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Take Over Parents  作者: 深い海のお魚さんなのですよ
7/9

因果鳥〜

「…ふわぁぁ〜」

気持ちの良い風を全身に受けて目を覚ます。

あら、いつの間にこんなところに。

目を覚ますと、そこは空の上だった。

ヒュドラさんが乗せてくれているのかしら。

しかし異様に羽毛のよう。

「目を覚ましたか、人の子よ」

どこからか声が聞こえる。

下を向くと、大きな鳥さんの背中。

…鳥さん?

「貴方は、ヒュドラさんじゃないの?」

「何を勘違いしているのか、私はーーいや、生物達に、私の声は聞こえぬか…」

「私はーーなんなの?」

「…!貴様、我の声が聞こえるのか」

鳩のような眼をしながら、鳥さんは振り返る。

「えぇ聞こえるわ!誰とでも私はお話しできるんだから」

フンスと胸を張る。

「…まぁいい、お前はあそこで死にかけておったのだ」

「私が…死に…」

ただ、ヒュドラさんの帰りを待っていた私が?

「留守中に巣の中に入るからだぞ。カーバンクルも忠告していたはずだ」

リスちゃんが忠告、そういえば、頑なに入ろうとしなかったっけ。

「私は、なんで今こんなに元気なの?貴方が直してくれたの?」

「…ちゃんと下を見ろ」

下?下ならさっき…。

「…え!?」

私が、いる!

毒に侵されたのか、身体が所々変色してる…。

「じゃあ、私は誰…なの?」

「お前は魂、その抜け殻から一時出てきたのだ、私によってな」

抜け殻…セミさんみたいな感じかしら?

