18.オパール公爵家の領地
翌日、ランドルとルージュはオパール公爵家の領地へと足を運んだ。
今日は、執事も待女も付けず二人きりだった。
馬車の中でのランドルは、ルージュと二人きりだからか機嫌が良かった。
オパール公爵家からそう遠くない領地へと馬車が到着した。
「さぁ…ここが我がオパール公爵家の領地だ。この先には町がある。少し歩くが大丈夫か?」
ランドルは、ルージュを気遣う様に優しく尋ねた。
「はい。大丈夫です。歩くのは得意ですし慣れていますので。」
ルージュは、ニコリと微笑みながら応えた。
「そうか。では、行こうか。」
ランドルが、そう言うと二人は町の方へと歩いて行った。
少し歩くと町へと着いた。
「わぁ〜ここがオパール公爵家の領地にある町なのですね。」
ルージュは、町へ到着すると目を輝かせながら言った。
「あぁ…そうだ。私も幼い頃より父上と母上とよく町へと足を運んでいた。ここは、父上のお陰で住みやすい町になったからな…私が公爵を継いでからは、父上の様にきちんと町を守りきれているのか心配になる事が多いのだ…」
ランドルは、昔の事を思い出す様な表情で少しばかり切なそうに言った。
「ラン様も、幼い頃からここへと来てらしたのですね。私も幼い頃から我がパトリック辺境伯家の領地へはよく連れて行って貰ってました。」
ルージュも、昔を思い出す様な微笑みを浮かべながら言った。
「きっと、パトリック辺境伯家の領地の町はとても良いところなんだろうな…パトリック辺境伯家の領地はとてもよい領地ばかりだと耳にする事が多いからな…私は、領主としてきちんとできているのか心配が尽きないよ…」
ランドルは、少し苦笑いを浮かべながら言った。
「ラン様が、領主としてその様に悩まれる程町の事や町の方々の事を考えている証ですわ。それは、町の方々にも伝わってるますよ。」
ルージュは、優しく微笑みながら優しくランドルへと言った。
「ルー…ありがとう…」
ランドルは、優しい笑みを浮かべながらルージュへお礼を言った。
そして、二人は更に町の中を歩いて回った。
歩いていると、ルージュが川の近くにいる女性に話しかけた。
「あの…すいません…こちらのレースはどなたが作られたのですか?」
ルージュは、女性が川の近くでレースを干しているのを見てその女性へと声をかけた。
「え?あらっ…公爵様と…えっと……」
女性が、ランドルに気づき呟いた…
「あぁ…こちらは、わっ…私の妻となったパトリック辺境伯家のご令嬢のルージュだ。今日は、領地と町をルージュに案内しに来たのだよ。」
ランドルが、女性へとルージュの紹介をして説明した。
「あらっ。では、こちらが主人が言っていた方なのですね。お話に聞いていた通り綺麗なお方ですね。」
女性は、にこにこと微笑みながらランドルへと言った。
「マークの奴…余計な事を…」
ランドルが、ぼそりと呟いた…
「えっと…」
ルージュが、ランドルと女性の会話を聞いて声を出した。
「あぁ…すまない…こちらの女性は、私とマイケルの軍の同期であるマークの妻のキャシーだ。」
ランドルが、ルージュへと女性の紹介をした。
「そうだったのですね。初めてまして。先日、オパール公爵家に嫁いできましたルージュ・オパールと申します。宜しくお願いします。この町の事を色々と教えて下さると嬉しいです。嫁いできたばかりで未熟ですが…」
ルージュは、微笑みながらキャシーへと自己紹介をした。
「こちらこそ…公爵夫人にお会いできて光栄です。私は、キャシーと申します。主人は仕事に出てておりますのでご挨拶が出来ませんが…それと…私でよろしければ喜んで町の事をお教えさせて頂きます。」
キャシーも、にこにこと微笑みながら自己紹介をした。
「キャシーさん、ありがとうございます。助かります。私の事はルージュとお呼び下さい。夫人や奥様と呼ばれるのが慣れないもので…」
ルージュは、笑顔でキャシーへとお礼を言った。
「そんな…お名前でお呼びするなど…」
キャシーは、ルージュに言われて慌てて応えた。
「本当に…名前で呼んで頂ける方が私も嬉しいので。お願いします。」
ルージュは、キャシーへと笑顔でお願いした。
「……。わかりました。では…ルージュ様とお呼びしますね。」
キャシーは、考えた末にルージュへと応えた。
