだった。
キャシーと会うのは久々の事だった。
いい機会だと思い、私をルーとキャシーお互いを紹介した。
ルーは、キャシーに対してもとても優しく接していた。
そして、ルーはキャシーが干していたレースを見て驚くことを口にした。
何と、そのレースを使い私達の結婚式用のドレスを作りたいと言い出したのだ。
私は、驚きもっと上質な物にすればいいと提案したがルーはこの町のレースを使ってドレスを作る事で先に繋がると言ったのだった。
私は、更に驚いた。
すでに、ルーはこの町が少しでもより良い町になるにはどうしたらいいのかを考えていたのだ。
ルーは、既にオパール公爵夫人として我が領地である町の人々の事を思って提案したのだ。
私は、本当にまいった…
領主である、私はこれまでにその様な事など思いつきも考えもしなかった。
最低限、住みやすい町を保つ事で領主としての仕事をやっているつもりだったのだ…
それを、ルーは今以上に良い町にする為に目を輝かせていた。
キャシーと、ルーの提案に涙を浮かべて感動しながら嬉しそうにしていたのだった。
キャシーが、小声でいい嫁を迎えたと言ってきたが私もそう思った。
本当に私には勿体ない程の、素晴らしい妻を迎えられたと…
私は、この日また一段とルーに惹かれたのだった…
ルーは、もはや…天使ではなく女神だとまで思ったのだった…
その後も、私とルーは二人で町を回って見たのだった…