「じゃあもう私は立派なレディってことよね!」

「…これ以上は話さん、制限だ」

それ以降、鳥さんは黙り込んでしまった。


天から見た景色はとても素晴らしかった。

非常にゆっくりと飛んでくれるおかげで、隅々まで堪能できる。

今日はヒュドラさんの巣の先の街、『魔法都市』を見た。

海に面していて、周りの平原も綺麗で緑だった。

街も賑やかで、人間の街よりも色鮮やかだった。

日が暮れればぼうっと光が灯って、優しく街を照らしてる。

街がうとうとしてるみたいに。

しばらくすると雷原と言ってもいいくらい雷が降る場所が近くにあって、大きな避雷針達が沢山立っていたのだけれど。

避雷針の形も様々で、何かのキャラクターのようなものまであった。

そんな危険そうな場所にも街はあって、みんな変な模様をしているけど、色んな鳥達と生活していた。

「…初めてみたわ、この世界…」


「…鳥さんは休憩しないの?」

あれから鳥さんは一度も地面に降りない。

疲れないのかしら。

鳥さんは首を横に振る。

「あ、もう喋れないんだったわよね」

首だけで返事をしていたので定かではないのだけれど。

神様の世界から来た鳥さんは、この世界に来ると1日に喋る数に制限があるそうで。

…まぁそこまでしかわからないのだけれど。

もうすぐ今日が終わる。

「また明日ね、鳥さん」

そして、私は眠りについた。


2日目。

素晴らしい日の出と共に目を覚ます。

「えっ」

下は一面雪景色。

特別雪が降っていると言われている地帯の上空に、いつの間にか辿り着いていた。

「起きたか、人の子よ。では、話の続きをしよう」

鳥さんは、自分のことを話す。

「私は神のように啓示を伝えてはいけない。助言をしてはいけない。だから、神々は私に制限をかけた」

「故に、実は話したがりなのだが、あまり長くは語れない」

「そんな…」

お話しは楽しいものなのに。

なんて、可哀想…。

「だから、話しはできないが、こうして景色を見せてやることで……」

どうやら、今日の制限に達したようだ。

少し不満そうな顔をした鳥さんを、助ける手でポンポンする。

「…もっと話せるといいね」

そう言うと鳥さんは、首を縦に振る。


雪の世界。

ぬくぬくした象が雪原をのしのしと歩き、鹿さんが駆ける。

雪だるまさんも、なんか動いてる。

見たことのない、興味深い世界が広がっていた。

もっと近くで見たいと言ったが、できないそうだった。

この理由も、明日聞いてみよっと。

針葉樹が並び、森の上へと行く。

その中になんかの祭壇があって、そこにいた大きな雪男さんが小さなイエティ達に教育を施していた。

どんな種族でも、子供に教えると言うことは共通らしい。

「ママ…」

少し感傷に浸る。

あの時、ボロボロになっていたママ。

私が死んだと勘違いをして、命を賭して戦ったママ。

もう、あんな危険なことをするのはやめよう。

…あれ、自然とママと呼べるようになってる。

私の体が、あの人を、シカシックさんをママだと認めてくれたのかしら。

そんなことを思いながら、針葉樹の上を進む。


こんな銀世界にも街はある。

人間さん達が、そしてイエティさん達が仲良く暮らしている街。

相容れない存在だけど、仲良く手を取って生きている。

「なかよしって、いいことよね」

ーーマムさんのことを思い出す。

縄張りを横取りしようと別の王がやってきて。

仲良くはできなかったのかな。

「どうしてるんだろう、マムさん」

そう、吐露する。

「…あ!湖かしら…?」

街の近くに凍った、とても大きな湖。

そこで色んな方達が滑っていた。

人間やイエティはもちろん、猪や熊さん、果てには妖精さんまで。

色んな種族が、こうして湖の上でダンスを踊るようにーー。

「うわっ!」

覗いていると、体を滑らせる。

まずい落ちちゃう…!

