1.婚約破棄と前世の記憶
新連載始まりました☆
皆さんが、続きが読みたくなる様な展開に持っていけたらいいなと思っていますのでお気軽に読んで頂けると幸いです☆
ここは、ノーマン王国。
王宮内の大広間では…
この日は、皇太子と婚約者の結婚が決まった事のお披露目の日だ。
「この場を持って、パトリック辺境伯家のルージュ嬢との婚約破棄を言い渡す。ルージュ嬢の代わりにここにいるダース男爵家のナール嬢と婚約する事とする。」
ノーマン帝国の皇太子である、サミエル・ド・ノーマンが声を
張り上げ言った。
サミエルに、婚約破棄を言い渡されていたのは…
この国の辺境伯である、パトリック辺境伯家の令嬢である
ルージュ・パトリックだった…
ルージュは、パトリック辺境伯の令嬢である。
十六歳だ。
容姿、教養、度胸、強さ、優しさ、明るさを兼ね揃えた少女であった。
輝く様なブロンドヘアに、薄紫の透き通る様な瞳の色に大きな目…
透き通る様な肌に、出るとこは出て引き締まる所は引き締まっている体型…
まさに、誰もが振り返る美女と言っても過言ではなかった…
急な婚約破棄を叩きつけられたルージュだが、彼女は俯きニヤりと微笑んだのだった…
(この時を待っていたのよ…)
ルージュは、心の中でそう思っていた。
何故なら…彼女には誰も知らない秘密があったのだ…
そう…ルージュには、前世の記憶があったのだ。
ルージュが、九歳の時お気に入りの丘にある木の上に座って景色を見渡していると急に眠くなりウトウトしてしまったのだ。
その瞬間…
ルージュは、木から落ちてしまった。
木から落ちてしまったルージュは、気を失ってしまったのだった…
ルージュは、どのくらい気を失っていたか分からないが急にハッと起き上がったのだった。
(え?あれ?私…気を失っていたのかしら…それにしても今見ていたのは何…?夢の様だったけど…もしかして…前世の記憶というものかしら…)
ルージュは、目を覚ますと気を失っている間に見た前世の記憶思い出していた…
ルージュが見た前世の記憶は………
ルージュの前世は日本にある極道一家・龍神組の組長の孫娘である神崎栞という十六歳の女子高生だった。
龍神組は、歴史のある極道だった。
栞の両親は、栞が七歳の時に事故で亡くなった。
両親が一緒にいた栞を身体を張り守ってくれたお陰で栞だけ助かった。
両親が亡くなってからは、龍神組の組長で栞の父親の父である祖父に引き取られた。
祖父は、息子の忘れ形見である栞をたいそう可愛がった。
もちろん、組員も同じ様に栞をたいそう可愛がった。
そんな、栞は沢山の愛情注がれ優しく…それでいて強く自分の意思をしっかりと持った少女に育っていった。
栞は、祖父や組員に良くして貰っているものの将来は平凡な生活をして、恋をして両親の様に相手を思いやり愛情の溢れた結婚をしたいと密かに思っていたのだ…
時は過ぎ高校生になると、栞が極道の組長の孫娘だと知っていても仲良くしてくれた友達がいた。
その友達の鳳杏理は、異世界の恋愛小説にハマっていた。
杏理は、いつも栞に興奮気味に小説の話の良さを話してくれていたのだった。
しかし…栞は聞いている様な聞いていない様な態度で聞き流していた…
『杏理ー、そんな小説みたいな恋なんて現実では難しいよ?』
栞は、杏理へクスクスと笑いながら言った。
『夢がなーーーーい!!栞は夢がないのよ。こんな小説みたいな恋愛をしてみたいって思いながら読んで夢を見るのがいいんじゃないの!そんな夢がない事言ってたらいい出逢いも逃げちゃうよ?』
杏理が、プーっと頬を膨らませながら栞へ言った。
『ハハ…その小説そんなに面白いの?』
栞は、笑いながら杏理へ尋ねた。
『面白いだなんて言葉じゃ足りないよ。こんなに奥が深いんだから…はい。栞も読んでみないよ。これ貸してあげるからさ。』
杏理は、栞へそう言うと小説を渡してくれた。
栞は、杏理から借りた小説を夜にでも読もうと思っていた。
しかし、その日夜………
龍神組と敵対している組が乗り込んで来て攻防戦が繰り広げられた。
栞は、その攻防戦に巻き込まれて命を落としてしまったのだった…
そして…栞はどうやらルージュとしてこの世界に転生した様であった…
(……。やっぱり、今の夢は前世の記憶だったのね…私、やっぱりあの攻防戦で死んだのか…おじいちゃん悲しんだだろうな…)
ルージュは、自分が前世の記憶を見てそんな風に思っていた。
(……。ん?前世の記憶はわかったけど…もしかして…この世界って前世で杏理が読んでた小説の世界じゃない?結局借りた小説を読む前に死んじゃったけど…確か、杏理が興奮しながら小説の話をしてくれた時の内容が今私がいる世界の話にそっくりだわ…杏理は、あの時に何て言ってたかしら…んーと……)
ルージュは、前世の記憶を見て自分が転生した先は前世での友達の杏理が読んでいた小説の世界とそっくりだと思い、杏理がどんな内容を話していたかを必死に思い出そうとしていた…
そして…ルージュが必死に思い出した内容はこうだ…
ルージュは、十四歳で国の皇太子であるサミエルと婚約をする。
しかし、その二年後に皇太子から婚約破棄を言い渡されるルージュ。
そして、代わりに男爵令嬢を婚約者にすると言われる。
それに、了承したルージュはあまりのショックで家族に反対されるも修道院へと自ら入った…
(確か、杏理が話してた話ってこんな感じだったわよね…修道院に入った後のルージュはどうなったかまでは思い出せないけど……ん?でも待って…皇太子とは婚約をするけど破棄されるのよね…そして、修道院…婚約破棄されるとその後は自由…自由…はっ!これは、チャンスなんじゃないの?破棄された後、修道院ではなくて前世から思っていた平凡ライフが出来るんじゃないの?こんなチャンスまたとないわ。前世の記憶様々じゃないの。)
ルージュは、前世の記憶を逆に上手く使えばいいのではないかと考えたのだった。
(そうと決まれば、七年後の婚約破棄を叩きつけられる日まで私の目指す平凡ライフを手に入れる為に今のうちから計画を立てなきゃならないわよね。)
ルージュは、自分が前世から望んでいた事が現実に出来ると思うと嬉しくなり早速計画を立てる事を考えていたのだった…
あまりにも、わくわくウキウキしていたルージュはこの日に出くわした一人の男性と一人の少年の事などすっかり忘れていたのだった。