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翌日、昼を回った頃仕立て屋の男と大量のメンズ服が投入された。
「失礼いたします。それで・・・、本日のご依頼とは・・・」
男は、実に不思議そうな顔をして私を見た。
私は、昨晩のうちに描いたデザイン画を見せる。
「私、これから路線を変えて行こうかと思うの。だから、ここにデザインされた服を着るつもり」
男は、デザイン画と私を交互に見る。
「そ・・・それでは、私は・・・」
「そう。このズボンを作って欲しいの。素材はこちらを使って。」
私は衣装部屋を指す。
「そ・・え・・・まってください!!!」
「何か?」
「こ・・・ズボンなど、女性のはくものではございません!!ましてや貴族のお嬢様が・・・」
「そう・・・」
私は少し気落ちしたようなそぶりを見せる。男はホッとした様子を見せた。
その様子を伺いながら私は、次の手をうった。
「女性がズボンを履いてはならない理由とは何かしら?」
男は言葉に詰まる。
「私にわかるように説明して」
私は、そういって腕を組み彼の言葉をまった。
「私は、着るもので品位や権力を示す必要はないと考えています。ただ、私でありたい。そのためにあなたの力を借りたい」
私は沈黙を破って伝える。
男はふっと力を抜いた。何か諦めた顔をする。
「私には、それを止める力はございません。最善を尽くしますので、衣装部屋に行っても?」
男はライナーと名乗った。ドレスは数着残し、あとは生地感などを相談しながらけれに渡す。
デニムパンツとまではいかないものの、寄宿舎へ向かうまでに3着程度。あとは寄宿舎に入ってからの受け取りということで話が落ち着いた。
彼は日が落ちた頃、疲れ果てたように帰っていった。
数時間を共にしてわかったのは、ライナーという男は非常に服飾以外についてはめんどくさがりだということだ。
私の意見には基本的に従うが、時より見せる洋服や生地に関する知識、彼と一緒にきたメンズ服と私のデザインしたパンツを組み合わせたいという意見にもセンスが光っていた。
これで、数日後には私の人生の一歩目が人前に触れることとなる。
緊張と興奮が私の体を駆け回っていった。