体勢を崩して、背中から出そうになる。

鳥さんはそれを冷静に、焦らず私を助けてくれた。

やれやれと首を振る鳥さん。

「ごめんなさい!助けてくれてありがとう鳥さん…」

そして、この出来事があって私は高いところが少し、苦手になった。


夕方にはオレンジに、夜には群青色に照らされる銀世界。

温かい火の色が、点々と付いている。

山の頂上付近になると、とても大きなお城が見えた。

鳥さんは、不意に城に向かって体を傾けた。

「うわっ!落ちちゃうよ!」

バタバタして横を見ると、美しい女の人の姿。

お姫様みたいなその人は、私たちを見るとクスッと笑みを零し、投げキッスを送る。

「あら!」

それに頬を赤くして口を手で覆っていると、その人は指揮を振るように指をふんふんとふる。

そして、こちらに突きつけられたかと思うと、私に向かってキラキラした何かが飛んでくる。

「ん…!」

びっくりしたけど、すぐに自分の体を見る。

すると、倒れている自分の首のネックレスに、氷の結晶のような形をしたものがぶら下がっていた。

「ありがとう!お美しい方!」

その人に手を振ると、向こうも振り返してくる。

綺麗な人だったなぁ。

「…ふわぁぁ」

今日はもう遅いし、寝よう。

「…また明日、ね」


3日目。

起きると、紅蓮に染まる大地に来ていた。

「汗が出そうね…」

下ではグツグツとマグマが音を立て、地面が燃えているのがわかる。

「起きたか、では話の続きだ」

鳥さんが、今日も話をしてくれる。

…何やら少し、いきいきしてるような。

「景色を見せることで、私はその間を満足させてやろうと、各地を回っている」

「…そういえば昨日のあの女王だったか」

「女王様だったの!?」

あの山の麓に、大きな城を構えていた女の人。

まさか本当に女王だとは。

「…彼女は神と人との間で生まれた半神半人の存在であり、間接的に神と繋がっている。だから我らのことは見えるし、お前に干渉することもできる」

「我に頼んだ神とアイツは知り合いでな、旅のお供にと、それをくれたらしい」

「普通の生物は、我と背中に乗せている者は見えないのだが、その理由は禁忌……」

そして、制限がくる。

「今日はいつもより喋れたわね」

昨日も首での質問で、喋る制限は日によって変わるそう。

調子の良い時は、半々日まで喋れるそう。

「調子が良くても、半々日…」

…つくづく可哀想に思えてくる。

「神様は、なんて酷いのかしら」


昨日とは打って変わってアツアツの紅世界。

遠くから見れば陽炎が地表をゆらゆらとさせ、地上の風景が認識できないほど。

不思議と汗は出てないけど、ベトベトにならないのなら嬉しいわ。

普通なら生物が居ないって考えるのが一般だけど、やっぱり世界は広いわね。

マグマを泳ぐお魚さん、溶岩をバリバリと食べているカメさん。

熱々の空を悠々と飛ぶドラゴンさんに、火の玉おばけさん。

みんなみんな怖い顔をしてるけど、なんでなのかしら。

街はあるけど建物は岩みたいで、ただの岩石郡みたい。

勿論住んでるのは人ではなくて、岩石人さん。

マムさんのところの人みたいな体格だけれど、此処には王様とかは居ないみたい。

お風呂に入るみたいに溶岩に浸かり、ふぁぁっと息を吐く。

「…ビバノンノビバノンノ」

あそこでお風呂に入る時に、みんなが言っていた言葉。

理由はわからなかったけど、ビバノンノなんだって。

お風呂に入り終わると、岩石人さん達はそれぞれ宝石だったり食べ物だったりを持って、奥にある大きな火山をクネクネと登る。

その先の天辺、ヒト達が持っていたものを火山の中に投げ入れる。

ーマムさんが言ってたっけ。

私に捧げ物を与えるのが、山に棲まう岩石人達にとっての義務だって。

此処にも、そんな存在がいるのかしら。


地獄のようなこの場所には、ダンジョンのようなものが各所に存在していた。

探検家さん達は、危険を顧みないで暑そうな服を着たまま中を探索するんだそう。

丁度、探検家さん達が中から出てくるところが見えた。

沢山の金銀財宝を頑張って持って帰っている。

ーあの森と同じように、心なしかこの辺りも少し明るくなっているような気がした。

「!危ないっ!」

マグマから飛び出した魚さん達が、一斉に探検家さん達目掛けて跳ぶ。

「…あ!」

当たりはしなかったものの、ほとんどのお宝はマグマの中へと消えていってしまった。

それと同時に、奥の方にある火山が僅かに揺れる。

探検家さん達は急いでこの地を後にする。

「…楽じゃ、ないわよね…」

あんなに笑顔で出てきたのに、酷いことをするわ、お魚さん。


夜の紅世界。

明るい状態だとわかりづらかったけど、ぼぉっと明るい橙色のおかげで立体的な地形だったということを知った。

段々畑のように、一段一段に溶岩が溜まってて、とても綺麗。

火の玉だったものは妖精さんだったようで、池の上でくるくると踊っている。

そして、昼では見えなかった巨大な魚影。

それに合わせてマグマが泡を出す。

まるで、クジラのような。

「うわぁ…」

そして、それよりも大きなものが一つ。

火山の中から、大きな大きなヒトが一人。

噴火をするようにマグマを一面に垂らし、中から出てくる。

風呂釜のように寛ぐのではなく、まるでバルコニーにいるみたいに、周りを見渡す。

「あ…」

そして、その大きなヒトと目が合った。

瞬間、鳥さんが急にスピードを速くする。

「鳥さん!?どうして!」

方向転換して、此処から離脱しようとする。

一方大きなヒトは、砲丸投げのようなポーズをとっていて。

「…ヒィッ!」

巨きく燃える火球を、こちら目掛けて。

「当たる…ッ!」

投げてーー。


「…あれ」

目を開けると、外はすっかり明るくなっていて。

「…海、だわ」

場所も違うところになっていた。

「目を開けたか、少女よ」

鳥さんが話せるってことは、もう次の日になってるのね。

「驚かせてしまったか、あの火球を避けるのに、この場所に来る『因果』を使ってしまったから、急な朝だが、勘弁してくれ」

「き、昨日のヒトは…?」

火山から出てきた巨人。

なんで私たちに向かってあんなモノを。

「アレは神々によって地面に繋がされた大罪人、神を憎み、報復するために、毎晩空を睨んでいるのだが、運悪く神の使いたる私が見つかってしまったようだ」

深々と首を下げる鳥さん。

「大丈夫、むしろ助けてくれたんだもの、ありがとう、鳥さん」

もふもふの背中をギュッと抱きしめる。

「…バベルの塔を造った人間によって、言語だけでなく、神の認識をより不明瞭にするために起こった探求の天罰。それは全生物にも影響され、以降神に類するものは視認できなくなってしまったのだ」