「ありがとうございます。それで…それちにあるレースですが…どなたがお作りに?」
ルージュは、にこにことキャシーへお礼を言った後思い出したかの様にキャシーへと尋ねた。
「このレースでしたら、この村の女性で作っています。ここは絹が特産品としていますので。こちらのレースを王都の下請けで作っているのです。微々たるものですけど収入源になっています。」
キャシーは、ルージュへと分かりやすく説明した。
「絹が特産品なのですか…とてもキレイで上質なレースですわね…。あっ…そうだわ。ラン様お願いがあるのですけど…」
ルージュは、何かを思いついた様にランドルへと言った。
「ん?どうした?言ってみるといい。」
ランドルは、不思議そうにルージュへと言った。
「はい…あの…こちらのキャシーさん達が作られているレースを使って私の結婚式で着るドレスや普段着るドレスを作って頂いてもよろしいですか?」
ルージュは、目を輝かせながらにこにこと微笑みを浮かべながらランドルへと尋ねた。
「このレースを使って?だが…一生に一度の結婚式だ…他にももっと上質な物があるのだから何もここで作った物でなくても…」
ランドルは、少し困った様な表情でルージュへと言った。
「一生に一度の事だからです。私は、オパール公爵家に嫁いできました。これからも領地や町の皆さんとは長いお付き合いになっていくのです。だからこそこの地で作られている物を用いたドレスを着て結婚式に出たいのです。それに…私が着る事によりドレスに興味を持たれる方が出てくるはずです。そうすれば絹だけでなくレースも特産品にすればいいのです。そうする事で王都からの下請けではなく王都へレースやドレスを納める形へと変えることが出来ます。そうしたら今より皆さんの収入も格段に上がりますわ。」
ルージュは、嬉しそうににこにこと笑いながらランドルへと説明した。
「ルージュ様…」
ルージュの話を聞いたキャシーは、ルージュの話に感動を覚えていた。
「ルー…君って人は…まったく…どこまでも私を惚れさす気なのだ…素晴らしい考えだと思うよ。領主である私はその様な事、考えた事もなかった…ルー、君のお陰でこの町がまたよい町になる様な気がするよ…という訳だが、キャシー…どうだろう?」
ランドルは、まいったという表情で微笑みながらルージュへと言ったあと、キャシーへとルージュの提案についてどう思うか尋ねた。
「惚れさすって……」
ルージュは、ランドルの言葉を聞き驚き頬を赤くした。
その様子を見てキャシーが微笑みながら口を開いた。
「公爵様、ルージュ様…その様な嬉しい提案は喜んでお受けします…私達が作ったレースを使ったドレスをルージュ様に着ていただけるなど光栄でございます。心を込めて作らせて頂きます。後ほど、他の者達もご紹介させて頂きます。」
キャシーは、とても嬉しそうに微笑みながらランドルとルージュへと言った。
「キャシーさん…ありがとうございます。私にもお力になれる事があれば遠慮なく言って下さいね。」
ルージュは、にこにこと微笑みながらキャシーへと言った。
「はい。ありがとうございます。」
キャシーも、微笑みながらルージュへと言った。
「キャシー、引き受けてくれてありがとう。私も仕上がりを楽しみにしているよ…」
ランドルも、キャシーへと言った。
「はい…公爵様はとても良いお嫁さんを貰われましたね…」
キャシーが、小声でランドルへと言った。
「あぁ…そうだな…本当に私には勿体ないよ…」
ランドルは、とても幸せそうな笑みを浮かべながら小声で応えた。
ランドルとキャシーの会話が聞こえていなかったルージュは、二人を見ながらにこにこと微笑えんでいた。
「ラン様、他にももっと色々と町を見て回りたいのですけどよろしいですか?」
ルージュは、ランドルへと尋ねた。
「あぁ…ルーの好きなだけ回ろう…」
ランドルは、優しく微笑みかけながらルージュへと言った。
「はい。ありがとうございます。」
ルージュは、ランドルに笑顔でお礼を言った。
(パトリック辺境伯家の領地の町の人達もとてもいい人ばかりだったけど、ここの町の人もいい人ばかりそうね…私にも出来る事でもっとこの町が住みよい町になるといいわ…)
ルージュは、そんな事を思いながらランドルと共に町を見回った…
 