「…でも、見えなくても神様はいつでも私達のことを見てくれているんでしょ?」

「さて、どうだか…アイツらは、〝面白い〟モノしか見ないから」


今日の鳥さんは調子が良い日らしい。

もっとも、因果を〝飛ぶ〟と本来活動したであろう時間分にボーナスが付与されるらしい。

今日はガイドさん付きのようだ。

「此処は海の地、リヴァイアサンによる災害が色濃く残る地」

「リヴァイアサン…」

あの時、私たちを突如として襲った大きなーー。

「海と深く繋がってしまったこの地を、リヴァイアサンは嫌い、そしてこのように島を丸ごと沈めたのだ」

よく見ると、島のような形をしたものが薄らとだが海の中に見える。

「生物の生活圏はもとあった島の山に当たる部分、人間は、それでも狭いと海の上にも住を築いた」

鳥さんが首でクイッとしたところを見ると、ぷかぷかと、木で浮かんでいる大きな街があった。

「なんて大きな街、まるで下に島があるみたい」

「災害による全体的な初期化が行われたため、時代を追うように植物の進行スピードは速くなっている」

「そして、海と縁がある地だからこそ、生物もまた海に起因する」

「空を飛ぶ鳥も、陸を行く馬も、地を潜るモグラも、他の生物も、揃いも揃って海に帰る」

「本当だ…みんな海に潜って泳いで…」

珍しい光景。

普段陸や空にいて、ここではさも得意と言わんばかりに泳いでいる。

「…でも、逃げるしかなかったんだよね」

狭い土地。

たくさんの生物が生活するには、あまりにも小さすぎるもの。


「此処が、人間達の生活圏、海上都市だ」

海上都市と言われたそこは、イカダを様々な形に、家やら城やら道やら、そのように加工して構成されている。

「イカダフェスティバルのようなものかしら」

鳥さんはそれを聞いて首を傾げるが、私も脊髄で言ったからよくわからなかった。

「都市というよりイカダ郡だな。そこには人魚や魚人も交流していて、海底の資源をこちらに届けてくれたり、研究に付き合ったりとしてくれているようだ」

「沈んだ島は今では人魚や魚人達の大きな住処で、素晴らしい居場所をくれたとなんとも皮肉めいたことを言っているのだそう」

「でも、向こうも悪気はなく言っているんじゃないの?」

さてと鳥さんが言うと、降下して街の近くまで寄る。

「あら!」

街は意外にも華やかで、活気があった。

ぷかぷか浮かぶ地面を気にしないかのようにスタスタ歩き、所々で釣りを嗜んでいる。

市場はすごい熱気で、その気迫に気圧されちゃう。

ぐんぐん進んで、大きな広間に差し掛かる。

十字に開かれた広間の中心は、沈んだ島のものであろう山の一角が。

「アレは最初の人間の生活圏だな、元々はあそこに人間が住んでいた。今も、少人数だがな」

見上げるほどの大きなそれは、でも生活圏と言い張るにはあまりにも小さくて、地形もキツそうで。

「やっぱり、海に逃げたくなるよね…」


鳥さんが、イカダの大きな城を見せようとしたところで制限がくる。

口惜しそうな顔をする鳥さんを、スッと撫でてあげると、すぐに正面を向かれた。

…恥ずかしがらなくても。

お城は山と同じくらい大きくて、浮かんでいるのが不思議なくらい。

中にいるのはお偉いさんかしら?

そう鳥さんに聞くと、首を横に振る。

「まさか、誰かのお家?」

それにも横に振る。

「じゃあ…みんなのお家!」

まぁそうかなと言わんばかりに間を開けて縦に振る。

こんなにも大きなお家、一人じゃ手に余るものね。


夜。

光はなく、月明かりだけが都市を照らす。

木造が中心のため、火は寝てる時に引火しちゃったら大変だもの。

電気は、よくわからないけど通ってないみたい。

淡い光が街を照らす中、水面に変化が現れる。

魚達は一斉に跳び上がり、キラキラと飛沫をあげる。

星を撒き散らすかのように。

「何をしてるのかしら」

そう不思議そうにしていると、一際大きな飛沫が上がる。

「……」

ソレに目を奪われる。

あの時現れた、大きな竜と同じくらいの大きさ。

そしてその白い外殻に覆われた、大きなおおきな。

「イルカ…さん?」

海を飛び出し、ムーンサルトを決める。

次のように丸く回転するそれは、淡い光を放って。

「あれ…なんだか眠く…」

一帯は静まり返って、まるで、眠ったいみたいにーー。


(眠ってしまったか)

あのイルカの光に当てられ、眠ってしまった少女。

(…いよいよ明日、か)

明日、彼女はこの背中から去るだろう。

いや、去るのが〝決定〟されている。

ーー彼女はヒュドラの毒に曝露され、何もしなければその日には死んでいた。

神の気まぐれがなければ、もれなく命を落としていた。

何故彼女を、神は助けようとしたのか。

バベルの刻印を持つからか、それで全ての生物と会話できるからか。

…わからない。

神は彼女に何を見出した、神はそれを教えぬが。

(運命の女神、一体なにを…)

助けるのであれば慈悲の神であれば十分であろう。

だが、運命というのはわからない。

単にまだ死ぬ運命ではない、または、神が肩入れするほどの展開をもたらすのか。

いずれにせよ、彼女の存在はそれほど大きなものになるのだろう。

(…コイツは、優しいからな)

初めて、自分と話せる者がいた。

初めて、積極的な者を乗せた。

ここまで好意に接触する者は、初めてだ。

だから。

(乗せたくは、なかったな)

「5ヶ月、か…」

無意識に口に出る。

あぁ、もう日付が変わったか。

最終日は無制限に語れる。

何故ならば。

明日は搭乗者との、訣別の日だから。



「起きたか、少女よ」

目を覚ますと、いつかのヒュドラさんの巣に戻っていた。

「鳥さん?もう、観光は終わりなの?」

「ああそうだ、お前に良い医者が見つかったのでな」

そう言って首をクイッとやった方を向く。

たくさんの首がついた竜と一緒に、一人の男性が足を踏み入れる。

「…お前は5ヶ月間、眠りにつくだろう」

「え、どういう…」

「5日間、因果を確定させるために有した時間分、その反動でお前にはその分深い眠りが与えられる」

「因果を変えるという事は、そういう事なのだ。さぁ、降りるがいい」

そう言って地上に着くと、鳥さんは屈む。

私が鳥さんから降りると、寝てしまう。

それも、長い間、5ヶ月間。

「…その分長い夢が見られるもの、むしろ得したわ!」

「ありがとう鳥さん、私を救ってくれて、いろんな世界を見せてくれて」

笑顔を作り、感謝を述べる。

すると、鳥さんは難しい顔をした後。

「あぁ、こちらこそな」

そう言って、大空へと羽ばたいた。

「…ホントだ、眠く」




「目覚めなさい、少女よ」

女の人の声が聞こえる。

 誰なの?

「私は運命を司る女神、貴女を導く者です」

 あ!鳥さんが言っていた、私を助けてくれた神様ね!

 ありがとう!女神さん!

「貴女が行く道に祝福を、貴女の思う世界に幸福を」

「そして、彼方の運命に、裁きを」

そう言い残して、女神さんは光になって消えていった。




「長旅に付き合わせてしまってすまなかったな」

そう言って、ヒュドラの一頭を撫でる。

お偉いさん方に依頼された仕事を円滑にするために、ヒュドラの護衛は欠かせなかった。

「さて、お前ももうおかえり、じゃないとお前が育てた花がまた枯れてしまうーーおいおい」

光景に目を疑う。

一人の少女が、毒の結界内で倒れていた。

「直ぐに結界を解除しろ!…よりにもよってこんな少女が…」

だらんとした体を持ち上げる。

…幸い、息がある。

「…これは奇跡だ、直ぐに戻って治療しなくては」

数日間ここで毒に犯され続けていた場合、少なくともこのくらいの年では1日で死ぬくらいの毒だ。

本当に、見つかって良かった。

「カーバンクル、この子のペットか」

気付いたら足元にはカーバンクル。

「まぁいい、急いで戻らなければ」


急いで、魔法都市まで走る。

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